呪いの黒髪
「ティグレ、熱いかもしれないけど、そのフードを外さないでね」
「わかりました、しっかりかぶっておきます」
出かける前、母さんは僕にフード付きのマントを着せて、フードを被るようにと言われました。どうしてかは分かりませんが絶対に外してはいけないそうです。母さんも同じ様にフード付きのマントをつけていざ出発です。
僕の家は街から少し離れた森の中にある山小屋です、周囲は森で覆われてます。
そこからちょっといくと舗装されてはいませんが一本道がありそこを超えて森を出るそうです。後は街の街門が見えてくるので潜っていきます、その門は人気は全然ありませんでしたが、少し路地をいくつか超えて、大通りに出ると、そこには。
「うわぁ、ひとがたくさん! すごいですね!」
「ええ、そうね」
僕が顔を上げて、街の賑やかさに目を輝かせ、母さんに声をかけますが、母さんは目を伏せて、隅に寄りましょうと僕の手を引きます。
「あのフード姿、きっとジャガーさんの所の」
「ああ、例の女か、なんだって街に」
「ええ、しかしさんジャガーはなんだってあんな女と」
「本当だよあの女じゃなければ、今頃冒険者じゃなくて騎士にも……」
街の人がこっちを見て何かお話してます、父さんのお話でしょうか?
母さんは更に顔を俯かせて、早足になります、どうしたのでしょう?
そんなお話をよそに母に手を引かれ大通りから少し外れて別の通りに出るとそこには大きな聖堂がありました、ここが才能の鑑定をする所なのでしょう。ドアは開かれたままになっていて、母さんと入っていきます。聖堂の中はとても広いです。
僕と同い年の子供が何人もいます、みんな自分の父さんか母さん、お爺ちゃんやお婆ちゃんに手を引かれている人が大半です。才能の鑑定をしてくれる人の前には既に何人かの子供がいて、順番待ちをしなければなりません、母さんは僕を部屋の隅の椅子に座って待つように言ってきます、母さんはおしっこだそうです。
僕は周りの人を眺めます、皆髪の毛の色は茶色ばかりです、父さんたちの様な赤毛もいないし、僕の様な黒色もいません。でも隣の子も珍しい髪の毛の色でした。
姉さんの呼んでいた本にある、海というのと似たとても綺麗な青色をしており、目の色も同じ青色をしているのです、背は僕と同じくらいなのできっと才能の鑑定に来た子なのでしょう。
「こんにちはなのです」
「ふぇ……あ、その……」
僕は挨拶をしてみましたけど、急に声をかけられて怯えてるのでしょう、手に抱えていた兎の人形を抱きしめて声を出せずにいました、隣にはお姉さんと思わしき女性が座っていて、女の子に頑張れと言わんばかりに優しい目を向けてました。
「こ、こんにちは」
「ぼくはティグレ、きみはだれなのです?」
「えっと……ステラ、ステラ・シャンプー」
「そうなのですね…………」
「…………」
やっと、挨拶が交わせました、そしてお名前も聞けました。でもそれ以上のお話は続かず、お互いに黙ってしまいます、こういう時はどうすればよかったのでしょう。
そういえば、父さんはいつも母さんの事を褒めています、父さんは女性はとにかく褒めろ、初対面なら容姿がベターだぞと言ってました。
「きれいなかみのいろですね」
「きれーなんかじゃないもん、かぞくのだれともちがうんだもん、おかーさんもへんなこだっていうの」
「そんなことありません、ぼくはかあさんといっしょですが、くろですよ、そのあおはとってもきれいなのです」
僕はフードを外して、自分の黒色の髪を見せます、すると隣にいたおねーさんとエミリアさんは目を見開いて驚いてます、それと他の人達もこっちを見ています。
「あの黒髪、親が親なら、子も子か……」
「可哀そうにねぇ、よりにもよって母親と同じだなんて」
「うっげー、あいつ黒色だ、黒色は悪魔に呪われてるんだぜ、きんもちわるー」
「こらっ、あの子だって好きで呪われた訳じゃないから指をささないの」
僕を見てそれぞれ何かいっています? 悪魔の呪い? 何の事でしょう? 僕が不思議に思っていると、母さんがおしっこから戻ってきます。
「フードは外しちゃ駄目って言ったでしょう、ほら被りなおしなさい」
「っは、そうでした、うっかりです、ごめんなさい、かあさん」
僕は母さんの言う通りフードを被りなおします、そしてその後すぐに神官様が空いたようなので、エミリアさんにお別れの挨拶をしてから才能の鑑定をする事にしたのでした。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
この国において、悪魔に魂を売り呪いを受ける代わりに強大な闇の力を手にして、多くの人々に恐怖と苦痛を与えた黒髪の大罪人という男の伝説が残っている。
それゆえ黒髪を持って生まれた者は悪魔に魂を売り渡したその大罪人の血が流れていると言われる迷信が残っている。
だが、これをティグレ少年が知るのはもう少し後の話。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます