第4話 モフモフ一家団らん

 私は剣の稽古と並行して、身体づくりをはじめることになりました。

すぐに疲れてへたっちゃうんですけど、猫たちのかいがいしい介護(肉球)によって、なんとか動いていられます。


 ある日、グレイが、

「気晴らしに城下を歩いてくるにゃ。いろんな猫と交流することも大事にゃ」


 何が大事かわからなかったけど、試しに買い物に出てみることにした。


「ふわー、やっぱりすごいなぁ」


 大通りは猫人が多く、迷子になりそうだった。

猫人に混じって、普通の猫がいる。

この差はなんだろう。なんで二種類の猫がいるの?


 すると、剣の師匠ミケが通りかかる。

「おや、リン殿にゃ。今日はお出かけですかにゃ?」


「なるほど、グレイ様のご指示ですかにゃ。では、我が家にお招きしましょうかにゃー。」


 というので、お招きに預かることにしました。


 ミケさんの家は大通りから外れた一本奥の猫通りの少ない道にありました。


「ようこそ我が家へ。ゆっくりしてておくれにゃ。」


ミケさん家はおしゃれな洋風建築で、中にはキャットタワーが複数ある。

バタバタと足音がして、


「おかえりおかーしゃん!」「おかーしゃん、ごはんは!?」


 背の小さい黒猫と三毛猫がミケさんを出迎えました。


「コラ、クロ!ぶち!お客さんだにゃ。ご挨拶するにゃ」

「こんにちにゃー!」

「はい、よくできました。ごはんの支度するから、リンさまに遊んでもらいにゃさい」

「ええ!?」

「「はーい」」


 ミケさんはいそがしそうに奥へと引っ込んでいきました。

残された私とクロとぶち。

じーっと二対の目がこちらをみてくる。

二本の尻尾は今か今かとピンと立っています。


「しょ、しょうがないなあ!遊ぶか~!」





しばらくして…

「はーい、ごはんができましたにゃ~」


 遠くからミケさんの声がする。


「はーい、こっちです~。」


私はミケさんに声で応える。


「や、やっと、眠ったの…。無限の体力と、まるで忍者のような俊敏さだったよ…」

「子どもたちが腹を出して寝てるにゃ。リンさまのことがとっても大好きになったようだにゃ。よかったにゃ。ありがとう」

「ど、どういたしまして…」

「はい!ごはんだにゃ!起きるにゃ!」


 二匹はごはんの「ご」の字でシュバっと立ち上がり、「は」で手を洗いに行った。


「嘘でしょ。あんなにいっぱい動いて遊んだのに。あんなに早く動けるんだ!」

「ごはんは特別ですにゃ」


 食卓に着く一人と三匹。


「いただきます!」


 なんと猫の国で中華を食べるとは思わなかった。

ほかほかごはんとホイコーロー、野菜ごろごろスープでした。


「今日は野菜が安かったから、つい買いこんじゃったにゃ。いっぱい食べるにゃ」


 聞いてるのか聞いてないのか、子猫たちは器用にスプーンを握ってガツガツと食べている。


「ミケは、4匹のお子さんがいるって言ってましたけど、あと二匹はどちらに?」

「二匹とも城におりますにゃ。一人は親衛隊長パンサー、一人は衛兵長はな、ですにゃ」

「ええっ!?そんなにすごい役職に二人も!?ミケさんはおいくつなんですか!?」

「まだまだぴちぴちですにゃ。年齢は秘密ですにゃ。二匹とも、まだまだ私には剣の腕では敵わない子猫ですにゃよ」


 ホホホ…と、ミケもスプーンで食べだしたので、私も食事に集中することにした。

どうやら箸は使わずスプーンで食べるのが普通らしい。


「リンさま、今日は泊まっていくといいにゃ。クロとぶちと一緒に寝てあげて」

「「やった~!」」

 と、よろこぶ二匹に押されて、泊まることにした。


クロとぶちと団子になって眠る。

フカフカお日様の香りだな。


夜も更けてゆく…。






「ふっふっふ。猫どもめ。こんな深夜に襲われるとは思うまいわん」

キャットグラスの城壁の向こう、森の中に隠れたパグのパック。

「ものども~!ときはいまわん!攻めかかるわーん!」

パックの大号令に大量の犬たちの攻撃が、今始まる




続く




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