第2話 にゃんだらけ

キャットグラス。

猫人たちの暮らす小国家である。




私は驚いた。

猫が二足歩行で歩き回っている!

隣にいたグレイも二足で立っている!どゆこと!?


「驚くのも無理はないにゃ。ここは猫だけが暮らす国にゃんだ。」


道行く猫が私を物珍しそうに横眼でみてくる。


ピピー!


警笛とともに憲兵と思わしき武装した猫人が近づいてきた。


「怪しいやつめ!どこからきたにゃ!」


あっという間に囲まれてしまったが、グレイが一歩前に出て言い放った。


「この人は大丈夫にゃ。パパのところに連れていくから。みんなで護衛をお願いするにゃ!」

「!?グレイ様!失礼いたしました。そういうことなら、お供いたします。」


鎧を着た数人の憲兵さん猫さんたちと歩き出す。


「どこへ向かうの?」

「ついてからのお楽しみにゃ」


ふーん、と、辺りを見回しながらついていくリン。

あ、猫が馬車引いてる。

途中の市場など賑わっているところではマタタビを吸って、ぐでんぐでんになっている猫を多数みかけた。

行先には城が見える。日本のお城って感じでなくて、写真で見たことがあるヨーロッパ風のお城。


「ここの中にゃ。」

「え、もしかしてお城に住んでるの?」

「そうにゃ。パパもこの中にゃ。」


と、するする案内されてみれば、大きな部屋。というか、謁見の間?みたいなところに連れてこられた。


「ようこそ、キャットグラスへ。人間の娘よ」


どっしりと大きな椅子に寝転がっている猫人さん。


「パパ。ただいまにゃ。」

「おかえりグレイ。」


ころりんと椅子の上で寝がえりをうつあからさまに王様っぽい猫。だって王冠被ってるし。


「グレイ、なぜその子を連れてきたのかな?」

「パパ、聞いて驚けにゃ。この娘は猫語がわかるんだにゃ!」

「なんと!それは本当か!?」


二匹に見つめられる私。


「うん、どうやらわかるみたい。」


驚愕のパパ。驚きすぎて椅子から滑り落ちた。

もとから落ちそうな体勢ではあったけど。


「きゅ、救世主だ!これでこの国は助かる!」

「まだわからないにゃ。伝説の剣を引っこ抜いてもらうにゃ。」

「おお!そうだな!でもまずは、宴の準備だ!リンを精一杯もてなしてやりなさい!」


私は別室の食卓へと案内されていく。


「え、ちょ、なにがなんだかわかんないんだけど!」


席に着かされて、次々と運び込まれていく料理。

猫の国なのに、まるで日本のファミレスに来たかのような豊富な品揃え。


「日本のことはよくわかっておる。リンに合わせてごはんを作ってあるから、たんと食べるがいい。」

「いいんですか?」


といっても、もともと小食な私は、ちょっとしか食べられなかった。


「リンよ。頼みがあるのだ。」


おもむろに王様が話し始める。


「頼み?」

「キャットグラスを救ってくれ。今、この国は犬の国ワンダーランドに攻め込まれつつある。このままではキャットグラスはヤツらによって蹂躙されてしまう。」

「え、でもあたし、身体弱いし、戦う力なんてないよ!?」

「心配はいらない。リンのことは、伝説の剣が守ってくれる。」

「で、伝説の剣?」

「うむ、まずはそれを引っこ抜いてもらうところからだな。ついてくるといい。」


グレイと王様に連れられて、私は城の宝物殿と思わしきところに来た。

さまざまなガラクタやらなにやらの中に一か所、まさしく剣が刺さってる場所がある。


「長らくこの場所に刺さっている剣なのだ。刃こぼれひとつしない。猫の手では引き抜けないのだ。」

「この剣は、キャットグラスがピンチのときにあらわれる救世主が引き抜けるという伝説があるのにゃ。」

「そ、それを私に引き抜けと?」

「「そうにゃ」」


「わかったよ。やってみるよ。」


剣に近づき、握り、ぐっと力を入れる。

ぐぐぐ・・・


ずぼっ


抜けた。

抜けちゃった。


これよりリンは、二国間の戦争に巻き込まれることになる。




続く



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