第3話 扉の隙間

これはT君が体験した不思議な話

怖いような・・・驚くような・・・

他の人とは違う不思議な体験・・・


今回はT君が自宅で体験した不思議な話

本格的に幽霊の存在を信じたそんな話

T君 13歳 中学2年のころの話


T君も少し大人になり先輩と遊びヤンチャをするようになる

その日は先輩の車に乗り地元で有名な心霊スポットへ遊びに行ったのだ

そこは霊園でその中にポツンと一か所

電話ボックスがありその電話に話かけると

女性の声が返ってくるという噂があるそんな場所だった

先輩や友達はスリルを求めていたがそういう

実際にやるといった役目はT君がやっていた。

特に先輩や友達に不思議な経験をしたことを話したわけではない

ただ俗にいういじられキャラといったポジションだった

それだけであった。


「じゃT!!レッツゴー!!」

先輩や友達がはやし立てた

「わかったよ、いくよ」

とくに不満を言うことなく歩き出す

たぶんそういうところも実行役に適してたのかもしれない

なによりT君は不思議な出来事を何度か経験して

幽霊などにたいして怖くはないと過信していた

この時もそうだった

スタスタと歩き電話ボックス前へ

立ち止まりゆっくりとドアを開けて中へ

後ろを振り返りみんなに視線を送る

みんなはこちらを見つめながらも何か話している

そのまま手を電話の受話器にかける

受話器を持ち上げ耳に当てると車内のみんなは盛り上がってた

そしてその様子を見ながら受話器に向かって話す

「もしもし・・・」

・・・・・

何も返答はない

もう一度

「もしもし・・・・」

・・・・・・・・・

何も聞こえない

それを確認してゆっくり受話器を戻す

そしてみんなにみえるようにバツを手で作り

みんなに合図する

するとがっかりしたようにうなだれた

その様子を電話ボックスから見てT君は

【当たり前だよ。だって何も感じないし】

心の中で笑った。

自分の感覚が反応しないことイコール幽霊なんていない

そんなふうにおごっていた

それからT君は電話ボックスをでてみんなに聞こえるように

「なにも聞こえない!!」

と大声で伝えた。

「わかった!!戻って来いよ!!」

先輩が返してくれた

それに歩き出して答えたときだった

ゾク!

後方に何かの気配

その感覚が伝わった瞬間に振り返る

「・・・・」

そこには霊園独特の静寂が流れる

【なにも・・・ない・・・?】

先ほど確かに感じた異質な気配

だが、振り返るとそこには人影どころか

気配すら消えていた

【?勘違いか?】

「おーい!!Tどうした!?」

先輩が声をかけてくる

「なんでもないです!!」

それに答えながらただの勘違いと片付ける

みんなのところにもどると

「Tってホント怖がらないよな~」

「怖がった方が面白いけどな!」

など声を掛けられる

「そうですかね~」

それに気をよくしながら答えながらこの夜は解散になった


ガラガラガラ

家の扉を静かに開けて中に入る

T君の家は古く引き戸が多い

また、玄関からすぐ二階に行ける作りになっていて

当時部屋として二階の個室を与えてもらったT君は

夜抜け出して親には内緒で遊びまわっていた。

ゆっくりと階段を上り部屋に入る

部屋の扉も引き戸で家が傾いていたので少し隙間がある

ぴったり閉まらない扉を閉めて

服を着替えて布団の上に座る

「ふ~楽しかった」

夜に抜け出して友達と遊ぶというスリルに心を昂らせ

眠くなるまでテレビをつけて過ごすことにした

音量は小さいので明かり代わりにつけている感じだ

テレビは扉から見て右手にある

なので扉が視界に入っている状態だった

いつもは気にならない扉の存在

だがこの時は違った

なかなか眠くならないなか画面を流し見していると

扉が・・・

扉の隙間が・・・・

とても気になる・・・

【なんだろう??なんか・・・気味が悪い】

いつもは感じない不穏な感覚

いつの間にかテレビではなく扉の隙間に意識が集中していた

ただジーっとその隙間に視線が向く

ジー・・・・

・・・・・・・・

スッ

【へ?】

その瞬間だった

隙間から髪の長い女性がこちらを覗き込んできた

「!!!」

言葉にならずにそのまま後ろに飛びのく

視界がブレる

扉の隙間から一瞬集中が切れた

すぐに意識を隙間に戻すとそこにはもう女性の姿はなかった

「な?!?」

信じられないという思いとは別に体はすぐに確認を急いだ

扉を開けて隙間のあった方の方向に目を向ける

そこにはなにもない・・・

【何が・・・】

そんな思いがよぎった時

階段が

ギシギシ・・・

音が鳴る

古い木造りの階段

軋むときは人が上り下りするとき・・・

しかし目の前には誰もいない

しばらくすると音はおさまった

呆然とする。

このときT君は思った

【僕は心霊や幽霊という存在をなめていたのかもしれない】

自分の目で見た物や起こっていた現象

不思議な出来事に部屋に戻り恐怖した


女性の霊・・・

もしかしたらあの電話ボックスからついてきたのかもしれない

振り向いた時気配を感じなかったのはT君の背中についていたから

それに気づかず家に連れて帰ってきてしまった・・・

それ以来T君は心霊スポットに先頭を切って歩くことは控えた

自分が気づかずに目に見えない存在をつれて帰らないように

信じてくださいとは言わない

ただ不思議な出来事はこの世に存在する

そんなT君の不思議な体験


では・・・

また機会があったそのときまで

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