【給湯器が壊れたので銭湯に一緒に行きませんか? 拒否権なしの個室風呂で主導権も渡しません!】




「なんだかんだ本当は一緒にお風呂入りたいんでしょ?」


「だから別々に入るって言ってるだろ。もう小学生じゃないし色々マズいだろ、お互い」


「……エッチな事しか考えてないからそんな事ばっかり言うんでしょ?」


 含みのある言い方に俺はなんて言うべきか困ってしまった。

 16歳男子高校生ならば女の子の身体に興味がある年頃のわけでないとは言い難いからだ。これは早苗を性の対象としてみているからとか、いやらしい目で見ているかとでなく、人間が成長していくなかで遺伝子レベルで先祖から刻まれた人間として当たり前の生理現象である。決して、好きな子の裸を見たいとか……そうゆうのではない。本当に……そんなんじゃない。ただ本能がそれに興味があるだけで、俺は正常だ。


「………………」


「さては図星だね」


 ニヤリと確信めいた笑みで俺を見つめる早苗。


「そう言えば今日私が嫉妬したとか言ってたよね。つまり私が達也の事大好きって思っているってことだよね? だったら達也として問題ないんじゃないの。だって私の事大好き……おっと間違えた好きなんだよね? そこにやましい気持ちがないならタオルを付けてれば問題ないよね?」


「軽々しく男に素肌を見せたら後で後悔するぞ」


「後悔? なんの話し?」


 目を見ればわかる。

 俺は今、早苗に試されているのだと。

 いいだろう、その勝負乗った!


 後で絶対に後悔させてやる!


「やましい気持ちそっちこそないんだな?」


 だったら俺も早苗を試してやる。


「ないよ」


「だったら後で実は恥ずかしかった――とか言うお決まりの展開もなしだぞ?」


「いいよ」


 それをわかっていながら不敵な笑みを浮かべて答える早苗。


 こうして俺達は一緒に入る為に脱衣所へと向かった。

 ただし着替えは特に恥ずかしいので当然別々にだ。

 俺が先で、早苗が後。







 なんでこんなことになったかと言うと、ちゃんとした理由がある。

 

 ――いまから一時間前。


 俺と早苗が放課後二人仲良く家に帰ると母親がリビングから出てきて俺と早苗を出迎えてくれた。


『ゴメン、二人共お金あげるから今日は銭湯でお風呂入ってきて」


 わけがわからない俺と早苗は玄関でお互いの顔を見て、首を傾けあった。

 なんで昨日まで我が家で入っていたのに急に銭湯なんかにいかなくてはならないんだと言う意味だ。確かに俺の家から銭湯までは歩いて十分程の所にあるし、近いと言えば近いかなぐらいの距離なのでその気になれば何も問題ないわけだが。


 念の為に理由を聞いてみる。


『実はさっき私がお風呂入ってたら給湯器が壊れて水しか出なくなったのよ。それでさっき修理を依頼したら明日の朝じゃないと無理だって言われたの。ちなみに上条でもう予約してあるから20時に行きなさい。一応男と女って事で別々の方が良いだろうから個室で二時間にしたけど、一人一時間もあれば足りるわよね?』


 この時には、母親の頭の中には行く一択しかないのか、妙に個室と気配りをされて手配されていた。


 正直個室は大浴場と比べて高い。俺は別に大浴場で良いとすぐに提案する。身体さえ洗えれば湯舟に浸かれなくても一日や二日なら気にしない。シャワーでパッパと済ませれば二百円で済む。早苗は年頃の女の子と言う事で色々とデリケートだろうが男子高校生の多くは俺みたいに手早く済ませる事にもほとんど抵抗がないと思う。


 今日は体育の授業もなく汗すらかいていない。


 ――あれ?


 俺が言葉を間違えたのか自分の意見を伝えると母親が頭に手をあて大きなため息をついた。隣では早苗が俺の顔をジッと見つめている。


『あんたね、お金もそりゃ大事だけど……少しは早苗ちゃんの気持ちも考えてあげなさい』


 考える?

 だから俺は大浴場で早苗は個室でゆっくりではダメなのか。

 その時、俺の頭はある答えを導き出した。


 そうだった。

 早苗は女子高校なのだ。

 配慮が足りていなかった。


 俺は早苗の方に身体の向きを変えて言う。


『ごめん。別に生理とかなら――』


 母親のげんこつが頭上から降り注ぎ、俺はその場で座り込んでダウンしてしまった。

 体罰は良くないと言いたいところではあるが、今余計な事を言えば第二撃が来るのは間違いないだろう。


『あんたそんな事ばっかり言ってたら早苗ちゃんに嫌われるわよ』


『だって……』


『なによ?』


『女の子ってそうゆうのが合って大浴場とかに行けない日があるって中学の時友達に聞いたから』


 俺は悪くないと思いながら母親の顔を見ると、視線が冷たい物へと変わった。


 やべっ……。

 これは言葉を完全に間違えたらしい。

 第二撃くるのか……クソッ!

 俺は来るべき時に備えて身構える。


『あっ、いいんですよ』


『まぁ、早苗ちゃんがそう言うならいいけど』


 スカートの裾を手で抑えて座り、視線の高さを合わせて。


『一緒に行こうよ? 私とじゃ嫌なら断ってくれてもいいけど……なにか理由があるの?』


『ただ恥ずかしいだけ……女の子とのお風呂って』


 本音で答えるとやっぱり恥ずかしかった。


『つまり照れてるんだ?』


『……………………』


 自分の顔が赤くなっている事が鏡を見なくてもすぐにわかってしまった。

 全身が熱くなる。

 頭の中で服を着ていない早苗の神秘(裸体)を想像してしまった。

 やっぱり服越しでもわかるぐらいに大きいって事は実物もやっぱり大きいのかなとチラッと視線が目の前にある胸元にいってしまう。

 直後、早苗の表情から見てはいけない笑みがこぼれた。


『よし決まり、なら二人でこの後準備して銭湯に行こうね』


 ここで母親が安堵する。


『もう怖くなるから最初から仲良くしてよね、二人共。一瞬喧嘩しちゃうかと思ったじゃない』


 そのまま俺ではなく早苗に銭湯のお金を渡す母親。

 詳しいことは聞かないが、お金の管理という面では俺より早苗の方が信頼できるのかもしれない。

 なんか理不尽だ。


 こうして俺と早苗がこの後二人で銭湯へと行くことになったのだった。




 着替えを終わらせて腰に白いタオル一枚巻いてかけ湯を桶ですくって足先からゆっくりと心臓部にかけてあげていく。中には面倒だと時折頭から被る人もいるが、そんな事をすれば心臓がびっくりして止まってしまう事もあるとここでは言っておこう。そんなしょうもない知識もいざと言う時はやくに立つなと思いながら俺は湯舟に身体をつけた。


 個室と聞いて狭いかと思っていたが意外に部屋も大きく、お風呂も三人ぐらいなら一緒に入ってもゆっくりと出来るぐらいの広さがあった。

 露店ではないが、壁には一つ窓があり、そこを開ければ外からの風が入ってくる。これがまた良かった。それに夜を照らす沢山の光が夜景を美しく彩っているではないか。こんな事なら最初から銭湯に行くと言えばよかったなと心の中で思っていると、更衣室と浴場をつなぐドアが開いた。


 首をひねって見ると上は胸を隠し下はちょうど大事な所が隠れるようにして白いタオル一枚巻いた早苗がいた。

 恥ずかしいのかタオルの上から更に胸を腕で隠していた。


 それにしても生で見る胸はやっぱり大きいな。

 隠れてハッキリとは見えないもののタオル一枚ではその大きさが服越しの時よりよくわかる。ましてや今の早苗は下着をつけていない、そう思うと好奇心がそそられる。


 別にやましい意味があるわけではない。

 ただ男としてこれはそう当たり前の現象なのだ。


 だから無意識にあのタオルの下を見てみたいと思ってしまった事もむしろ正常と呼べよう。


「もぉ……やっぱりエッチじゃん……」


 恥ずかしがりながら、内股を擦りながら早苗がとても小さい声でそう言った。


 これがまた必要以上に男の欲望を刺激してしまう、とは目の前の少女は知らないのであろう。


 無知は時に悪だと教えてやりたいぐらいだ。


「………………」


 女の子の白くて柔らかそうな肌はとても綺麗だった。

 頬はいつもより赤く、全身も若干赤みを帯びているように見えなくもない。


 かけ湯の時に手でお腹の辺りを抑えて隙間から大事な所が見えないようにとしたとき、タオルが引っ張られた事でスタイルの良さを強調してくる早苗。

 よく見れば腰もくびれており、お尻もふっくらしているように見える。


「隣いい?」


「うん」


 俺の隣に来ては身体を預けてくる早苗。

 しかし思っていた通りだ。

 女の子の素肌はやっぱり柔らかいらしい。


「それで私の身体見た感想は?」


 目を閉じて、安心している、リラックをしているとも取れなくもない状態で早苗が質問してきた。


 あぁー幸せだ。


 好きな子のこんな無防備な姿を見らえるとは、まさに眼福、眼福。


 身体が近くなりタオルで隠していても胸が大きすぎて谷間が全部隠しきれていない。

 早苗の胸元を見れば谷間に僅かな隙間があった。


 ――しまった!


 俺は今何を見ようとしていたんだ。

 ……しかも早苗が水面に映った俺を見ているではないか。


「もぉ~、やましい気持ちしかないじゃん」


「すみません」


「ならちょっとだけだよ」


 そう言ってタオルを緩めて、見えるか見えないかで見せてくれた早苗。


 俺の瞳孔が覚醒し、そこに全意識が集中する。


「へぇ~、私の身体にそんなに興味深々なわりにはやましい気持ちは一切なかったと」


 タオルをきつく巻きなおしながら早苗が不敵な笑みを浮かべる。


 やられた……。


 二人きりだからと早苗め大胆な事を……。


 これでは俺がもう早苗の事大好きで、ずっとこんな日が来るのを実は心の底で待っていたみたじゃないか……。


「……すみません。本当は興味しかなかったです」


 やっぱり早苗の方が一枚上手だ。

 俺の頭を撫でながら「まだまだだね~」と言ってくる早苗。

 何としてでもお風呂に入っている間に一回は恥じらわせてやる。



 しばらくして。



「達也ちゃんと素直になったし、身体洗ってあげようか?」


「えっ?」


「緊張してるんだね。いいよ、今だけお姉ちゃんになってあげる。だから早く行こう」


 頬を赤く染めた早苗が急かすように手招きしてくる。


 俺は湯舟から出て、早苗が用意してくれたお風呂の中にある椅子に座って背中を向ける。


「ほら、力抜いて」


「う、うん」


 俺は全身を脱力させてリラックスする。


「ホント、素直だね。でも素直な達也って可愛いから好きだよ」


 早苗がシャワーを手に取って蛇口をひねり、お湯を優しく頭からかけられた。

 口を開けばお湯が中に入る為に黙っていたが、「あら、ピクッとしたって事は私に気があるんだね」と更にこちらの口を封じた上でからかってきた。

 それも徐々に強くなる水圧に俺は言葉を最後まで封じられた。


「むぅうう、うむぅうう!」


「お姉ちゃんなんでもないことですぐに嫉妬しちゃうぐらい愛があるから許してね~やましいたつやく~ん。そうこれは愛情表現の一つだよ~」


 髪が濡れきったことでようやく俺の口が解放される。


「今愛があるって言ったな。つまりそれだけ俺の事が大好きってことなんだな?」


「//////////////」


 鏡越しとは言え、早苗の身体が熱湯でゆでたタコみたく真っ赤になった。

 赤面癖あるとは思っていたが、まさかここまでとは。

 俺も人の事を言えないが、これはこれでわかりやすいな。


「早苗が大好きですって告白してくれたら恋人になってあげてもいいぞ?」


 ニヤリと微笑む俺。

 これはもう俺の勝ちだろ。

 早くも確信した。


「……それは」


 もごもごとする早苗。


「絶対に嫌。男なら惚れた女の子に自分から告白したら?」


「べ、別に俺は早苗の事何とも思ってないぞ」


「そう、そんなこと言うんだ?」


「本当のことだからな」


「へぇ~」


 ぎゃーぎゃーお互いいながらも髪は指の腹で頭皮をやさしくマッサージする感覚で洗ってくれた。これがまたとても気持ち良かった。その時につい油断した俺を早苗が見逃すはずもなく。


「気持ちいい?」


「うん」


「よかった。そのまま目閉じててね」


 急にモゾモゾと動き始めた早苗。

 音と身体に伝わってくる振動で何かをしているのはわかるが、目を閉じているため具体的に何をしているかはわからない。

 多分動いたせいで乱れたタオルでも直しているのだろう。

 早苗は大きな胸を俺の背中に密着させて腕に力を入れて頭を固定してきた。


「今ねタオルしてないから、見ちゃダメだよ」


 いつの間にかタオルを外した早苗。

 嘘だろと思い、閉じていた目を開けて見れば俺の身体が邪魔でハッキリとは見えないが、早苗の身体のラインが所々見える。


「惚れてない女の子の身体そんなに見たいの?」


「…………ッ!?」


「今さ背中からはみ出た横乳見て興奮したでしょ」


 早苗は俺の後頭部を自慢の胸の上に置き、俺の顔を上から覗き込んでくる。


「そ、それは……」


「なんで急にタオルが膨れ上がったの?」


「…………」


 俺の下半身を隠していたタオルの変化に早苗が気が付いたらしい。

 これは生理現象でなにもやましいことなんかはない。

 だけど女の子それも好きな人に見られていると思うと、もう誤魔化す事もできない。

 なによりもうずっと我慢していたが、制御がきかない。


「触って確かめてあげないと素直になれない?」


 早苗の顔は赤いままだ。

 だからなのか早苗の吐息がいつもより熱く感じるのは。

 それに早苗の左手が俺の左太ももを撫でるように触って来たために、変な声がちょっとだけ出てしまった。


「…………そ、それは」


「素直になっちゃいなよ。私ねこの前冷めたって言ってたけど、本当はまだ達也の事異性として見てるよ。まだわからない?」


「……うん」


「私好きな人にはとことん意地悪だし甘えん坊だよ? 達也はそんな女の子嫌いかな?」


「好きです」


「ならさ、今日だけ二人の秘密。ちょっとだけあの日に戻らない? 私達が抱き合ってキスして夜を共にした日に。私ずっと寂しかったんだよ……」


「早苗……」


 これはもうキスするしかないのか!


 今目の目にいる女の子が求めているキスを。


 ああ、もう素直に大好きって認めるしかないのか!


 俺は手を使って早苗の顔を近づける。


 後五センチ、四センチ、三センチ、徐々に近づいてくる早苗の柔らかくてプルンとしたピンク色の唇。


「優しくしてね」


「あぁ」


 後二センチ、後一センチ。


 そして。


「――むぅ!?」


 キスできる! と確信した時だった。

 突然右手の平で俺の口がふさがれた。


「ばーかぁ。キスする前に大好きって言って。でないと嫌」


 そのまま俺の身体を起こして早苗が自分で取ったタオルを取ろうとしたとき、鏡越しでハッキリ一瞬だったが早苗のその……おっぱいが見えてしまった。

 早苗の油断が招いた結果とは言え、身体を横に倒した為に俺の身体に隠れていた部分が顔をだしたのだ。


 当然早苗も身体を傾けた時点で気付く。


「ぅぅううううう。エッチ……わぁ、こっち見ないで」


 俺が振り向いて事実確認をしようとすると慌てて背中に後ろから抱き着いてきて、強引に見えないようにしてきたのだが。


「いろいろ当たってるぞ?」


「……わかってる。今はなにも言わないで」


「でも」


「わかった、わかった、認めるし自白するから許して。私も達也の身体見て興奮してたし、今下半身がマズいことにもなってる。でも女の子だってそうゆうのに興味がある年頃なの。それにやましい気持ちと言うか、少しぐらいならいやらしい事も達也とならありとか考えてました!!!」


 いきなり泣き始めたかと思いきや、まさかの聞いてもいない事まで暴露を始めた早苗。

 流石にこれには俺も驚いた。


 おかげで俺の頭は一気にクールダウンを初めて、落ち着きを取り戻し始めた。


 それにしても早苗の身体が異常に熱い。


「これじゃダメですか?」


 背中にピタリと張り付いた早苗が弱々しい声で言った。


「ならキスして欲しい。そしたら許す。いつも早苗の我儘に俺が最後は――」


 チュ


「今は頬っぺたで我慢して?」


 俺の肩から覗き込むようにして顔を出してきた早苗。


 なんだ、めちゃくちゃ可愛いじゃん。


 それに唇じゃないって所が今はいい。


 いつか必ずその唇をまた俺だけのものにしてやるからな。


「今回だけだぞ」


「うん。なら背中洗ってあげるから前向いてて」


「おう、頼む」


「うん。やっぱり私はこれくらい自然な感じが変に緊張しないで普通にいられるかな」


「俺もかな」


「私達やっぱり気があうね」


「似た者同士なのかもな」


「だといいね」






 俺は早苗に身体を洗ってもらい、早苗は恥ずかしいからという理由で自分で身体を洗った。






 その間に俺が浴場を出て更衣室で着替える。


 俺が使っていた籠ではないほうにあるものがあった。

 積み上がった衣服の一番上に早苗のブラジャーが一番上におかれていた。


 デザインは花柄で明るい色、サイズはやはり大きい。


 なぜだ?


 パンツは見えないようにしてブラジャーだけが見えるようにして置かれている理由は。


「………………」


 今早苗は身体を洗っていてここに来ることはない。


 今なら匂いを嗅いだり、触ってもバレないだろうか。


 さっきまで正常だった俺の脳がまた良くない方向へと動き始める。


 一応後方を確認して手に持ち、鼻に近づける。


 くんくん


「……あ、いい匂い。早苗の――!?」


 俺は一体何をしているのだ。


 これでは変態ではないか


 でも、もう少しだけ……。


 あーいい匂いだ。


「……って俺は一体なにを」


 ちなみにここに早苗のおっぱいがいつも乗っているのか。


 おーなるほど。


 カップが入っていない下着は柔らかいのかと指で突いてみたり肌触りも確認してみる。


 水の音が消えたので俺は慌ててブラジャーのを元の場所にぽんと置いてその場を立ち去った。





 着替えが終わり俺が部屋で待っていると早苗が更衣室から出てきた。


 そのまま何故か俺の隣に腰を降ろして腕に抱き着いてくる。


 早苗の柔らかい物がしっかりと俺の腕に当たる感覚は何度経験しても良いものである。


「これで捕まえた。ところで一つ聞いてもいい?」


「なにを?」


「私ね、更衣室出る前ブラジャーの紐の部分をカップの中に入れるようにしておいたんだけど、今着替えるときは外に出てたんだよね。どうゆうことかな、た・つ・や・く・ん♪」


 俺の背中に大量の水をぶつけられたように背中がびしょびしょになった。


 お風呂上りで熱いからと思いたいがそうじゃない。


 部屋の温度が一度、いや二度、もしかしたら三度以上急に冷えたのも部屋の空調が原因じゃない。


「私の恥ずかしい姿見ただけじゃなくて物足りたくて私の下着触ったんだよね? それでなにをしたのかな、お姉ちゃんに全部話してみなよ。まだ時間は一時間あるからさ」


「あっ……いや……」


「嫌なら綾香さんに私の入浴中に達也が下着を触って何かしたって報告するよ」


 俺の腕を離して、押し倒して正面から馬乗りになってくる早苗。


 それから鼓動を確認するようにして俺の心臓に耳をつけてきた。


 そのせいでただでさえ、ドキドキしている心臓が破裂しそうになってしまった。


「ほらこのブラだよね、た・つ・や・く・んが興奮したブ・ラ・は」


 来ていた服をたくし上げて下乳と一緒にチラッと見せてくる。


 あ、悪魔だ……。


「は、白状するので……母さんには黙っていてください」


「白状だけじゃ嫌だけど、まぁ聞いてあげる。とりあえず達也が私に膝枕して頭を撫でながら白状するなら考えてあげるよ。どう?」


「異論はありません」


 俺は早苗の要求を受けれいて、足を伸ばして座り、そのうえで早苗に膝枕をした。

 それから頭を優しく撫でる。

 まさか二人でお風呂に入ったために、このような前半戦と後半戦になるとは思ってもいなかった。


 正当防衛の為に、俺は言い訳する。


「そもそも目に付くところにあったのがズルいと言うか……触られたくなかったら服の下に隠すのが普通なんじゃないか?」


「私はただ達也がやましい気持ちがないって言っていたから、なら大丈夫かなって信じてたんだけだよ~」


 くそっ……やっぱり俺試されていたのか。


 このままじゃ結局いつも通り早苗のペースで進められてしまう。


「私から質問。私のブラを見てやましい気持ちに少しでもなった?」


「……はい、なりました。ろ、六年生見た時はもっと小っちゃかったけど、今はこんなにも大きいんだなって思ってよ……よく……よくじょうしました」


 すると早苗の顔が赤くなった。


「……ぇ…………ちょ………バカぁ///」


 早苗の視線が泳ぎ始めた。

 ……えっと……どうしたんだ。

 急に恥ずかしがって……。


「なんで覚えているのよ。この変態」


 ……それから身体を少し動かし俺のお腹に顔を隠すようにしてひっつけて来た。


 早苗の全身が熱を帯び始めた。


 この熱も部屋の空調やお風呂上りの熱とは違う気がする。


「……それで? 私のブラ触って見ただけ?」


「…………はい」


「うそ。本当は?」


「……おっぱいが触れる場所ってどんな感じなのかな……と思って触りました」


 あー死にたい。


 めっちゃ恥ずかしい。


 なんで俺は好きな女の子に自分の性癖を醜くも晒したあげく、自分の口からそれをカミングアウトしなければならないんだ。


「どうやって触ったの?」


 俺の服を掴むんでいた力が強くなる。


「指でツンツンって、あとは指先で……その肌触りを確かめました」


「……って事は今……私達也がいやらしくさわった所が私の大事な場所に触れてるの?」


「………………」


「ぅう、恥ずかしいからこたぁえてぇ!」


「はい。その通りです!」


 俺は開き直って宣言してしまった。


「に、匂いとは……流石に………ってえ、なんで目を逸らすの……まさか……」


 ……ああああああ!!!!


 それだけは言いたくない!!!!


 匂いってもうこれじゃ俺が I・LOVE・SANAE じゃないか!!!!!


 まぁ実際そうなんだけどさ……もう勘弁してくれよ……。


 もう辛くて涙が出てきてしまったじゃないか……。


 マジで死にたい……。これ絶対……嫌われた……もうヤダ……。


 謝っても許してくれないよな……。


「………………」


「……嗅いだんだ?」


「……はい」


 俺は涙をこらえて答えた。


「嗅いだ感想は?」


「…………見逃してください」


「………………いや」


「ひかない?」


「……うん」


「いい匂いがして幸せな……気持ちに……なりました。本当にごめんなさい……」


 とうとう我慢できなくなった。


 泣く方が逆って事ぐらい当然わかってる。


 だけどさ……もう後悔しても絶対遅いってわかってるけどさ。


 やっぱりもうドン引きされたと思うと辛くて……。


「へぇ~。本当は私に欲情してたんだ?」


「……はい」


「ちなみにどうして匂いを嗅ぐなんてことしたの?」


「好きだからです、早苗の事が……好きな女の子の下着に興味があったからです」


「今匂いを嗅ぐほど私の事を好きって認めたね」


 起き上がった早苗の両手が俺の顔を上げる。

 頬に触れている両手が熱い。

 それもかなり。


 真っ赤になった早苗の顔はリンゴみたいに真っ赤だった。

 それにいつの間にか顔が笑っている。

 それから早苗が俺の涙をペロッと舐めた。


「ちなみに知ってる。私お風呂入る前に達也の下着に同じ事したの? 気が付いてないでしょ?」


 そう言えば女の子に下着を見せるのはよくないと思って服の一番下にして籠の中にいれたような。


 それで出るときは一番上に……あれ?


 なんで下着が一番下から一番上に……。


 ん……?


 そもそも今なんと……?


「ちなみに私はどんな味がするかペロッて舐めて見ました」


「えぇぇぇぇぇぇええええええーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」


 涙が止まった。


 そして急に下半身が変な気持ちになった。


 つまり今間接的とはいえ、俺の大事なあそこを早苗が舐めているってことなのか!?


 もうどう反応して良いかがわからない。


 いや興奮するとか……そんなんじゃないぞ……!!!!!

 いやマジで!!!


 どうせなら直で……ってあああああああ俺の性癖ががががががああああああ!!!!!


 すると。


「うそ。舐めるはしてない。でも……匂いは嗅いじゃったの。それで私の……そのエッチなスイッチが入ってね……浴場で誘惑しちゃったんだ。それで私だけはズルいから達也ならどうするかって試してみたの。やっぱり私達似た者同士だね。ちなみにどう、お姉ちゃんにいっぱい意地悪されて顔を赤くした感想は?」


 おい、無駄に期待してしまったじゃねぇか!!!


「……ばか! もう絶対に許さないからな!」


 俺は大声で叫んだ。


 どんだけ俺が恥ずかしくなったと思ってるんだよ。ったく!


 もう絶対に早苗なんか許さない。


 このクソ悪魔が!


「あっ、拗ねた。倍返しどころかこれはやり過ぎちゃったね。ごめん、ごめん」


「…………もう知らん」


「ゴメンって機嫌直してよ」


「とにかくもう帰るぞ!」


「あっ……ちょっと……」


 えっ……。


「これで許して? 好きな人に意地悪してすぐに拗ねちゃうお姉ちゃんを。本当にゴメンね」


 涙目で口元を噛みしめながら早苗が言ってきた。


 そこまで本気で後悔するなよ……。


 俺も言い過ぎたとは内心思ってるし、ってかこれ早苗?

 

「…………」


「ダメぇ?」


「こ、今回だけだからな……ばか」


「うん。顔真っ赤で本当に可愛い。ありがとう、達也」


「ほら……帰るぞ、早苗」


「うん。今日は一緒に寝たい。今夜は甘えん坊のお姉ちゃんになってもいい?」


「……わかった」


 帰り道俺と早苗は今日の事は絶対に他言しないとお互いに約束した。


 やっぱり俺はなんだかんだ言って早苗が大好きだ。


 初恋を忘れようと何度も思ったけど、多分それは無理だ。


 それに早苗の気持ちも今日わかった。


 早苗も俺の事を好きなんだって。


 帰り道、早苗が俺に言ってきた。


「あの時に比べたら冷めただけだから。ちゃんと伝えるとね、会えなかった三年間で色々と不安に思っている事があってその分迷っているだけ」って言葉。

 つまりまだ気持ちは冷めきっていないらしい。

 ここは聞かなかったけど、多分俺も早苗も欲しい物は同じだと思う。


 ――好きな人を独占して、意地悪を沢山したいしされたいんだって気持ち。


 何より好きだからこそ、やっぱり初めは相手から【大好き】って言ってもらいたい願望だってある。これは譲れない。俺にとってはそれだけ大事な言葉、それはどんな言葉より大切で一番聞きたい言葉だから。



 帰り道手を繋いだ。



 約三年振りの早苗との手を繋いだ感覚はとても懐かしくて清々しさを感じる結果となった。


 右手が温もりだとするならば左手は最後早苗が五秒程だけど触らせてくれたおっぱいの感覚がしっかりと今も残っている。


 めっちゃ柔らかくて、弾力があって、肌触りが良かった!!!

 それはもう他の全ての感情が無になるぐらい、新鮮で嬉しい出来事だった。


 俺達ってさ。


 ――本当に不器用な恋人以上夫婦未満の幼馴染なのかもしれない。

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