第10話 相談/揺心
◆◆アキラ◆◆
「なるほどな。だからわざわざ一人で迎えに来た訳か」
俺とシアが入街の列に並んでから少しして、アイが一人でやってきた。
シアを見て、少し目を丸くしていたが、「話したい事があるから、街に入ったらこの店に来て」と言い、手書きの簡単な地図を渡して、さっさと街に戻っていった。
そして、正規の手続きで街に入り、指定された店に出向くと、入り口に程近いカウンター席で待っていたアイと合流した。
アイは店の主人に追加で金を払うと俺達を個室に案内した。この店はどうやら冒険者が依頼人やパーティーの仲間と相談をする場所のようだ。冒険者ギルドにもそんな場所はあるだろうが、ギルドにも知られたくない話をする時用にこういう店があるのだろう。
俺とシアがアイと向かい合って椅子に座る。
「アキラ、貴方に相談したい事があるの。でも、その前に、アキラ、その
「彼女はシア。暴漢に襲われていたところを助けたんだ。一応、俺が保護者だな。大丈夫、信用してもらっていい」
「そう。その右腕のケガはその時に?」
アイのその言葉にビクッと身体を強張らせるシア。あ~、普通の女の子にいきなり腹芸するのは無理だわな。
「これは別件だ。右手が少々使い辛いが、大して問題はない」
「それならいいけど……じゃあ、相談に移っていい?」
「あぁ。で、相談とは?」
「昨日、貴方と別れてからの話なんだけど……」
俺の促しに少し躊躇う様子を見せてから、アイは意を決したようにこちらを見つめて話し出した。
「門をくぐった先に、ロイドとアルベルト、私とスノウを逃がす為にゴブリンの巣に残った2人と無事再会出来たの。だけどその時、ある違和感に気付いて…… スノウは気付いてなさそうだったし、直接2人を問いただす訳にもいかなくて、それでアキラに相談したかったの」
で、冒頭の俺の一言となった訳だ。
「それで、具体的にはどういう違和感なんだ?」
「装備があまりに綺麗過ぎるの。2人ならゴブリンの群れを突破出来るかもしれないけれど、一発も攻撃を受けないなんてあり得ない。あの時間から街に戻っても街に入れないから、翌朝一番に街に入ったとして、半日でキズ一つない状態に直すのも無理だと思う。なら、結論は、攻撃を全く受けていないとなるの。私、この街に来る前、辺境ではギルドの仕事を減らさない為に、一般人や冒険者の女性を魔物に与えて、魔物の数を維持してるって噂を聞いた事があるの。だから、もしかして、と……」
流石魔術士。そこまで自分で気付けたか。なら、情報を伝えても問題ないな。その方が俺も動きやすいし。
「アイ、実は君達に伝えてなかった情報がある。2日前、君達が岩山の上で休んでいる時、ゴブリンの集団が岩山の下まで捜索に来ていた。そしてその集団は、2人の人間に率いられていた。1人は金属鎧の重装備、もう1人はアイのようなローブ。俺が2人を攻撃した時、ローブの方が金属鎧の方に『ロイド』と呼び掛けていたのを聞いている」
「!! それじゃ、やっぱり!! でも、アキラ、それならどうして私達が起きた時に教えてくれなかったの!?」
非難がましい視線を俺に送るアイ。ゴブリンの生け贄にされかけたのだから無理もない。
「まず、あの時点では俺に対する信用度が、その2人より高くないと判断した。スノウが敵討ちの為に、俺をパーティーに勧誘していたからな。命懸けで自分達を助けてくれたと思っている相手を俺が誹謗したとして、アイやスノウは話を聞いてくれないだろうと思った」
「それは……そうだったかも……」
「それに、その時点ではまだ状況証拠でしかなかった。捜査して、情報の確度を上げてから伝えるべきだと思った」
「なるほど、筋は通ってるわね…… なら、今、私に伝えてくれているという事は、その確認が出来たという事ね?」
「証拠を見せられる。が、盗聴と覗きの防止は出来るか? 出来なければ俺がやるが」
「出来るわよ。アキラの方法も気になるけど、ここは私が使っておくわ。【サイレンス】、【ミラージュ・スフィア】」
アイが魔術を使うと、俺達の真ん中を中心に半径1mの空間の外側の音波伝達と可視光線の伝達が阻害されている事が確認出来た。この部屋を外から見れば、机も俺達の姿もない、がらんとした空間が見えるだろう。
漏洩防止が確認出来た事で、俺は昨日記録した映像を俺達とアイの間の空間に投影する。勿論、アイの方からきちんと見えるように左右は反転してある。
「ちょっと、これ!?」
「これは俺が身に着けている装備を使って、昨夜の2人の動きを追ったものだ。何処かの建物から出てくる2人を発見し、この装備を射出、何処かの建物に入るところから記録を開始している」
「映っているのは冒険者ギルドの入り口だわ。扉をくぐった先に受付カウンター。階段を上がって2階の奥へ。それにしても何て速さなの! それに、魔力探知にも引っ掛からないなんて……」
人ではまず無理な速度で飛ばせるからな、ドローンは。扉を掠って2人が周囲を確認しても見つからない事にも驚いているアイ。魔力探知に引っ掛からない、つまり、ただの道具でこんな風に簡単に侵入されたら、魔術士としては立つ瀬がないだろうな。
この世界は恐らく、魔術が発展しているせいで科学技術は日陰に追いやられているのだろう。上手く組み合わせられればより便利になり、それぞれの技術も更に発展するだろうに……
もっとも、技術には利権が絡むから、そうそう仲良くもしていられないのも分かる話だ。この手の問題は、どんな世界でも見られるものだし。
「……」
アイは映像を見終わると無言になった。ギルドぐるみで生け贄にされかかったのだから当然だろう。ギルドも、仲間だった2人も、もう欠片も信用するに値しない。当たり前の帰結。
「さて、これを見た上で、君はどうしたい? 知り合ったのも何かの縁だ。俺は、可能な限り手を貸すつもりだが」
「……アキラはどうしたらいいと思う?」
アイ程頭の回る者が、質問に質問を返している。ショックのあまり、絶賛思考停止中なんだろうな。まぁ、幾つかの案はあるから、提示してやるか。
「大まかに3つの案がある。1つ目は、さっさとこの街から出ていく事。これが一番穏便に済むだろう。別の誰かが生け贄になるだけだろうが、それを何とかする義務はアイやスノウにはない。2つ目は、今見せた映像を何か別の道具に移して、ギルドの本部や国に告発する事。ただ、こういう組織の告発はかなり時間が掛かるのと、本部や国が黙認している可能性もある。それにそもそも、この映像が証拠として認められるかどうかという問題がある。3つ目は、この近辺の魔物を殲滅してしまう事。俺が手を貸せばやれなくはない。だが、生態系に重大な影響を及ぼす恐れがあり、それにより今までになかった被害が発生すると予測される。君ならどれを選ぶ?」
「うぅん……」
俺の示した案に、悩ましげな声を洩らすアイ。こればかりは当事者が考えない事には始まらない。自分が覚悟して選んだ上での後悔と、他人の意見に流された上での後悔では、天と地程の差があるのだから。
「ねぇ、アキラ。もし私が3つ目を選んだら、アキラは協力してくれる?」
上目遣いにこちらを窺うアイ。1つ目ではなく3つ目か。
「可能な限り手を貸すと言ったし、手を貸せばやれなくはないとも言った。だが、わざわざ戦う理由を尋ねてもいいか?」
「そうね……もう自分の無力さを理由に誰かを犠牲にするのは嫌だから、かな……」
「……ギルドや仲間に裏切られて憤るのは分かる。他人を犠牲にするようなやり方が気に入らないのは俺も同じだ。だが、周りに影響がある事を分かった上で、自己満足の為に協力を要請するのか? スノウから聞いたが、2人は
俺が本気を出せば、ゴブリンだろうが人間だろうが、俺1人で万単位どころか億単位で殲滅出来る。まだ広域探査をしていないからここが惑星上かは分からないが、【グラヴィトン・スフィア】を限界威力で惑星の核に撃ち込めば、惑星ごと消滅させる事も可能だ。
そんなジェネシスの
だが、振るえるからといって簡単に強大な力を使う事は悲劇しか呼ばない。
必要なのだ。振るう力に見合った理由が。心なき力は暴力なのだから。
自己満足程度の理由で俺は力を振るう気はない。だからこその質問。
「言い方が悪かったわ。女性がゴブリンに拐われると、ゴブリンの慰みものにされて、心も壊れて、まだ死んだ方がマシだったんじゃないかと思う有り様になると聞いたわ。だからね、ゴブリンがいなくなった事で別の問題が出るかもしれなくても、ゴブリンがいる事よりはマシなんじゃないかと思った。そして、私1人じゃ無理でも、貴方が出来ると言ってくれた。それが戦おうと思った理由よ」
なるほど。俺もこういうファンタジーな世界に降りた事は一度や二度じゃない。時にはアイツの足跡を追う為に、冒険者とかハンターとかに身をやつした事もあった。そして、アイの言うような、いや、もっとえげつない場面にも出くわしている。だから、アイの気持ちも理解出来る。
「そうか。そういう理由があるなら、手を貸そう。というか、最初からそう言えばいい。君はあまり交渉事は得意ではないようだな?」
「交渉はスノウがやってくれてたから……これからは自分でも少しは努力してみるわ」
「よし。方針が決まったのなら、具体的なやり方を詰めようか」
「ありがとう。感謝するわ」
△△アイ△△
「ありがとう。感謝するわ」
色々と突っ込みたいところは沢山ある。でもそれは、事態が落ち着いてからでも出来る。今は、このギルドの酷いやり口にどうやって意趣返しするのかを考える事にした。
「やり方を詰める前に、少し俺の事を話しておく。俺が空中を移動したり、広範囲に周囲を把握出来るのは、全て身に着けてている装備のお蔭だ。魔法だの魔術だのは一切使っていない。一応、魔法や魔術は使えなくはないが、俺が俺の敵と戦うのには実用に耐えないレベルだ。そして、身体能力の高さは、この身体自体がそういうものだからだ。簡単には教えられない事とはいえ、嘘を吐いていた事は謝罪しておく。すまなかった」
あら。突っ込みどころの幾つかは解消しちゃったわ。なるほど、これがアキラの交渉術な訳ね。信用に足ると判断したからこそ、秘密を打ち明けた、と。でも、まだ幾つか疑問があるのよね。折角だから今の内に聞いてみよう。ふっふっふ♪
「まぁ、話せない事なんて誰にでもある訳だし、今、話してくれたのだからいいわ。それで、
「それはほぼ本当だ。違うのは、遺跡探索中にではなく、倒した敵の置き土産によるものだというところだな。ここに来たのも偶然だ」
あ、そこは本当なんだ。じゃあ、私達に出会ったのも偶然で、助けてくれたのもたまたまだったと。運命の出逢いは本物だったという事ね。
「アキラの装備、えーと、銃に光の剣、周辺探査、偵察と飛行の道具、それ以外にもあるの? ほら、具体的な方法を考えるにも、アキラの
「まぁ、正論だな。もう言うまでもないかもしれないが、他言無用で頼む。もっとも、ここまで来ると、他言したところでアイの頭を疑われるだけだろうけどな」
「う……聞くのが怖くなってきた…… でも、聞くわ」
光の剣に銃、普通とは違う身体、飛行や探査、偵察の道具。もう多少の事じゃ驚かないわよ。
「そうだな……光の剣、Pブレードは俺にとっては予備武器だ。俺の得意な武器は槍。あぁ、今、荷物に括ってある奴じゃなくて、別のな。そこの槍は、冒険者を装う為に昨晩用意した、只の総ミスリル製のショートウイングドスピアだ」
「そう、只の総ミスリル製スピア……総ミスリルスピア?!」
パッと見、普通の鉄槍にしか見えないんですけど!?
短槍とはいえ、総ミスリル製なら、これ1本で十数年は遊んで暮らしていけるわよ!? それを小道具扱いって……
あ、でも、アキラの持っている他の道具って、それどころじゃないわよね? 下手したら、国を丸ごと1つ買い取って、一生運営していけるだけの値段が付くかも。だったら、総ミスリルの槍なんて大した事ないのかな?
「後は、背中の
貴方、何とんでもない事さっくり言ってるんですか!?
「爆発ならまだしも、ぶ、物質を消滅って……魔術でもそんな事出来ないわよ!? 道具でなんて出来る筈が!!」
「それはアイが世界の理を知らないからだろう? 物質と反物質を対消滅させてエネルギーを得るのはれっきとした技術だ。まぁ、魔法や魔術なんてものがあるところじゃ、世界の理を調べるなんて事はあまりやらないだろうから、知らなくても無理はないが」
私は震えた。私の常識である事柄を軽々と超えてくるアキラの話。
簡単にミスリルなんかを出してきたり、物質を消滅させる武器があったり。
アキラの言っている事が正しいなら、私達は世界の理のほんの一部しか分かっていなかったという事になる。
アキラと一緒に居れば、私は私をもっと高みへと引き上げられる。
強くて優しくて賢明で、ミスリルをぽんぽん出せるなら、資産だって潤沢にあるだろう。
アキラの知識と
ここは私の身の上も話して、アキラに力になってもらおう!
神様! アキラに出逢わせて下さって感謝致します!!
「アキラがとんでもない人間なのはよく分かったわ。普通なら怖がるところなんでしょうけど、私はそんな事しない。だってアキラの
「お褒めに預かり恐悦至極、と言っておこうか。怖がらずに話を聞いてもらえるのは俺としても助かる。さて、それじゃ話を戻して、ゴブリン共を殲滅する手筈の相談を……」
「ちょっと待って。アキラが私を信頼して、色々と教えてくれたのなら、私も私の事もきちんと話しておきたいの。私からの信頼の証として」
胸に手を当て、"貴方に好意を持ってますよ~"的な視線でアキラを見つめてみる。
「う~ん……それはまた今度で頼む。でないと君の精神力だか魔力だかが尽きてしまうだろう? 話、長そうだし」
さくっと流された~~!?
あ、でも、私の事を慮ってくれたのだから、一歩前進よね! そうよ! 一歩一歩が大事!
「こ、こほん! 気遣ってくれてありがとう。え~と、それで、どうするの?」
「まず確認しておきたいんだが、ギルドで受ける討伐系の仕事の場合、徒歩で片道どのくらいの日数が普通なんだ?」
「う~んと、大抵は片道1日まで。長くても片道2日ね。片道3日だと隣の街に着いてしまうから、それだと隣の街から向かう方が早いもの。村だって、町から1日以上離れている所はほとんど無いし」
「街と村の違いは?」
「ギルドの支部があるかどうかと、防衛が公的かどうかよ。ギルドの支部があって、国や領の衛士が常駐しているのが街で、それ以外が村ね」
「なるほど。なら、この街のギルドが受け持つ範囲は徒歩で片道一日半の距離か。どれどれ?」
アキラの視線が若干左に逸れ、何かを注視しているような感じになる。
「ここから半径50km圏内に凡そ2000匹のゴブリンがいるな。巣の数は25。巣の規模は、小さいので20匹くらい、大きいので150匹くらいか」
「なんっ!? 一体、アキラってどのくらいまで感知や索敵出来るの!?」
「戦闘出力だと300万……いや、止めておこう。聞いても訳が分からんと思うし、余りに突拍子もない情報は、アイの身を危険に晒す」
とんでもない数字が聞こえたような気がするけど、アキラの言う通り、突っ込まないでおくのがいいと判断する私。"好奇心は猫を殺す"っていう言葉もあるし。
「それでだ。まず俺が、夜の内に空爆して、この街の南西にある一番大きい巣だけ残して殲滅する。150匹のヤツだな。で、2日程時間を空けてやれば、ギルドの方もゴブリンが殲滅されている事態に気付くだろう。そうなると、強引にでも生け贄を用意してその巣に向かわせようとする。そこを押さえて、ギルドの悪事を白日の下に晒すと共に、最後の巣を潰してしまえば、2つ目と3つ目の案をまとめてやってしまえる訳だ。アイには、アイと同じ程度のギルドランクの女性にそれとなく注意を促して欲しいのと、事が起こった時に証人として協力してもらえるように頼んで欲しい。それと、昼間は前に約束した戦闘訓練をする予定だが、その時逆に、俺にアイの魔術の話を聞かせて貰いたい。頼めるか?」
「もちろんよ! アキラが協力してくれるんですもの、私だって頑張るわ! 魔術の事なら何でも聞いて!」
よし! アピールポイントきたーー!
売り込んじゃうわよ!
「それじゃ、まずこの後はギルドで冒険者登録だな。やっておかないと街の出入りが面倒だ。アイ、シアくらいでも登録は出来るよな?」
「出来るわ。このくらいの子が登録して、採取系や街のお手伝い系の仕事してるもの」
「分かった。シアもそれでいいな?」
「うん。アキラのいうとおりでいい」
「じゃあ、ギルドに向かいましょう」
私が魔術を解除して立ち上がると、アキラ達も席を立ち、3人連れ立って冒険者ギルドへと向かった。
私達、親子に見えるかしら♡
▲▲スノウ▲▲
「あぁんもう!! 失敗した~~!!」
翌朝、アキラが入ってくるの分かってるのに飲み過ぎたぁ……
夜明けと同時に開門して、この時間だともう北門に向かっても仕方ないわよね。
アイもアイよ! 起こしてくれればいいのに! きっと、どこかの店に入って、アキラと楽しそうに朝食摂ってるんだわ! キーーッ!!
取り敢えず中央広場に来て辺りを見回してるけど、そうそう上手く見つかったりは……
あ、今、ギルドから出てきたの、アキラじゃ!?
あれ? でも隣に、同じ赤毛の子がいるわね? そして、その隣にはアイ。
どーーなってるのぉーー!? まるで親子じゃない!!
と、とにかく、アキラのところへ行かなきゃ!!
「アキラーーーーっ!!」
アタシが大声で名前を呼びながら駆け寄ると、3人はコッチを向いた。
「よう。おはよう、スノウ。よく眠れたようで何より……酒くさ……」
え? そんなに臭う?
アキラは眉根を寄せてコチラを見てる。隣の赤毛の子は、キョトンとした表情でコチラを見ている。うん、カワイイわ。
そしてアイは、口元を可愛らしく手で覆い、今にも「ぷっ♪」っと言い出しそうな顔をアタシに向けている。
アイ~? 後で覚えてなさいよぉ~?
アイを睨み付けていると、アキラが口を開く。
「アイから聞いたが、ゴブリンの巣で別れた仲間と無事再開出来たんだって? 良かったじゃないか。これで俺をパーティーに勧誘する必要もなくなったか?」
「あ……えぇと……」
そうだった……もう勧誘するネタがなくなったんだった……
あ、でも、普通に誘ってもいいわよね!
「でも! アキラならきっとロイド達も認めると思うし、一緒に組まない?」
「すまないが、それだと俺の目的から離れる事になりそうだから遠慮させてもらう。俺達は3、4日したら北のイアダネスの街に向かうつもりだしな」
「そうなの…… ん? "俺達"って?」
「俺と、この、シア。そして、アイだ」
「えっ……?!」
ど、どゆこと!?
「その街にアイの卒業した学校があるみたいなんだが、そこで情報収集する為口利きしてくれるんだよ。それで、作ったばかりのパーティーに入ってもらったのさ」
ア、アタシが寝過ごしている間に、アイに二歩も三歩も先に行かれた~~!! アイの"ドヤッ♪"と言わんばかりの表情が眩しい……
ガックリと肩を落としたアタシにアイが近寄ってきて、アタシの耳元で囁いた。
「大事な話があるの。宿に戻ったら私の部屋に来て」
「えっ……?」
さっきまでとは違う真剣な声音に、思わず目をあげてアイを見る。
アイは、頷く代わりにまばたきで応じてから、アタシから離れた。
「それじゃ、俺とシアは宿を探すから、また明日な」
「えぇ、夜明け過ぎに南門で待ってるわ」
そう言うと、アキラと赤毛の女の子、シアは、南通りの方へと消えて行った。
状況の見えないアタシが茫然とアキラを見送っていると、アイから声が掛かった。
「私達も一旦宿に戻りましょう。スノウも、身支度整え直さないと」
そう言うと、アイも南通りの方へ歩き出した。
アタシは慌ててアイの後を追った。
「ちょっと! 何がどうなってるのよ!?」
◇◇シア◇◇
「……つまり、生体とは、維持・管理に、多大な手間が、掛かる代わりに、他の個体と協力して、子孫を残す事により、種の多様性を、拡げるシステム、という事、ですね」
「その通り。流石シアさん、理解が早いわ♪」
リィエ先生の講義は、とても分かりやすかった。だから、素直にそう伝える事にした。
「先生が、良いから、だと思います。丁寧に、教えていただき、ありがとう、ございます、リィエ先生」
「うふふ♪ ほんとにいい娘よね、シアさんは♪ そうだ! 私ならコウと同じようにRBSを扱えるから、今の内に強化
えっ? それが出来るならそうしたい。早くアキラの喜ぶ顔が見たい。でも……
「……でも、アキラも、コウさんも、自分達がいる時にしか、やってはダメ、と言ってました」
「コウもアキラ君も過保護なのよ。確かに、アキラ君がいない時に貴女が
「……リィエさんも、アキラや、コウさんと同じ、"未来視"が、使えるんですか?」
「そうよ。だから、私の言う事を聞いていれば問題は起きないから……ああもう! ミウ! 頭の中で煩い!!」
どうやらミウの身体の中で、ミウとリィエさんが言い争っているみたい。ミウは真面目だから、必死に止めているんだろうな……
「……リィエさん、少し、考えてさせて、下さい。私も、出来れば、アキラの言い付けは、守りたい。でも、早く、アキラと同じ身体にも、なりたい。だから……」
「……そうね。私も急に言い過ぎたわね。分かったわ。決心がついたらいつでもいらっしゃい。私は貴女の味方よ」
「ありがとう、ございます。リィエさん。私は、部屋に戻ります」
私は、どうしたらいいのだろう? アキラの言い付けを守る? リィエさんの提案に乗る?
私に"未来視"の力があれば、どちらが正解なのか分かるのだろうか?
MISSION "身体を手に入れろ" CONTINUED
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます