それから、一ヶ月がたった。


 いつものようにぶらんケットをつかって勉強していると、小さな異変に気がついた。ペンを持つ手を止めて、足に意識を向ける。最初、気のせいかと思ったが、確かに、つま先に冷たい流れを感じる。


 なんだろう? 今までこんなことはなかった。


 少しの間じっとして様子をうかがっていたが、それ以上は何も起こらなかった。……単に、水温が変化しただけなのか。気を取り直し、再び勉強を始めようとすると、足先に何かが触れた。


 びくっとなり、僕は動きを止めた。


 向かい合わせの距離感で、今、誰かの足に触れている。……それがわかった。


 ……もしかして混線? ……バグ。


 ど、どうする? 


 つま先を気にしていると、急に足がこむら返りを起こした。混線の副反応なのか……。ふくらはぎからつま先にかけて痺れが走る。痛みに耐えかねて、足を前に差し出すと、相手の足と重なった。


 さすがに気まずさがこみ上げるが、どうすることも出来ない。


 ひどい痺れはしばらく続いたが、そのまま身を任せるしかなかった。……仕方ない、なるようになる、そう開き直った頃には痛みは徐々におさまりを見せ始めていた。それにつれて、足の裏にあるものをありありと感じられるようになった。


 その足は小さかった。


 線は細いが、子供のものじゃない。……おそらく女性の足だった。


 こんな状況で、彼女はどう思っているのだろう?


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る