第8話

「ホントにどうしようもないやつだな君は」

「ごめん」

 沈黙を埋めるように呟く謝罪がわずかな間を埋めた。

「ねぇ、私のこと好き?」

「なんでそんなこと……」

 質問の意図がわからず、聞き返してしまう。

 電話越しに彼女のため息が聞こえた。

「知ってた? 私、君に好きって言われたことないんだよ」

「……ごめん」

「そうじゃないでしょ」

 わかっていた。わかっていてもそれを言葉にしていいものかわからなかった。

 だけど、求めているというのなら言葉にしてみようと思った。どうせ終わるというのならもうどうにでもなれと思った。

「色々とごめん。それと、その……君のことが好きだ」

 体が燃えるように熱かった。体の芯から沸き上がる熱が、恥ずかしさによるものだけではないことをすぐに理解できた。

「まだ許してあげないけど、ありがと。君はどう?」

 まだ、ということはどうやら許してもらえるみたいだ。そのことに心から安堵する。

「緊張した。恥ずかしいと思ったけど、それだけじゃないかも。なんだか変な気持ち。言えて良かったと思った。フラれると思ってたから……」

「反省した?」

 短いその問いに僕は真摯に答える。

「うん。……君のこと、大切にするよ」

「急に積極的だね。でも良いと思います。嬉しい」

 わずかに聞こえた笑い声を聞き、心が軽くなった。

 やっと、いつものように話せるようになり、重く濁った空気が晴れていくのを感じた。

 僕はずっと気になっていたことを聞いてみた。

「なんで、学校来ないの?」

「あーうん……そのことなんだけどさ……」

 口ごもる君なんて、僕は見たことがなかった。

 心がざわつき、心臓がはやる。


 聞かなければ良かったと、僕は後悔していた。

 

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闇に埋もれて 詩章 @ks2142

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