第42話 呼び出し


 初音と遊園地に遊びに行ってから、9日が経った。


 あの日から、考える事は初音のことばかり…。


 このままでいいのか? 俺はまだ覚悟ができていない。


 きっと、初音はそれでも俺を好きでいてくれるだろう。


 でも…それは駄目だ。


 俺は初音を支える存在になりたい。


 だけど、俺に何が出来る? 月15万のアルバイトの俺に…。


 もちろん、初音は自分の方が稼いでいるから出そうとするだろう。


 だが…それは嫌だ。


 男のプライドなんかじゃない。最悪、プライド何か捨ててもいい。


 今から職を探すか…? でも、俺に何が出来るって言うんだ…。


 ピリリリリリ…。


 「誰からだ…?」


 携帯が鳴り…手に取ると、山本 杏奈と表示されていた。


 山本 杏奈…誰だ?


 全く心当たりがない名前に、電話に出るのが躊躇う。


 とりあえず無視するか。


 ピリリリリリ…。


 お、止まったか。


 そう思ったのも束の間。


 ピリリリリリ…。


 また鳴り出した携帯に、思わずため息が出る。


 何なの? この山本って奴。マジで誰?


 ピリリリリリ…ピリリリリリ…。


 ピリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ…。


 「ええい! うるさい!!」


 あまりのしつこさに、携帯を手に取り一言文句を言おうと…着信に出た。


 「誰? しつこいんだけど?」


 「あ、安曇君! 助けて下さい!!」


 「はぁ?」


 いきなり助けを求められ…理解出来ずにいる中、俺を君呼びした奴は、慌てるように続けた。


 「お願いします! 前に絡まれた男の人達に追われているんです!!」


 前に絡まれて、俺を君呼び……ああ! 金髪ギャルか!! すっかり忘れてた。


 正直コイツとは、関わりたくないんだが…。


 「お願いします! お願いします! 助けて下さい!! 今頼れる人は安曇君しかいないんです!!」


 電話越しから弱々しい声が耳に入り、大きく…それは大きく、ため息を吐き出した。


 何で俺なんだよ…あの感じからして、絶対に交友関係広い癖に、何でよりにもよって、強くない俺に助けを求めるかなぁ〜!!


 常識的に考えろよ!! あんなガタイがいい奴に勝てるわけないだろ!?


 「はぁ〜〜〜!! 分かったよ!! 今どこにいるんだよ!!」


 「!! あ、ありがとうございます!! ありがとうございます!! 現在地は今送ります!!」


 そう言うと、電話が切れ…直ぐに、マップが送られてきた。


 結構離れてるな…。


 緊急事態だし、タクシーを使おうと思っていると…金髪ギャルからメッセージが届いた。


 『今この建物に逃げ込みました!! お願いします!! 出来るだけ急いで下さい! お願いします!!』


 あ〜〜必死なのは分かるんだけど、俺の事を全く考えていない事に腹が立つ。


 それでも…知ってしまった以上は、動かざるを得ない。


 はぁ〜! 本当に何で俺なんだよ…。


 「とりあえず、急ぐか…」


 かけてあったコートと財布、携帯を手に取り…玄関を取り出した。


 「あっ…念の為、これも持っておくか」


 木製のシューズラックの上に置いてあった、今度こそ飛び出した。

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