第36話:待機中に一仕事

クラーケンを討伐に来た海軍の最新鋭艦は海に消えつつある、まだ船尾がちょっと見えてるけどそのうち消えるだろう、無謀な攻撃を実行した提督は知らん。


で、俺達はこれからどうするかなんだが。




「 銛が刺さってるんだから、ほっとけばくたばる・・・・んじゃないっすかね? 」




「 ほっとけば良かろう 」




「 潮が満ちてきたら銛が抜けそうって聞いたけど? 」




「 抜けたら逃げられるだろ 」 不味いと思うんだよな被害出そうだし。




艦士の連絡員さんは消えていた、提督の救助に向かったと思われるが詳細は不明、俺達は放置中。


しかも、これからどうすれば良いのか判らない。




「 しばしお待ち下さい、確認して参ります 」




1人の神官が走り去っていった、海軍っぽい建物は見えないんだが走ってった方向に関連施設があるんだろう。




「 また待つのか 」 今日は何もしてない気がする。




「 待ちじゃな 」


「 観光してくるっす 」 グリーンはエージェントと共に街に消えた。


「 ノンビリするか 」




それしかないのか、チルとコイネを見るけどそこに答えはない。




「 俺達も連絡員が戻って来るまで、近場の露天でも覗いてくるか。 港から離れすぎたら不味いだろうし 」




「 そうしましょうマスター! お買い物です! 」


「 またタップリ魚を買っておくニャ! 」






チルとコイネを誘って露店巡りでもして時間を潰そう、そう思って港の人混みに向かって歩いていくと騒がしい一団がいた。


立ち入りを禁止している兵士と、通せ! 通さない! で、もめているようだ。




「 マスター、あれはティティスさんではないでしょうか? 」




「 どこに? 」




視力が上がってるはずなんだが俺にはまだ見えないんだが、あ、いた。


もめてたのはティティスさんとそのお仲間だった、兵士とケンカを始める前に止めないとな。


急いでティティスさん達のところに向かって声を掛ける、マスターの知り合いなら兵士も手荒な事はしないだろうっていう打算だな。




「 お久しぶりですティティスさん、 『 ここで何やってるんだい! 』 って? 」




いきなりそう言われてもな。




「 何って。 海軍からの依頼で、海の魔物の討伐に参加してるんだが 」




「 そんなこっちゃないよ! あたしの伝言を聞かなかったのかい! 魔物が出たんだよ! 」




それは知ってる、あそこで銛に刺さってる、まだイキは良さそうだから生でも食べられそうなヤツな。


振り返らずに親指だけで後の魔物を指さす。




「 あれだろ? さっきまで軍艦がこうげ 『 あれじゃないよ! 村に出たんだ! 』 マジ? 」




「 どうなってんだ? 魔物は2匹いたって事か? 」




側に居た兵士に聞いてみるが返事はない、顔色が真っ白になったからホントに知らなかったんだろう。


海軍のミスだな、それとも領主のミスか。




「 マスター村に向かいましょう。 何が出来るか判りませんが、少しでも被害を食い止めないと 」




チルの言うとおりだな、何が出来るか判らんが時間稼ぎくらいはしてみせるさ。




「 すぐに村に向かうぞ。 それから君、海軍に知らせに行ってくれるか 」




兵士の1人に海軍と領主への連絡をお願いしてから、チルとコイネを連れて村へと走り出す。


ティティスさん達のなかで足が速い者に案内をお願いした、ステータスは上がってるんだ走れば間に合うさ。






_________________________






「 あれが魔物です! 」




案内してくれた漁師が教えてくれてるらしいが、俺は地面に寝転んで休憩中。


ステータスは上がってるけどチルの半分だった、全力疾走のチルやコイネと同じスピードで走れるハズがなかった。




「 マスター大丈夫ですか? 」


「 荷馬車を引いてる時ニャもっと早いのに、普通に走ると遅いニャんて変わってるニャ~ 」




「 荷馬車を引いてる時は機力で強化してるからな、普通に走ったらチルやコイネの半分くらいのスピードだよ。 台車でも引っ張ってくれば良かった 」 疲れた、失敗した。




少し落ち着いたんで魔物を見る、沖に在る岩に挟まって動けないようだ。




「 こっちの魔物も動けないのか。 だったら、もう少しユックリ来るんだった 」




「 いえ! 潮が満ちてきてるから、もうすぐ岩から抜け出しますって! 」




案内してくれた漁村の若者に言われてもう一度魔物を観察、とがった岩の隙間に挟まってるから、潮が満ちてくれば浮力で抜け出す、のか?


早めに退治したほうが良さそうだ。




「 チル、波打ち際まで行ってから、魔物を 『 クラーケンだよ! 弱点は目と目の間さ! 』 だそうだ。 機力を多目に込めて撃ってみてくれ 」




ティティスさん達が追いついたらしい、弱点は眉間ね。


んでも、正確には眉間の後ろに在る内臓? 魔石? が弱点なんだろう、ここから見て魔物は斜めを向いて挟まってるからな。




「 チル、弱点は眉間の後ろに在る・・・・・・・・ みたいだから、そこを狙ってくれ 」




「 ・・・・・・魔物の左目、わたしから見て右側の目を狙う感じで良いでしょうか? 」




「 そうだな、それで様子をみてみようか 」 俺はまだ息が整わないし。




「 近づきすぎるなよ 」




「 はい、マスター! 」




ホルスターから拳銃を抜いたチルが波打ち際に走ってく、魔物までの距離は150mはあるから、触碗は届かないだろう。


しばらくすると、チルの持つ拳銃が光りだした。




パン パン パン パン パン パン




小さな青い光が魔物に向かっていく、チルの6連射は全弾命中して魔物に吸い込まれたんだが、効果は無いのか?




「 マスター、全部命中しましたが効果が在りません 」




走って戻ってきたチルが、拳銃の弾を交換しながら報告してくる。




「 弾かれてるのかな? 」




「 いえ、ちゃんと魔物を貫通してます 」




魔物の弱点の情報が間違っているのか、それとも魔物に対して弾が小さすぎて効いていないのか。




「 まだ機力はあるか? 」




「 はい、まだまだ残っています 」




「 じゃあ、6発に10MacP込めて12発撃ってみてくれるか。 弱点を中心にして、少しずつズラす感じで 」




「 やってみます! 」




波打ち際まで行ったチルがもう一度拳銃を構える、拳銃が光り始めるがさっきより光が強い。


お願いしたとおりに多目に機力を込めてくれてるらしいけ、ど拳銃全体が光ってるな。


あとで銃弾にだけ込めるやり方を教えておこう、その方が機力の節約になる。




パン パン パン パン パン パン




全弾命中したがクラーケンは健在、でも変化は在った。


チルの向かって身体を捻って足を伸ばし始めているし、魔物の左目は潰れて青緑色の液体も流れてる。


魔物はチルを脅威と見なしたんだろうけどな、チルの方を見るってのは悪い手だ。




パン パン パン パン




「 グォ~ ゲォ~ 」




急に叫び声を上げ暴れ始める魔物。


動きはだんだん弱くなっていって、10秒ほどでグッタリして動きを止めた。




「 やったのか? 」




しばらく待機するも、魔物に動きは無い。




パン パン




チルが弾倉に残った銃弾を売ったが魔物に動きは無いな。




「 マスター! やりました! 」




「 良くやったぞチル。 いい子だ 」 頭を撫でておこう。




「 凄いじゃないか! クラーケンを倒しちまったよ! 」




俺達から離れて待っていたティティスさん達がやってきて俺達を取り囲んだ、チルは獣人の子供たちにワシャワシャにされてるし。


これでソフトさきイカが食べられるんだが、陸まで運ぶのが大変そうだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る