第19話:チル VS お留守番


私はチル、エージェントチル。


目ざまし時計を見ると朝の6時、まだマスターが起きる時間じゃない。

マスターの額に肉球を乗せて確認するけど、まだゴーストは戻っていない。



ピピピピ   ピピピピ


目ざまし時計が鳴ると、マスターが目を覚ます。


「 おはようチル 」


マスターが起きた!

とても眠そう・・・・・・でもゴーストが戻ってる!?


良かった!

このままマスターが起きないんじゃないかと思って、心配してたけどこれで安心。


「 はいはい。 おはようチル。 もうやめてくれ 」


嬉しくて、ついマスターの顔を舐めすぎました。




私はチル、エージェントチル。


お仕事に行くマスターを見送ったら私は1人。

私は1人でこの家、マスターの家を守らなければならない。


「 責任重大デシ 」


”デシ” が付くのは、マスターのせいだと判かりました。


『 チルは良い子デシね~ 』

『 朝ご飯だよチル。 ちゃんと食べるんデシよ 』


マスターがいつも ”デシ” を付けて話掛けるので覚えてしまったみたい。

どうして ”デシ” なんでしょう?



「 家の中の確認デシ 」


『 今日は暑くなりそうだから、エアコン点けたまま・・・・・にしておくからね 』


エアコンを点けたままにしてくれたんで、涼しくてとても快適。




私はチル、エージェントチル。


「 キッチンからチェックするデシ 」


キッチン。

ここは、美味しそうな匂いが一杯しています。

火は点いていないから、火事は無さそうです。


「 キッチンは異常ないデシね 」


この家には大きな匂いが3つ在ります。

マスターの匂い、私の匂い、それと食べ物の匂い。

他にも色んな匂いがするけど、大きいのはその3つ。



てこてこ歩いて、リビングに移動。

テレビとソファーがあって、ここでマスターと一緒に映画を観る。


リビングに在る窓は、全部に鍵が掛かっています。

テレビも電源が切れているから、電気代も大丈夫。


「 ここも異常なしデシ 」



リビングには私のためのゲージもある。

中には私専用のベッドがあるから、確認しておきましょう。


 「 異常ないデシね 」


ベッドの中のタオルケットも異常なし。

タオルケットは定期的に洗濯してくれるんで、まだ洗剤の匂いが残ってる。

もう少し、私の匂いを付けておきましょう。 グリグリ。




私はチル、エージェントチル。


最後は寝室。

ここにはベッドがあって、マスターがお休みする所。

常夜灯も消えているし、鍵も掛かっています。


「 ここも異常ないデシね 」


お風呂とトイレも在るのですが、マスターがドアが閉めていきました。


「 マスターは甘いデシね。 エージェント契約でマスターから機力を貰ってるんデシから、ドアなんて簡単に開けられるデシ 」


後ろ脚で立ち上がってドアノブに手を伸ばす。


「 届かない~~~デシ 」



届けば開けられるんだけど届かない。

今は犬の姿でした。


「 落ち着くデシ 」


腕組みをして考える。



「 届かなければ、台を用意すれば良いデシ 」


振り返るとそこには---


「 大き過ぎデシ、巨人の世界デシね 」


目に付くものすべてが大きい。

マスターが使っていたお箸も、今の私が持ったら槍になりそう。

ドアを開けるために台を用意したいのですが。


「 動かせそうなのは---、クッションとヌイグルミ、後はごみ箱デシか 」


クッションとヌイグルミは、大きいけど軽いです。

動かせそうですけど、フワフワで台にはならないですね。


ゴミ箱を台にしましょう。



『 ギギ  ギギギ~~~ 』


失敗です。

ゴミ箱は金属でできてました。

こんな大きな音を立てたら、誰かに気付かれてしまいます。



「 他の見回りは完了デシ! 」




私はチル、エージェントチル。


これで朝の見回りは終了です。

夜の間はマスターを守って起きていたんで、私はこれから休憩です。

寝ている間は、犬のチルが起きててくれるから大丈夫。

ゴーストを2つ持ってる、エージェントならではの警備方法です。


ソファに移動して、ひょいっと飛び乗る。

ぽよぽよ不思議な寝心地でゆっくり眠れそう。

では、おやすみなさい。


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