第15話:メンテナンスフリー


ビックバードは、金貨54枚になった。

100gあたり198円以上するらしい、プラス羽根と魔石の値段だ。

薬草と毒消し草は銀貨の端数、金貨が54枚も在るから小銭だな。


「 さて、54枚の中から、借金返済と弾薬の補充で金貨14枚を頂く。 残りの40枚だけど、チルに金貨15枚、コイネに金貨25枚でどうかな 」


「 多過ぎるにゃ! 」


「 大丈夫だよ。 マスターには、ワイバーン(仮)の分が入るんだから 」


「 無駄使いしない様にな? 」


「 ・・・・・・にゃ 」 おい。


「 なぜ目を逸らす? 」 口笛吹いて誤魔化すな。




「 じ~~~ 」 チルがみ睨んでる。


「 無駄使いにゃんかしないにゃ! ただ、ちゃんとした魚を食べたいにゃって・・・・・・ 」


「 魚は高級品じゃないですか! 」


「 ちょっとだけにゃ! 」


「 ちょっとだけだ何て言って、 『 チル、良いんじゃないか 』 え? 」



猫が魚を食べたがるのって、日本の猫だけだって聞いてたけど。

こっちの猫もそうなんだ、猫獣人なのに。


「 チルが、肉を食べたくなるのと同じだよ。 犬獣人に肉、猫獣人に魚。 少しは良いだろ? 」


「 マスター・・・・・・少しだけだよ! 毎日はダメだからね? 」


「 判ってるにゃ! 感謝するにゃ、マスター! 」


「 無くなれば、また稼ぐけど。 無駄使いはするなよ 」


「 にゃ! 」



「 んじゃ、まだ夕飯には早いから、借金を返しに行こう。 その後夕飯だ 」


「 ビックバードのお肉、楽しみです 」


自分たちで食べる分として、10kgは確保してきた。

もっとも、殆どチルとコイネが食べるんだろうけど。


____________________________



「 ばあさん。 ツケを払いに来たよ 」


「 おや、早かったねぇ 」


「 利子は無しで良いんだよな? 」


「 ああ、金貨10枚で良いさね 」



ばあさんに、金貨10枚を渡してツケは無し。 でだ、


「 銃は、もう少し借りてていいのか? 」


「 私には、使えないからねぇ。 使ってくれて、構わないよ 」


「 助かるよ、ばあさん。 でだ、弾薬の補充と、銃のメンテナンスはどうすれば良いんだ 」


「 弾なら在るよ、どのくらい欲しいんだい 」



「 金貨4枚分 」


「 そんなには無いねぇ。 店に在るのは、拳銃用100発と、小銃用200発だね 」


「 じゃ、それ全部 」


「 毎度あり 」


全部で銀貨300枚、金貨3枚なんだと。 高いのか、安いのか判断出来ないんだが。

1発銀貨1枚なら、銀の弾を撃ってるようなもんか。 高いな。 



「 ばあさん。 銀で弾が作れないか? 」


「 工房に頼めば出来るさ。 でも、何に使うんだい? 」


「 お守り---だな 」


銀の弾丸は狼男や吸血鬼に効くらしいからな、 いざと言うときのために持っておいても損は無いだろう。

なにせ、ここはファンタジーの世界だ、何が出てきても不思議じゃ無い。


「 銃のメンテナンスは、工房に直接持っていきな。 ここじゃ、出来無いからねぇ 」


「 あいよ 」



「 マスター。 銃のメンテナンスは、どうすれば良いんですか? 」


「 クリーニングと、あとオイルも付けないと 」


「 おいおい。 何を言ってるんだい! 」


「 何だよ、ばあさん。 メンテナンスは必要だろ? 」


「 ちょっと、銃を分解してみな 」


銃を、ザックリ分解する。  




「 これを、見てごらん 」


「 魔法陣? 」


「 そうさね。 ここにはクリーンの魔法、ここは潤滑の魔法、ここには・・・ 」


あちこちに仕込まれた魔法陣、これなら。


「 メンテナンスフリーなのか? 」


「 この銃を造ったマスターはね、何とかして手入れが要らない銃を造ろうとしたんだよ。 たまに、水洗いは必要だ、って言ってたけどね 」


「 銃の製作者は、ばあさんの知り合いなのか? 」


「 まぁね。 魔石パウダーを使う様にしたのも、そのためさ。 なんでも、カスが無くなるって言ってたね 」


「 凄いなその人。 メンテナンスで苦労でもしたのかね 」


「 ああ。 そうみたいだねぇ 」


これなら長く使えそうだ。 

流石に、ライフリングが摩耗したら交換らしいけど。

これ欲しいな。



「 ばあさん。 ワイバーン(仮)の報酬が入ったら、この銃売ってくれないか? 」


「 ヒッヒッヒ。 最初から、そのつもりさね。 せいぜい、大事にしておくれよ 」


「 そうさせて貰う 」



それより、だ。


「 魔法と機械って、相性が良くないか? 」


「 何の事ですかマスター。 魔法と機械って、全く逆って感じがするんですけど? 」


「 あちらの世界の機械は、優秀だけどメンテナンスが必要なんだ。 オイルなんか、毎日入れないとダメな機械も在る 」


他の機械でも魔法を上手く使えば、色々出来るんじゃないかって思うんだが。


「 何か、面白くなってきたな 」 


チルとコイネとばあさんが変な目で見てるけどな、技術屋の血が騒ぐのだよ。

どっかで使ってみよう。



ばあさんが持ってきた弾を確認する。

弾は100発ずつ木箱に並べられている。 1発だけ残ってたクリップに、4発補充しておく。

これで、腰のポーチには100発だ。 残りはチルのバッグで、保管して貰う。


「 この弾は、何処でも手に入るもんじゃないからね。 気を付けな 」


「 あいよ 」



でだ、今気が付いたんだが、俺はバックも財布も持って無い。

水筒はチルのを借りてたし。

まとまったお金が入ったら、1セット揃えておくか。



____________________________



ばあさんの店を出て、コイネの宿を確保する。

神殿に一番近い所にしたかったのだが、高級すぎた。 1泊金貨5枚。

神殿に来る貴族様用なんだと。


んで、予算の範囲内の宿で、1番神殿に近い所を確保。


「 長期滞在割引とか、在りませんかね? 」


「 ええ。 御座いますよ 」


俺が確認したら、30日連続で泊まるなら半額で良いって。

大丈夫なのかこの宿。

ちなみに、コイネは魚料理の香りで我を忘れてて使い物にならなかった。


そのまま宿で夕食。

魚料理が美味しいと、評判の宿だった。

コイネは神殿が近いからとか安いからって言ってたけど、ちょっと怪しい。


「 ちゃんとした魚は、美味しいにゃ! 」  コイネは満足そうだ。


「 ビックバードも、美味しいですよ 」  チルは肉だ。



俺は両方を少しずつ頂く。 食べる量を2人に合わせてたら、肥満街道まっしぐらだ。


「 マスター、明日はどうするにゃ? 」


「 そうだな。 もう少し、銃の練習をしておきたいんだが 」


「 では、明日もお散歩ですね! 」



「 弾が予想以上に高かった。 練習だけだと、あっという間に金欠になるだろうな 」


「 そうでした。 1発で銀貨1枚ですから、無駄には出来ませんね 」


「 大物を狙っていかないとな。 チル、稼げる依頼って何が在る? 」


「 ゴブリンの村の殲滅ですかね? でも王都周辺は、国や冒険者がいつも見回ってますから、村が出来る事は無いでしょうし。 王都から離れればもしかしたら、って感じですね 」


「 ん~。 オークション待ちだから、王都からは離れられないな 」



「 ワイバーン(仮)みたいな大物は、そんにゃに居ないにゃ 」


居てたまるか、あれは運が良かったんだ。


魚料理は白身の魚を使ってた。

こちらでは、生魚の料理=ちゃんとした魚料理ってな感じ。

王都-海の間の、高速流通経路が無いのが原因らしい。

貴族用は魔法使いを雇って、凍らせながら運ぶんだと。 確かに贅沢だ。



「 あと、もう少し大きめの荷車が欲しいな。 そうすれば、もっと獲物を捕れるから、練習も出来るだろ 」


「 あれより大きい荷車は、荷馬車用になってしまいますよ? 」


「 荷馬車用か~。 筋力が上がってるから、動かせるとは思うけど。 馬車用ね~ 」


「 馬も借りれば良いにゃ 」


「 そうですよ、マスター。 そうすればもっと沢山運べます 」


今日はビックバードを2羽狩って終わり。 撃ったのはたったの2発だ。

王都に帰ってきたのも夕方前だったし、移動時間がもったいない。


「 馬は要らないな。 稼ぐのも目的だけど、身体能力の確認と、銃の練習も兼ねてるから 」


「 マスターの引く荷車は、凄かったです! 」


「 そうにゃ! コーナーで、こうグイーンて引っ張られにゃかった! 」


「 それそれ! 凄かったです。 振動も無くて、全然酔わなかったし! 」


慣性制御が出来ちゃったんだよな、慣性制御。 人が生身で踏み込んで良い領域なんだろうか。

まぁ、機力の練習としては良かったけど。

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