地球コントローラをてにいれたぞ!

ちびまるフォイ

もりもり機能のコントローラー

家の床を突き破ってコントローラが生えていた。


「なんだこれ? どこにつながっているんだ?」


コードの元をたどっても地面に吸い込まれている。

ゲーム機にはつながっていないコントローラ。


ためしにBボタンを押してみた。


『たいへんです! ゲリラ豪雨が突然やってきました!

 川に近い場所にいる人は避難してください!!』


今度は別のボタンを押してみると、外から稲光が一瞬きらめいた。

ゴロゴロゴロと、遅れて落雷の音が届く。


スティックをぐりぐり回すと朝になったり夜になったりする。


「これは……地球のコントローラなんだ!」


そのことに気づいたのはいくつもの天変地異を起こしながら操作に慣れた後だった。

コントローラの操作方法を頭に叩き込んでからは快適な日々。


「今日は洗濯物を乾かさないとなのに雨か。こんなときは……!」


地球コントローラを使って天気を変化させる。

この時期には珍しい晴天を作り上げる。


ある日の朝。学校にどうしても行きたくないときも地球コントローラの出番。


「あ゛~~……学校行きたくない。台風呼ぶか……」


地球コントローラを操作して台風を接近させる。

たちまち学級閉鎖となり、その日1日は合法的に遊んで過ごせる。


「地球コントローラ最高ーー!!」


地球からゲーム機のコントローラに持ち替えて遊びまくった。



俺の地球コントローラを何度も使うことで天気予報は意味をなさなくなり、

お天気予報士が「そのときどきで判断して」とさじを投げたころ。


全世界向けに緊急ニュースが伝えられた。


『地球に住むみなさん、大事な話があります。

 実は突如起きている異常気象の影響で地球が縮小していっています!』


世界環境の代表者がいうには地球で異常なタイミングで雨や雪や台風が起きた結果、

地球の持っている力が失われてどんどん地球が縮小していってるとのこと。


『これ以上地球が小さくなってしまったら、最終的には爆発してしまいます!』


「ば、ばくはつ!?」


スマホにも送信されていたニュースを見て言葉を失った。

原因はほかでもない地球コントローラのせいだろう。


「ど、どうしよう……俺がむりやり地球エネルギーを使ったから……」


まだ寝たいなと思ったときは地球の自転速度をゆっくりにして夜を長くしたり、

海を貸し切りにしたくて津波を起こして海水浴場から人を逃したり。


そういったひとつひとつの天変地異で地球の持つエネルギーを使っていたなんて。


「地球が縮小してなくなっちゃったら元も子もないぞ!」


なんとか地球の縮小を止める操作はないものか。

地球コントローラを傾けたり、同時押ししたり、隠しコマンドを入力しても効果なかった。

それを試したことでますます地球エネルギーが消耗されて縮小される。


「ああもうどうすればいいんだ!!」


自分が試したことのないコマンドを探しているときだった。

ふと、目に入った商品ページにはボタンがたくさんついているコントローラがあった。


『ゲーミングコントローラpro

 どんなに複雑な操作もワンボタン!』


見た瞬間に「これだ」と思った。

ゲーム用のすごいコントローラが家に届くと電話がかかってきた。


『お買い上げありがとうございます!

 ゲーミングコントローラproの案内をつとめさせていただきます!』


「既存のコントローラから差し替えたいんですけど」


『お安い御用です! 前のコントローラの線をぶっこぬいて、

 新しいゲーミングコントローラにさし直してください』


「本当に大丈夫なんですか!?」


『うちの製品はあらゆるものと互換性がありますから』


地球コントローラの線をちぎってつなぎ直した。


「つながれ……つながってくれ……!!」


ぶぅん、と電子音がなるとゲーミングコントローラにホログラムで操作方法ウィンドウが開かれた。


「つながった! やったぞ!」


『おめでとうございます! このコントローラーは複雑な操作ができるだけでなく、

 ボタンにはそれぞれーー』


もう話なんか聞く必要なかった。


前面に、側面に、背面にもあるボタンそれぞれがどんな役割があるのかが見てわかる。

ボタンの割当ての中には自分の知らなかった操作もある。


その中のひとつに「膨張」はあった。

地球縮小の上のボタンだった。


「これ以上、縮小させてたまるか!」


ボタンを複数回連打した。

しかしあまり変化は感じられなかった。


「……あれ? 本当に地球の縮小止まっているのか?」


心配になったのでもう何度か連打した。

いくらか地球を膨張させても、それよりも早いスピードで縮小されてはたまらない。


反応はない。


「あの! さっきから膨張ボタンを押しているのに全く反応ないんですけど!

 このコントローラ壊れてるんじゃないですか!?」


『めっそうもない! ホログラム解説書が表示された時点で、ちゃんと操作できるはずです』


「でもいくら押してもまるで反応がないじゃないか!」


『それはおかしいですね……』


コントローラの操作案内人は少し悩んだ後「そうだ」と思い出して答えた。




『お客様、このコントローラーは自動連射機能が入っています。

 1ボタン押すだけで100回押したことになります。

 それだけに、処理が追いつかなくて押した反応が遅れる場合があるんですよ』



次の瞬間、地球は大膨張をはじめた。

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