第3話  後編

私はお姉様に頂いたレースの生地で手袋をたくさん作った。お姉様にも差し上げたら断られちゃった。


「私の手は百合みたいに醜くないから、いらないわ!」


お姉様の手はとても綺麗だ。私は‥‥傷は治ったけれど、手袋はしている。皇太子様がとっていいとおっしゃるまでは。




今日は楽器の演奏会で、私はお姉様の代わりにお琴を奏でた。たくさんの賞賛はお姉様のものになる。また、天皇様からご褒美がお姉様にだされた。とても、光栄なことだと思った。お姉様は上機嫌で私に笑いかける。


「百合!お前がいるから、とても助かっているわ。これからも勉学に楽器に励みなさいよ」


「はい、わかりました」


私のお姉様は優しいと思う。私は、これからもお姉様を支えていこうと決心したの。





今日は皇室の方々の皆様が揃う歌あわせの日だ。私は、いつものように準備万端、整えていた。広間に着くと皇太子様がいらっしゃったのでご挨拶すると、お茶を差し出されてその後の記憶がない。歌あわせは、とっくに終わったようで私は激しく罵られた。


「どこに行っていたのよ?お前のせいで赤っ恥をたくさんかいたわ!その手じゃぁ、どこにも嫁ぎ先がないと思ったから、特別に専属侍女にしてやったのに!この役立たず!」


「ほぉ?百合は役立たずだと言うなら私がもらい受ける。百合は私の専属にする」


お姉様の悪態を聞いていた皇太子様が嬉しそうに私の頬に撫でた。


「なにをお戯れを!この百合は私の妹です。おまけにキズモノなのですよ」


「百合、手袋を取ってもいいよ」


皇太子様の言葉に私は手袋をとった。


「えぇ?ない?そんなばかな!あの傷が消えるわけはない。私が焼きごてで間違いなく焼いたのに‥‥」


「焼きごて?お前がやったんだな?」


「っ‥‥」


「お前は、人間の皮を被った悪魔だな。そんなお前でも、文句を言うことだけは許してやろう!」


お姉様は可愛らしい黄色のカナリアになった。私は、私の手を焼きごてで焼いたのがお姉様だなんて信じられなかった。途方に暮れて泣いていると皇太子様が笑いながらおっしゃった。



「心配して泣かなくてもいいよ。桔梗が反省して悔いると自然に魔法が解けるようにしておいた。その罪がえん罪なら明日にでも解けるだろう」


皇太子様がおっしゃったが、もうあれから5年になる。お姉様はカナリアのままだ。今日も私の幼い息子に向かって美しい声でさえずっている。


「まぁーなにをおっしゃっているのかしら?今日も素敵な声ね」


私は息子に向けてそう言うと息子はカナリアに向かって『ぴよちゃん』と呼びかけた。


「ははは。ぴよちゃんの話す言葉はわからない方がいいだろうな。どうせ、ろくな事は言っていない」


天皇様になった皇太子様は、笑いながら私と息子を抱きしめた。一層、激しく美しい声でさえずるカナリアに息子は言った。


「ぴよちゃん、今日はすごくご機嫌だね!」






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美し過ぎる妹がただ憎かった(姉の末路) 青空一夏@書籍発売中 @sachimaru

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