幼馴染を超えたい2人

峰ユエ

幼馴染を超えたい2人

「マー君!早くしないと遅刻しちゃうよ!」



学校に遅刻そうな俺。そんな俺を急かしてくる楓。


「分かってるって!

ちょっとだけ待ってくれ。

よし、準備できた!行くぞ。」



「「行くぞ!」って。

私が待ってあげてたのにぃー!むぅぅぅ。」


ほっぺたを膨らませて、俺の背中をポカポカと叩いてくる楓。

まったく痛くないんだけどね!



「私を待たせた罰として、手、繋いで私を学校までエスコートしてください!

紳士のマー君ならできるよね??」




急にそんなことを言ってくる楓。



「バ、バカ!か、からかうんじゃねぇ」



そんなことを言われて動揺しないわけがない。なんせ小1からの片思いなのだから。

いつかこの想いは実ってくれるのだろうか?



「あはっ、照れてるー。

まぁいいや!

手を繋いでもらうのはまた今度にしよっと。

早く行こっ、マー君!」



ニヤッといたずらな笑みを浮かべる楓。

まったく。ドキッとするじゃないか。

朝から心臓が持たないゾ!






俺には幼馴染がいる。美しい銀髪にくりっとした綺麗な目、整った顔立ちにモデル顔負けのスタイル。以上の要素を持った完璧美少女である。

そんな幼馴染がいて、家がお隣同士という、思わず「アニメか!」とツッコミたくなるような状況に置かれている。

そして、その幼馴染・・・山本楓やまもとかえでは俺の初恋の人だ。




俺、橋本正人はしもとまさとと楓が、小学校1年生のとき。

俺と楓は同じクラスになった。入学式が終わり、クラスで自己紹介と名刺交換が始まった。


当時の俺は今と違って、人とのコミュニケーションが恐ろしく下手だった。いわゆるコミュ障というやつだ。それこそ、楓と以外は目を合わせるだけで緊張してしまうほどだった。そのため、上手く名刺交換ができなかった。


周りの生徒たちがどんどん交換して座っていく。なかなか交換できずにうつむいていると、


「正人君!交換しよ!」



唯一喋ることができる相手、楓が声をかけてくれたのだ。その時の笑顔は、太陽かと見間違うほど明るく、当時の俺にはとても眩しいものだった。

この時から俺は楓を異性として意識するようになった。それまでは「可愛いな」くらいにしか思っていなかったが、その時からは喋るたびにドキドキしてしまう。

そして、楓としか話せなかった学校で、友達ができるようになった。曇っていた俺の心は、太陽のような楓の笑顔で少しづつ晴れていったのだ。

その時から俺はをしている




そして今に至る。



現在高校1年生の俺たちは、高校生になった今も同じ学校に通っている。



そして何故かわからないが、最近楓の距離が近い気がするのだ。意識しすぎなだけかもしれないが…

そしたら俺はただの勘違い野郎だ。

だから楓の距離がいくら近くても、何も言えないのだ。



やはり俺はそろそろ必要があるみたいだ。




「何ボーッとしてるの、マー君?

急がないと間に合わないよ?」



そんなことを考えていると、楓が声をかけてきた。そうだった。遅刻しそうなんだった!

結構、ていうかかなりやばいゾ!

俺たちは学校に向けて走り出した。






「私を待たせた罰として、手、繋いで私を学校までエスコートしてください!

紳士のマー君ならできるよね??」






はからかうように言った。

心臓は滝の水が滝壺に落下するかのようにドクドク言ってたにもかかわらず、それを表に出さないで言った。





には幼馴染がいる。橋本正人という男の子だ。私は彼をマー君と呼んでいる。

マー君とは家も隣で、昔から結構仲良くしていた。当時はかなりの人見知りで、それこそ私としか会話できなかったくらいだ。

小さい頃は仲の良い隣の家の男の子くらいにしか思っていなかった。

私が彼をマー君とよぶようになったきっかけのあの事件が起きるまでは…





私とマー君が小学校三年生の頃。

私とマー君は一年生以来の同じクラスだった。

一学期が終わって二学期が始まって2ヶ月が経った11月の話。

クラスでは半年が経過して、友達もたくさんできた。

この頃にはクラス全体が仲良くなっていた。

そんなある日、クラスの男の子の、リーダー格というほどでもないが、みんなの中心のような存在の男の子がこう言った。



「山本ブスブース!」



本当に急な事で頭が混乱した。

彼に悪いことをしたつもりはないし、そんなことを言われる心当たりがなかった。

今になって考えれば、彼は私のことを好きだったのだろう。

よく考えれば、それを言われる前から小さなちょっかいをかけられていた。


しかし、まだ三年生にの私はそんな事はわからないので、ただただ落ち込んだ。

周りの生徒の私を見る目が変わったわけでもない。友達の女の子に何かを言われたわけでもない。

ただその男の子にその一言を言われたなのに。

その時の私にとっては「だけ」ではなかったのだろう。

次の日から学校に行くのが少し嫌になった。鏡をのぞいて自分の顔を見た。



次の日。同じようにその男の子はちょっかいをかけてきた。

「ブース」と10回くらい言われた。

からかわれていると、理解していないから、それだけで私の心は傷ついた。

次の日。その男の子が近づいてきて、また同じようにからかわれるのかと思ったその時。



「山本さんが困っているのを見て楽しいの?

なんでそんなことするの?

山本さんが悲しい気分になっているのがわからないの?」



そう早口でまくしたてたのは、例の幼馴染の

正人君だった。

人と喋ることが苦手な正人君がこんなに大きい声を出すなんて…

その時の私はとても嬉しかった。

心が救われたような気がした。



「チッ。うぜえやろーめ」



その男の子はそれ以降何も言わなくなった。周りの視線も痛かったのだろう。

正人君が言った後、みんなも共感するように頷いていた。

男の子の中心的存在だったから、あまり言えなかったのだろう。

みんなは私のことを考えてくれていたのだ。



「や、やまもとさん大丈夫?」



正人君が声をかけてくれた。

胸があったかくなった。まるで抱きしめられているかのように。

「ドクン」と胸が高鳴った。



「う、う、うん」




彼に恋をした瞬間だ。

その時から私はをしている。



私はそろそろ決断を下したいと思っている。






は悩んでいる。

長い間片想いをしてきた。

俺は、近々告白することを決めた。

を。



しかし問題がある。どうやって告白したら成功するだろうか。なんせ長年の片想いだ。

ここで失敗したら俺はこの先生きていけないかもしれない。

頭の中でたくさんの言葉がグルグル回ってうまくまとまらない。どうしたものか…







は悩んでいる。

ずっと片想いをしてきた。

私は告白を決めた。

ことを。


しかし問題がある。どんな言葉で彼に告白したらいいのだろうか。

ずっとこの想いを抱き続けてきた。

失敗は許せない。どうしようか…






「楓。今日の放課後、話がある。

屋上に来てもらえないか?」



「ちょうど私もマー君に話があるの。」



「わかった。じゃあ放課後な」





は楓を呼び出した。

告白をするために。

結局考えても浮かばなかったので、正直に堂々と正面から告白することにした。

場所も屋上と、無難なスポットにした。


ちょうど楓も話があったみたいだ。

なんだろう?

まぁいいや。告白に集中しよう。


今俺の心臓はジェットコースターに乗る前よりもドキドキしている。





はマー君を呼び出した。

告白をするために。

ちょうどマー君も話があったみたい。

とても緊張する。


私の心臓は小さい頃に初めて観覧車に乗ったあの時よりドキドキしている。





放課後と楓は屋上にやって来た。

どちらから話を切り出すかタイミングが難しい。



「「あ、あの」」




綺麗にハモった…



「あ、先いいよ。」




楓がそう言った。



「わかった。

楓、俺はお前のことがずっと…」




ダメだ言えねぇ!やっぱり無理だ。

俺は変わったと言ってもやっぱり意気地なしだ。情けない。

ふとこんな考えが頭に浮かんだ。

幼馴染をだんだん越えればいつかは恋人になれるのでは?と。

「今じゃなくてもいいのか!」

自分が告白をやめる言い訳を頭の中で考えた俺は、口を止めた。




「楓!やっぱり何もない!大丈夫だったわ。

楓の話聞くぞ。」




あーもう俺の意気地なし。

まぁいいか。いつか告ればいいや。

そう思い楓に譲る俺。




「うん。わかった。」




そう言って覚悟を決めた

結局マー君の話は何だったんだろう。

「お前のことがずっと…」

って言ったような気がしたけど…

まさかその続きは「好き」じゃないよね?

もぉ。自惚れるな私!今は告白の時だ。




「あのね、マー君。私はマー君の方がずっと…」




ダメ!やっぱり言えない!

振られたらと思うと、言えない。

私の意気地なし〜!

でも、幼馴染を少しづつ超えていけばいいんだ!そしたらいつかは恋人になれる!




「やっぱり大丈夫!何もなかった。」




「楓も何もないのか。じゃあ、もう帰ろっか。楓、一緒に帰らない?」




「うん、いいよ!」




2人は未だ想いを伝えられない。

それでも少しづつ幼馴染を2人で超えていく。

2人が恋人になる日を夢見て。

2人の両片想いは続いて行く…













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