第26話 ブルースの過去

ブルースは目を閉じて、少しだけ眠りことにした。

キリュウの運転は安定していいてブレーキワークもアクセルワーク、ギアチェンジも完璧という感じだった。


ロビンの運転よりも安心できることミレーヌに道案内は任せて目を閉じた。


ブルースは今日の学会での発表や仕事のこともあったが、

あの青髪の少女のことが気になっていた。

あまりにもあの人にそっくりすぎたからだーーー


「ブルース様こちらですよ」


そう自分を呼び声が聞こえて、目を開けた。

そこには行きつけの夜景の綺麗なニューアムステルダムのシンボルでもあるアドバイスビルの中にあるホテルのプライベートバーだった。


「ごめん。アリス...ちょっと考え事をしててな。どうだい、気に入ってくれたかな?」


アドバイスビル・ホテルのオープン前にブルースはコネクションを使って、このホテルとバーを貸切で借りていた。


最愛の恋人アリスと過ごすために...


「すごーい。綺麗...」


アリスはそうどこか嬉しそうにはしゃぎながら、窓の外に見える煌びやかに光るニューアムステルの街並みを見ていた。


「アリス。聞いて欲しい...

俺は着飾った言葉をつけることはできない。


正直な言葉でしか表せないーーー

俺と結婚してくれないか?


俺はアリスのことを愛してる。

ずっとそばにいたいし、そばにいて欲しい....」


アリスは振りかって、満遍の眩しい笑みを浮かべて頷いて答えてくれた。


「うん。もちろんです。ブルース様」


彼女の笑みは全てを癒してくれる。

ブルースはそれを聞いてホッとすると同時に自分が彼女とは違っていかに汚れているかも感じられたーーー


ニューアムステルを守るために法を犯して、自らが手を下したわけでははなかったが暴力と力を誇示して....

アムステル騎士団という名のマフィアの若頭として決して綺麗な道を歩んできた訳ではなかったからだ。


彼女にもその秘密は伝えている、それでも受け入れてくれた彼女の心の広さにブルースは心を打たれていた。


ーー殺人や暴力、人を貶めるのじゃ決して許される訳じゃない。でも、その汚れ仕事を代々やってきたのはこの街を守るためーー


そんなブルースをアリスは理解してくれらのだった、でも約束事をしてきた。


「でも、どんな悪人でも殺しはしないでください。

みんな帰る場所や家族がいるはずなんだから。だから約束してください」


ブルースはそれを承諾して彼女と約束を立てたーーー


アリスの指に指輪をはめてブルースは

彼女の血で汚れた手がゆっくりと滑り落ちていくのが目に入った。


手に握っていたナイフを地面に投げ捨てて、

悲しさと虚しさからため息をついた。


横たわる目に輝きがない血まみれのアリスの亡骸にある薬指のつけている指を眺めながらこう呟いたーーー


「どんなに憎くても、俺はもう人を殺さないと誓った。

そのはずなのに...毎回この夢を見て煮えたぎるような恨みと怒りをあいつにぶつけたくなる」


ブルースは血まみれのアリスを抱き抱えてとある男を睨みつけていた。


彼はブルースのコスチュームとは対照的な明るい色のマントをつけて専用のスーツを着て顔を隠さないで誰もから英雄と称えられる人物だーーー

正義の使者、光の戦士とでも言われて脚光を浴びていたーーーー


キリシマによく似た男だ。

彼もまた異世界からやってきた人物なんだろうそう今になって思える。


「お前自身が引き起こした結果だ」


ーー俺は無力だった....

アリスを救えなかった、自分自身の手で殺めてしまったことを心の底から....


でも、お前がいなかったらーー


眠るように目を閉じるアリスを抱きしめることしかできなった。


表情を変えずに冷たい表情をしたまま、光の戦士はこう言ったーーー


「これは仕方はないことだ。全ては世界を救うため...」


「じゃあ...なんでアリスなんだよ。なんで、お前がこんなことをさせたんだ!!!」


目の前にいる男はこの世界を数々の危機から救ってきたことで英雄だと言われていたが....

その男がアリスを.....


ブルースはそう怒鳴ると自分が夢の中にいることが気がつき、ハッと目を覚ました。


車窓から見える景色を見て、

キリュウがきちんと目的地のところへ運んでくれたことを確認できた。


「大丈夫...ブルース?顔色がよくなさげだけど?」


そう、ミレーヌが覗き込むように顔を見てきたのでニコッと笑みを浮かべてこう言った。


「大丈夫だ。ちょっと昔の嫌なことを思い出しただけだ....

キリュウは待っていてくれ」


ブルースはそう言ってポケットから財布を取り出して、キリュウに札を渡してこう伝えた。

適当に財布から取り出したのでいくらかはわからなかったが、多分昼食ぐらいなら普通に食えるだろうと感じられた。


「昼食はこれで近くのダイナーで済ましておいてくれ。3時間後に戻るからよろしくな」


「はい。ありがとうございます」


キリュウが受け取ったのを見てブルースは車を降りた。


帝国商会との食事会は気兼ねなく話が進んだ、ブルース自体はあまり乗る気ではなかったが、ミレーヌから出された条件の一つでもあったからだーーー


「では、我々はこれで。良い話を帝国へ持ち帰れてよかったです」


帝国商会の担当者はそうニコッとブルースに笑みを見せて食事をしていた個室を後にして行った。


ブルースはテーブルに残っていたコーヒーを手に取って隣の席に座っていたミレーヌにこう言った。


「デザートぐらい、付き合ってくれないか?急に昔のことを思い出してそれを話したくなった」


ミレーヌはそれを聞くとウェイターを呼んで、デザートとコーヒーを注文してさっきまで商談相手が座っていた椅子に座った。


「ええ、いいわよ。ブルースの奢りね」


「構わないさ」


ミレーヌははそういうと頬杖をこう聞いた。


「で、どうかしたの?」


「昔のことを思い出してな。ミレーヌとちょうど出会う前の話....殺人罪で起訴されて収監された理由のやつさ」


ミレーヌはそれを聞いて、ウィンクをしてブルースの手を握った。


「奴と彼女を思い出すんだーーー」


ミレーヌはその言葉を聞いて、無言で頷いた。


ミレーヌは事情を知っている数少ない人の一人だ。ブルースは持ってこられたコーヒーを手にとって語り始めた。


「アリスはなんでそうなんだろうかって感じる、俺があの時彼女を止めておけばよかったと後悔してる。

でも俺は、あいつを...許せない。

あいつがいなければアリスは...」


ミレーヌはそれを聞いてブルースの剥き出しになりそうな感情を抑えるようにこう言った。


「あなた自身が後悔は時間がもったいないって言ったこと忘れた?」


ミレーヌのその言葉を聞いて、ブルースは軽く鼻で笑ってこう言った。


「それもそうだな。自分の言った言葉が跳ね返ってくるとはな....


よし。じゃあ、戻ろうか俺には後悔してる時間はないし動かないといけないしな」


ブルースはそういうとコーヒーを飲み干して席を立ってこう言った。


「後悔はしない。だが、どんなに英雄と称えられようが俺はあいつを許せないただそれだけだ」


ミレーヌもそれを聞いて、頷いてこう言ったこと


「ブルースには動いてもらわないといけないの。この世界のためにも」


ブルースはそれを聞くなり席を立った。


車に戻るとそこでは、キリュウとアキラが雑談をしているのが目に入った。

アキラはさっきまでは制服だったが私服のスーツに着替えているようで首からは警察バッジをぶら下げているのが目に入った。


「やあ、ジンボウ警部補。ごきげんよう」


そう声をかけると、キリュウに彼はじゃあなと声をかけてブルースの方へ近寄ってこう言った。


「家族が世話になってるのは感謝してる。だけどお前を絶対に捕まえてやるからな」


ブルースはそれを聞いてこう答えた。


「お待ちしてるよ」


それを聞いたアキラはため息をついた後、キリュウに手を振って近くに停めてあったパトカーに乗って、何か慌ただしそうに無線でやりとりをするのが目に入った。

そしてサイレンを鳴らしてどこかへ走り去っていった。


それを見送る頃にミレーヌが建物から出てきたのでブルースは車に乗り込みキリュウにこう伝えた。


「じゃあ、次は大学に向かってほしい。道案内はミレーヌがよろしくな」


するとその時だった、車に積んでいた通信機からロビンの声が聞こえてきた。


『大変だよ、ブルース!バーニンが3ブロック先の銀行に出たそうだよ!!』


それを聞いた、ミレーヌとキリュウは表情を変えたーー

そして、ミレーヌがこう言った。


「緊急だけどお仕事頼めるかしら?」


「問題ない。5分で片付ける。キリュウも手伝ってくれよ」


ブルースはそう即答して車の中に置いていたカバンを取り出してその中に入ってる特別なスーツを手に取った。

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異世界で学ぶ紳士の処世術 アーサー・リュウ @ArthurRyu

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