第21話 おやすみ、おやすみ

キリュウが運転する車は他の車とは段違いのスピードで追いかけてくるパトカーを大きく引き離して、

ブルースのマンションへと戻ってきていた。


秘密の洞窟に向かうための秘密の通路を抜けて車を停めたキリュウはホッと息をついて顔を隠していたマスクを取った。


一人の白衣に身を包んだ金髪のボサボサした髪で眼鏡を掛けるキリュウよりも少しだけ年上そうないかにも理系の大学生のような男性が車に近づいてきた。


「ナイスドライブだよ!キリュウ君」


その声を聞いて彼がさっきまで、遠隔で色々と手助けをしてくれたロビンであることがわかった。


キリュウは車から降りると握手を求めてきたロビンの手を握った。


「はじめまして、キリュウ・タチバナです。ロビンさんですよね?ナビゲーションありがとうございました」


ロビンはそれを聞いて、嬉しそうな顔をしながらこう言った。


「そんなことないさ。それにしてもすごい運転テクニックだっだよ〜。この車本当に運転が難しくて...


一回だけ姉さ...ミレーヌが運転した時は大破しちゃったしね」


ミレーヌは本当に車の運転はダメなようで...

それを再度認識させてくれる事を聞いて思わずキリュウは緊張も解けて笑ってしまった。


しかし、ロビンがミレーヌを姉さんと言いかけたことに引っかかった。


「もしかして、ミレーヌさんの弟さんですか?」


ロビンはそれを聞いて、握手した手を離して頷いてこう言った。


「ああ、そうさ。姉さんが世話になってます」


ロビンはそう言って助手席に座る青髪の少女の方へ目を向けた。


キリュウそこで、

ブルースとミレーヌの関係がどことなくわかったような気がした。

でもまだ、ミレーヌが一体何者なのかは検討がつかなかった....


ロビンはキリュウがそんな事を考えることも知らずにきっと、連れてきた青髪の少女の方が気になっているようだった。


「どうやら、まだ意識ははっきりしてないようだね...キリュウ君、彼女を部屋の運んでくれないかい?

一緒について行くからさ」


「え、はい」


キリュウはそう答えて、

車から降りて青髪の少女を助手席から下ろすことにした、彼女は意識自体はあるようでキリュウの力を借りてゆっくりと車から出てきて自分の足で立ち上がった。


よろめいたのを見てキリュウはそっと腕で背中を支えた。


「ごめんなさい....」


彼女はそう小さな声で答えた。そして、彼女はキリュウの腕に捕まるような形で進んでいった。


彼女の体温を感じられたが、彼女は冷たく小刻みに震えている事に気がついた。

キリュウはそれを感じ取ってロビンにこう言った。


「彼女に何か羽織るものを渡してくれませんか?」


それを聞いたロビンは近くにあった、ブランケットのようなものを少女に羽織らせた。


「あまり良くない状態かもしれないね....アデルに見てもらわないとね。

でも、彼女今の時間起きてるかな...」


ロビンはそう言って眉を顰めて首を傾げた。

とりあえずキリュウは歩き始めることにして、ゆっくりと彼女がついて来れるように考えながら歩みを進めた。


秘密の部屋からマンションに戻った一行は、

ロビンが案内したのはキリュウが寝ていた部屋とは違い2階だった。


部屋の中の内装はキリュウの部屋と同じ感じにはなっていたが、部屋の中からはほんのり甘い香りとお酒の匂いが充満しているのに気がついた。

暗い部屋の奥から、黒いローブのような服を着てとんがり帽子を被ったいかにも魔女と言ったような20代後半ぐらいのグラマスな女性が眠そうな顔をしながら出迎えてくれた。


「あら、ロビンちゃんじゃないのぁ?あ、そっちの君はキリュウ君かよろしくね...」


きっとさっきまで寝てたのだろう、大きなあくびをして彼女は青髪の少女を見てこう言った。


「なぁーに。この子すごく調子悪そうじゃないの?」


「夜分悪いけどちょっとこの彼女を見てくれない?」


ロビンがそういうと、魔女は伸びをしてからゆっくりとキリュウの方へ近づいて....


キリュウの胸と腕を触っていやらしく揉みながらこう言った。

女性から触れられたということでキリュウは思わずドキッとして心臓の鼓動が聞こえるかのようなぐらいの胸がドキドキしたことに気がついた。


「へぇーなにぃー

こんなイケメンなのにウブなんだぁ〜


結構いい身体知れるじゃぁん...今度、お姉さんのところにおいでよ。とってもいいことしてあげるからさぁ」


そう吐息がかかる距離で囁かれたが、キリュウのさっきまでのドキッとした感覚は彼女の酒臭さで一気に吹き飛んだ。


「もぉーアデル。ダメだですよ...姉さんが怒りますから」


それを聞いた酒臭い魔女アデルは残念そうに大きくため息をついてこう言った。


「もぉー冗談よ。

ミレーヌには逆らえないから無理よ....」


キリュウはそれを見てどこかホッとして苦笑いをした。

アデルは青髪の少女を抱き抱えるように支えながらキリュウから離した。


そして、手首を見たり手で触り目を覗き込むように見てこう言った。


「とりあえず、1週間は安静にしてあげないとキツイかもね。私で預かるわ」


さっきとは真剣な違う目つきと声でアデルは言って彼女を連れて暗い部屋の中に入って行った。


「あ、扉閉めておいてね!あと鍵閉めといて!」


そういうアデルの声が聞こえてロビンは安心した様子で扉をして鍵をかけた。


そしてアデルの簡単な紹介をしてくれた。


「彼女はこのマンションに住んでる住人で君と同じく異世界からきた魔女だよ。

薬学と医術と魔法については詳しくてさぁー

良く僕たちの仕事とこの活動のお手伝いをしてくれてるんだよ」


ロビンはそういうと、

キリュウに別の部屋の鍵らしきものを手渡してこう言った。


「という事で今日はお疲れ様。

これが君が住む部屋の鍵だよ。

さっきまで使ってた部屋は使ってくれていいからね。


目覚めて早々で大変だっただろうから、もう休んでいいよ。

色々なことは明日おいおい僕や姉さんにブルースが説明すると思うよ」


「え、でもブルースさんは...」


「ブルースなら大丈夫だよ。後でちゃんと戻ってくるからさ。

確か明日も昼から学会があるとかで街に行く用事はあるから絶対帰ってくるよ。


姉さんが秘書として戻ってきたこともあるしきっと問題ないさ」


「どうしてそう言えるんですか?」


キリュウはふとそう思い聞いてみた。

明らかに大変なことだって事はわかっていたからだ...

どうやって追ってを巻いてくるかはさておきだが、どこか安心しきってるロビンを見て心配ならないのか気になっていた。


ロビンはウィンクをしてこう言った。


「僕はブルースに事を信じてるかさ。彼は今までも今日みたいな事は多くあったし、キリュウ君と同じで心配だなと思うこともあったんだよ。


でも、ブルースなら心配ないよ。

安心できるんだ、僕を救ってくれた心強い僕のヒーローでもあるからね」


どこかブルースを語るロビンからはどこか誇らしげな雰囲気を感じられた。

きっと本当に彼のことを信頼できているんだろうなと感じられた。


「ブルースには僕の最高傑作のガジェットを使いこなすんだ。

どんな敵が来ようと負けっこないさ」


「そうなんですね。ブルースさんこと本当に信頼してるのがわかりました!」


キリュウはそう答えるとロビンはどこか照れ臭そうにしてこう言った。


「そうだね」


どこか、

そんな彼を見てキリュウは羨ましく感じた。

それは、きっと今は会えない父や兄が自分にとってのヒーローだったからだ....


身近にいることがどこか羨ましく感じられたのだった。




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