第15話 襲いかかる炎

キリュウただ必死にバルコニーを伝って上の階へ上の階へと登っていていった。


そして目的地の5階に到着すると倒れているオレンジ色髪の少女の身体を揺すって意識を確認した。


「ハルカ!大丈夫?」


そう声をかけると、ぼんやりとしている彼女からかすかにこう答えた。


「隣の部屋に...がいるの」


何がいるかの部分は聞き取れなかったが、下から聞こえてきた叫び声で判断がついた。


フィオと同い年ぐらいの女性が泣き叫ぶような声を出しながらこう言ってきた。


「私の赤ちゃんがまだ家にいるの!!!誰か助けて!!!」


キリュウはそれを聞いて、ハルカにこう言った。


「低い姿勢で、布で口を覆ってここで待ってて...俺が行ってくるから」


ハルカはうんと小さく頷いた。

キリュウは上着をハルカに渡して自分は、姿勢を低くしてポケットからハンカチを出して口に当てた。


しゃがむぐらい姿勢を低くすれば、その場には煙がなく、綺麗に部屋の中が見ることができた。


赤ちゃんの鳴き声が壁の向こうから聞こえていてくるのを感じることができた。


一度、部屋を出て共用部の廊下に出た、そこでは煙は天井を張っていて、立ち上がっても問題がない感じであった。

ただ、至る所で何かしらのものに燃え移った炎が目に入った。


かなりの高温であるのは感じられた。

ジリジリと焼けつくような暑さだとわかった瞬間に服で隠れていない部分が熱さで露出しているのがのがきついように感じられた。


キリュウは咄嗟に露出の多い顔を守るように腕で口もとを隠して、声の聞こえる方へ足を進めていった。


その時だった、火だるまになって何か大声で叫んでいる男が目に入った。

その声は、赤ん坊とは違いはっきりと成人の男性の声だった...


しかも

悲痛な叫びではなく、愉快なのか大声で笑っているようだった。


「燃えろ!燃えろ!燃えろ!」


火だるま男は叫ぶのをやめて大きな声でため息をついてこう言った。


「なんだ...また邪魔が来たのか?

ダークナイト?いや違うなお前は誰だ?」


そう言ってキリュウの方に振り返ったすると火だるま男の顔は髑髏のようなマスクをしていて口もとだけは、素肌が見えていた。


マスクの下から見える凶悪そうな目でキリュウを見つめてこう言った。


「邪魔しに来たやつなら、関係ない。

お前も燃えてしまえ!」


キリュウその言葉を聞いて咄嗟に近くにあった、木片を男に投げつけた。

明らかに敵意を剥き出しにして襲ってくるのが分かったからだった。


男は一瞬怯んだが、投げつけた木片は一瞬にして灰になった。


「生意気だな小僧!!」


男が気をそらした瞬間に動き始めていて、赤ん坊の泣き声が聞こえる部屋に入って鍵を閉めた。


その部屋はまだ燃えている気配がなく、部屋の中では赤ん坊の母親を呼ぶような声が聞こえていた。


あの火だるま男はもしかすると追ってくる可能性もあったが、それよりも先に助けを求めている人を探すことが重要だとキリュウは感じていた。


扉の向こう側から、男の愉快そうな声が聞こえてそれがどこか恐怖を掻き立てているようにも感じられた。


赤ん坊は玄関からすぐそばにあった寝室のベビーベッドで1人寂しく泣いているのが目に入った。


キリュウはその子供を抱き抱えてこう声をかけてやった。

それがこの子に伝わるかどうかはさておきだったが...


「もう大丈夫だからな〜ママのところに行こうぜ」


赤ん坊を安心させたい気持ちもあったが何よりも先にこの場から逃げることを選択すべきだと感じていた。


赤ん坊は今の状況はきっといまいち掴めていないだろうと思ったが、どこかふと目があった瞬間に安心していることがわかった。


キリュウはどうその子供を運ぶべきか考えたが、目の前にラッキーなものがあるのに気がついた。


それは...


「おんぶ紐!」


キリュウはそう思わず声を出し、それを手に取り....

みたままで、うまい具合に赤ん坊を落ちないないようして背負いおんぶ紐で固定した。


先に赤ん坊を下に下ろそうと思いキリュウはバルコニーに出て下を見下ろした。


下には野次馬が集まっていて騒然としていた。キリュウの姿を見て歓声が上がった。


下にいるミレーヌの声が聞こえてきた。


「誘導はしたわ!赤ん坊とハルカだけが残っているわ!」


「了解です!!一旦降ります」


キリュウはそう答えると冷静に今いる自分のところからは煙が出ていないことを確認した。


『煙もないしこれなら降りられる』


キリュウはふと、バルコニーに置かれていた縄梯子が目に入りそれを下ろした。

梯子自体は長さが足りなくて、3Fのバルコニー地面近くでとで止まったのが見えた。


煙が出る部屋のバルコニーには口元を押さえて低い姿勢でハルカがこちらを見ているのに気がついた。


「ちょっと待ってて!すぐに戻るから」


ハルカが頷いて答えてくれたのを確認してキリュウは急いで縄梯子で3Fまで降りて、その後は行きと同じようにバルコニーを猿のように手すりを掴み降りていった。


地上では、赤ん坊の母親が待っていてキリュウが降りてくるやいなや涙を流して子供を抱き抱えて。


「ありがとうございます!」


と感謝の気持ちを言葉で聞いた。

キリュウはその言葉がどこか心の奥底に突き刺さるのを感じた。


ーーきっとこれが兄貴も感じたのかな...いい感じだ!ーー


ポットそう心の奥から温かく心地の良い感覚がよぎったが....

まだ油断できないことを上を見て感じられた。


ハルカはまだ、煙のそばで助けを待っている。


サイレンと鐘の音が耳に入ってきた。

どうやら消防隊や警察がすぐ側まで来ているのだろうと感じられたが....


キリュウは待つことなくもう一度バルコニーの手すりをつたり上へ上へと進んでいった。


あの火だるま男もいる。

あいつが何かを知れかす気もするから急がないとという気持ちがあった。


登りながら、

炎が隣へ部屋へと移っていくのが見てとれた。

するとハルカが煙の中に引き摺り込まれていくのが目に入った。


「離して!離して!!」


そう、ハルカの叫び声が聞こえた後、身体に火を帯びた火だるま男が姿を見せてハルカの右足を掴んだでを部屋の中に連れていった。


「へへ、お前も燃えてみようぜ!!」


そう火だるま男の声が聞こえて、煙の中に姿を消していったのでキリュウは登る速度を上げた。


5階のバルコニー到着すると下から声で聞こえてきた。

覗き込むとアンが同じく手すり伝いに登って来ていてキリュウを呼んでいた。


「キリュウ君!あいつは、バーニン。炎を操る能力者だから気をつけて!

だんっ...ダークナイトも追ってる能力者のヴィランなの。

これを受け取って!役に立つから!」


そう言って、アンはキリュウに野球ボールぐらいの球体を投げて渡して来た。キリュウはそれを受け取った。


アンの言った、能力者やヴィランという言葉を聞いてどこかワクワクして来た自分がいたが...

ここが現実の世界でただの高校生がそんな

“能力者のヴィラン”

と言われるような所謂、怪人と戦えるのかとどこか不安に感じたが...


ーーハルカを助けないとーー


そのことが浮かんだ瞬間にその不安は、

解決しなければならない問題に変化して頭の中で答えを出すように考え始めた。


これが自信なのかはわからなかったが、

ミレーヌをあのサイボーグ男から助けたこともできたーーー


今までの積み重ねでどうにかやるしかない!

とキリュウは感じ受け取った球体を見て使い方を考えた。

球体はどこか柔らかく、中には青い液体が充満していた。


「中に消火剤が入ってるの。硬いところぶつけたら弾けるようになってるから!」


そうアンの声が聞こえて、キリュウは右の親指を立ててそのまま連れ去られたハルカを追って煙と炎に包まれる部屋の中に入っていった。



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