第18話 不摂生

「なぎさ君は・・・・・・、私みたいなデブ嫌じゃないの?」あれから数日が経ち、プールでのウォーキングにもだいぶんと慣れてきたようだ。よく挫折しないで頑張っていると思う。ただ、体重は思うほど落ちていないようである。


「うーん、そうだな・・・・・・・、最近、細川さん頑張ってるし、見慣れたっていうか・・・・・・、そんなに嫌じゃないよ。ただ、努力もしないで痩せたいとか、楽をして綺麗になりたいとかって奴は嫌いだな」太ってる女の人が嫌というよりは、惰性のまま生きているような奴は本当に嫌いだ。日暮先輩などはきっとあのプロポーションを維持する為に、相当な努力をしているのだろうと思う。


「で、でも・・・・・・・・、やっぱり痩せてる女の子の方が好きよね」水面に映る自分の顔を見ながら彼女は聞いてくる。


「そりゃあ、太ってるより痩せてる方が好みかな・・・・・・・・」俺の頭の中に日暮先輩の姿が浮かび上がる。痩せているというよりはグラマラスって感じであろうか。俺は築かれぬように少し腰を引き気味になる。


「や、やっぱり・・・・・・・・、どんぶりでご飯食べる女は嫌よね・・・・・・・」彼女は落ち込んでいるような表情を・・・・・・・・・、えっ!?


「ちょっと、細川さん!炭水化物減らそうって言ったじゃないか!!まだ、そんな・・・・・・・・、どんぶりで・・・・・・・!!」俺は正直、怒りと呆れが交わった複雑な感情に襲われた。


「え、えええん、うおーーん!」いきなり動物のような奇声を上げたかと思うと細川は俺の前から逃げるように水を掻き分けて走って行った。


「ちょ、ちょっと!!」俺の制止する声は彼女の耳に届かなかったようであった。そのままプールから飛び出すと更衣室のほうに走っていった。


「な、なにがあったでござるか!?」プールサイドで俺達の運動を見ていた服部が慌てて駆け寄ってきた。


「あの人、駄目だ。隠れて丼でご飯食ってたみたいだぜ・・・・・・・・、どおりで運動のわりに痩せないはずだ。付き合っていた俺がばかみたいだぜ」おれは吐き捨てるように言った。そして服部が差し出してくれたバスタオルを受け取って、体を拭いた。


「そうでござるか・・・・・・・・」服部が少し残念そうな顔で呟く。


「やっぱり、日暮先輩みたいに綺麗なプロポーションを保とうと思えば、食べたいものも我慢して運動もして、辛い事も我慢して勝ち取らないと駄目だよな」俺は、日暮先輩を姿を頭の中に描きながら、顔を隠すようにバスタオルで頭をゴシゴシ擦った。


「へっ・・・・・・・・、そ、そうでござるな・・・・・・・・」


「えっ、俺、何か変な事言った?」


「いいえ、言ってないでござるよ・・・・・・・」なぜか彼女は俺から視線を逸らすように遠くを見た。その意味が俺には理解出来なかった。


 服を着替えて、HANDYMAN倶楽部の部室に戻ることにする。


「ただいま、戻りました・・・・・・・・。まったくあの細川さんときたら、やっぱり不摂生が直らないで・・・・・・・・」俺は扉を開いて目の前に飛び込んできた光景に唖然とした。


「ああ、お帰り!」そこには両手にアンマンを握りしめて頬張る日暮先輩の姿があった。

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貴方の好きな事、し・て・あ・げ・る! 上条 樹 @kamijyoitsuki

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