03

 だんだん、学校へ行く頻度が減っていった。ほとんど取得するものは取得していて、行く必要はなくなっている。


 空いた時間。トラックでひたすら、走る。


 走り終わったあとは、なぜ走っているのか、考えた。


 何が、自分を駆り立てるのか。どうして走るのか。


「気むずかしい顔してるわね?」


 彼女が来た。


「また勧誘か」


「ええ。陸上部のね」


「部活には入らん。強制されて走るものでもない」


「なんで、走ってるの?」


「俺も、それを考えていた」


「当ててあげようか?」


 彼女。考えるような、素振り。


「思春期だから」


「思春期か。そうだな。そうなのかもしれない」


 生まれたときから、ひとりきりだった。


 誰かの温もりを、欲しいと思ったことはない。かわりに、自分の身体を走ることで、充たしているのかもしれない。


「え、当たり?」


「人肌が、恋しいと思うときは、ある。そういうときは、やはり、走るんだろうな」


 彼女。複雑な表情。


「どうした、24才の女の子」


「う、うん。いや、ごめん。ごめんなさい」


「何が」


「いや。なんでもないわ」


「変なやつだな」


「そうね。わたしは、変なやつだから。ごめんなさい」

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