第5話

「それで、なんでスマホのことを

忘れるの」

「これ、特集記事読んでみて」

薫が右手に握りしめていた、薄い

雑誌をアカリに差し出した。

「なに、この雑誌」

「科学雑誌、アトム」

薫が自慢げに胸を張った。

アカリは雑誌を手に取ると

特集記事を声を出して読み始めた。

「このほどアメリカの物理学者

ヘーン、アンダーソン氏が学会に

スマートホンの人体に与える

影響についての新説を発表した」

そこまで読み上げるとあかりは

薫の顔に目を移して、一息ついた。

そして、それからまた雑誌の記事

の続きを読み始めた。

「それによると、スマートホンの

過度の使用は認知症に似た症状を

発症させることがわかった」

アカリがそこまで読み上げて、納得

しかけたとき、急にアカリの部屋

が暗くなってきた。

「わっ、わっ、どうしたの。まだ

まっ昼間なのに」

薫はそう大声を出すと、アカリ

に抱き着いた。

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