深紅の笑み

一色 サラ

前半

 小学校5年生になる岸部きしべ 真夏まなが学校の行く途中に、空き家があった。真夏が物心ついた時から、生い茂ったほの暗い家に見えて、気味がわるくて、いつもそこを早歩きになって、通り過ぎるように歩いた。

 11月に入って寒い朝、真夏は学校に行くため、そこを通ると、大きな車が、空き家の前に停まっていた。家の中の様子は見えなかったが、「それ退けとけ」作業員らしい人の声が聞こえた。やっとこの家も取り壊しされるんだと思って、嬉しい気持ちになった。

学校に着くと、取り壊すかもね、やっと何も考えず通れるなどと噂が広まっていた。誰しもが、あの空き地の取り壊しを喜んでいた。

 帰りに作業がどれでけ進んでいるのか楽しみだった。学校が終わって、空き家の前を通ると。すでに大きな車はもう停まっていなかった。それに誰もいなかったし、空き家は何も変わらない状態でそこにあった。

 マンションに着いくと、部屋でリビングの椅子に座ったお母さんが顔が真っ白になって俯いていた。

「ただいま」

「あっ、おかえり」

帰ってきたことに気づいていなかったみたいで、お母さんは少し驚いていた。

「何かあったの?」

お母さんは少しためらった様子で

「あの空き地で人が亡くなったらしいのよ」

言葉を失った。

「やっぱり、あの家は取り壊せないのね」

お母さんはそう言って、キッチンに行ってしまった。

 あの空き家は一度、真夏が2才の時に取り壊し作業があったらしい。その時、作業員が足を切断するという事故が起きたと聞いたことがあった。ただ、今回は亡くなっている。

 空き家は、私が生まれたときには、まだ人は住んでいたが、老婆が孤独死したとされていたり、20代の若い女性が自殺を図ったとされていると色んな噂がされている。真意は分からない。大人たちがそれを隠している節もある。実際のことはわからない。

次の日、学校に行く時、いつもよりも、緊張してその空き家の前を全力疾走で通った。でも、人が亡くなっていれば、テレビ番組のように、規制線を張ってる気がしたが、テープらしきものはいなかった。

ただ、学校に行くと、廊下でも教室でも亡くなったと話している声が聞こえてきた。

「真夏、やばそうだよ」

「怖いからやめて」

「分かってるけどさ」

同級生の富山とやま さくらが不安なのはわかっているが、怖さが増していく気がした。

「なんで、自殺なんて図るのかな?」

どいうことだろう。桜が言ってることが分からず、

「何の話?」

「女の人が空き家で自殺した話でしょう」

「亡くなったの作業員じゃないの?」

「違うよ」桜は呆れたよう声で言った。あの日、取り壊しに来た作業の人が、女性が部屋で首を吊っているのを発見したらしい。

 今まで以上に、あの空き家の前を通ることが怖くなってしまった。あの空き家の前を通らないと、いつも真夏が住むマンションには帰れなかった。


 さらに追い打ちをたてるような出来事が起きてしまった。遺体が見つかって、2週間が過ぎたころ、夜に空き家の前を通ると、女性の声で「こっちに来て」「いやー」「やめてー」などの声が聞こえてきたり、赤いワンピースを着た女性が空き家の方を見てで立っていたや頭から血を流した女性が手招きをしてるなど、気味の悪い噂が学校に広まっていく。真夏は聞きたくなかった。でもその噂が収まる様子はなかった。

「真夏、大丈夫?」

「大丈夫に見えるの?」

「だだの噂だし、真実味薄くない?気にしないほうがいいよ」

「そうだといいけど」


 その夜、空き地が放火され、全焼した。すぐに放火犯とされる女子大学生が捕まった。女子大学生は、あまりにも噂が広まり過ぎて疲れてきて、家を放火したら、噂がなくなると思ったと供述しているらしい。

 真夏は助かったと思った。これで噂が減るかと思ったが、そんなに甘くはなかった。放火した女大学生が、取り調べ中に血を吐いて亡くなった。


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