第一章 俺にしか女に見えない男の娘

第2話 最悪のはじまり


 桜が舞い散る今日、俺の晴れ舞台……いや、黒歴史の創世とも言えよう。

 なぜこの天才である新宮しんぐう 琢人たくとがガッコウたる場所へと舞い戻ったのか。

 そして、非凡な俺が劣等人種たちと勉学を共にしなければいけないのか。

 俺には思い当たることは何1つない。


 別に勉学が嫌だから、高校受験を避けたわけではない。

 俺には差し当たって、『それ』を選ぶ理由が思い当たらないからだ。

 ガッコウなんてもんはメリットが感じられない。

 言わば、デメリットだらけの場所だからね。

 

 更に付け加えるならば、俺のような天才が、高校という枠に囚われていること自体が罪であり(天才だからね)、一介の教師風情では俺に知識を与えるにふさわしくない。


 高等学校というもの……巷ではリア充とかいうやつらが、のさばる場所と聞くではないか。

 非凡な俺がクラスなどに入って見ろ。

 それこそ、教室で浮くというものだ(ぼっち、ぴえん)


 そうだ、ほかのリア充の勉学の妨げになる。

 だって、あれだろ? 俺って普通に高校通っていたら3年生の年齢なわけだよ。

 今年でじゅう、はっさい! だからな。

 同級生なのに、年上というとっつきにくいキャラの出来上がり。


 俺には既に『居場所』があるんだ。

 肩書は社会人であり、ライトノベル作家、そして新聞配達もしている。

 超社会に貢献している十七歳だよね?


 なのに、俺は今こうして、親父から借りたスーツに袖を通し、巨大な白看板の前に立ちすくんでいる。

 なぜかって? べ、別に怖くなんかないんだからね! っと……自らを可愛くも思ったりもするのだが……。


 白看板にはでかでかとこう書かれている。


『第31回 一ツ橋ひとつばし高校 春期 入学式』


 そう書かれた看板のうしろには小さな白い建物がある。おそらく入学式会場だろう。

 ガッデム!

 この向こうに地獄が待っている。そうここは悪魔の巣窟に違いない。


「はぁ……」


 ため息をもらしながら、俺は入口に向かった。

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