第2話
──ピーンポーン
俺は押した。インターホンを。
しかし……予想以上に出るのが遅い……。
さっき女が帰ってきた所は、外からこの目で確認したから中には居るはずだ。もしかして、インターホンはモニター付きなのか?このアパートにはインターホンにカメラは付いて無いと思っていたが……。
画面越しに怪しまれているのか?
いや、そんなはずは無い、容姿は完璧に荷物を配達する業者だ。
本物とほぼ変わらないだろう。
自分の服装を見ておかしいところは無いかと手汗を増やしながら考えていると、若く可愛い返事がインターホンから返ってきた。
きっと家事をしていたか、勉強でもしていたのだろう。少し出るのが遅くなったようだ。
「はぁ〜い!」
「お荷物のお届けで〜す!」
俺はすぐに明るく元気な配達屋さんを装って返事をする。その後ドアが開けばゴーだ。
するとドアは開かず、インターホンからまた返事があった。
「その荷物、北海道からですかぁ?」
いつもはここですんなりドアを開けるはずなんだが、珍しく何処からの荷物なのか聞いてきた。
しかし、相手はもう場所を指定して言ってしまっている。そんなもの「はいそうです」と答えればオーケーだ。
「はいそうで〜す!」
するとまた返事があった。
「そちらは佐々木様からですかぁ?」
今度は、可愛い声で誰から届いたのか聞いてきたのだ。ちょうど、佐々木さんから荷物が届く予定だったのだろう。そうと答えておけば問題はない。
「はいそうです〜」
するとまたインターホン越しに何か言ってきた。まだ聞くことがあると言うのか。
「中身はなんですかねぇ〜?」
なんだ?まだドアを開けてくれないのか?
俺は徐々にイライラしてきたので、適当に答えた。
「カニです」
すると、しばらくしてまた女は言った。
「か、カニ?はい?カニと言いました?」
なんてことだ。何が届くのかしっかり覚えて毎回確認しているというのか?不審がられているのだろうか……?本当は何を待っていたんだ?
いいから、早く受け取りに来てくれ。
しかし、ドアはまだ開かない。
俺は上手く事が進まずイライラと焦りがピークに達していた。怪しい者とバレる前に早めにこの場を去った方が良いのだろうか。しかし、ドアさえ開けばこちらの勝ちなのだ。ここで諦めるわけにはいかない。
早く開いてくれ、突入する準備はもう出来ているのだ。
そう焦って考えていると、女は気持ち悪いくらいに声色を変えて話し始めた。
「あのですねぇ……今日……こちらにはうちの組の者が来る予定でしてねぇ……?そいつが例のブツをダンボールの中にしまって、持ってきてくれるはずなんですよォ?そのブツで例の組の組長を殺す予定なのですが?」
は?何を言ってるんだこの女は……?こ、殺す?組長……?
「わたくしたちは裏の組織で動く同業者ですから、だいたいは言ってることなんてわかるとは思いますが……」
「顔を事前に合わせるのも、連絡の取り合いも危険な状況下でしたし……面識は無かったので……ね?だから、例のブツを持ち、合言葉を使ってここまでたどり着いてもらい取引する予定だったんですけれど……」
「合言葉は〝ウニ〟だったはずなんですよねぇ……」
「これじゃぁ、どうやってあの組長を殺すために動く仲間のところへ行けばいいんでしょうかねぇ?」
ちょっと待て……どいうことだ……。思考が全く追いつかないぞ!まてまてまて、何なんだこれは!この女は何を言っている!
「つまり、あなたは……何者なんですかね?」
「今すぐ白状しないと、何千人もを殺したこの銃でぶち抜きますけどぉ?」
──バッーーーーン!
「あら、空砲みたいね。今部屋にある弾を入れて外に出るから待ってなさい」
俺は銃声が聞こえた瞬間、その場から全力で逃げだした。
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