騙したのは誰?

白咲夢彩

第1話


 時刻は21時43分。


 辺りは冬の静けさと暗さに包まれ、シーンと闇を落としている。十一月半ばを過ぎて一気に寒さが増したように思える。


 今、俺がここに居るのはある女の家に荷物を届けに来たからだ。


 宅配業者の格好をして、お届け先の玄関のドアの前に立っている。


 いや……本当は荷物を届けに来たのではない。



 俺は強盗をしに来たのだ。



 俺は今日まで数々の一人暮らしの女の家のインターホンを押し、荷物を届けに来た業者を装って家の中に入り込み、凶器で脅し、金を盗んできた。


 緊張なんてない。もう慣れたものだ。それはお金を盗むことが簡単にできると知ったからだろう。


 女というのはか弱い生き物だ。凶器を見せれば怖くなって縮こまってしまう。正直、強盗なんて人を選べば楽勝さ。警察にだけ見つからないように上手く変装し、逃げればなんてことない。


 なんせ俺は強盗犯のプロだからな。こんなに数々の悪行をしているにも関わらず、捕まらないんだぜ?中々すごい腕だろ?


 今日もこの前と同じで、一人暮らしのか弱そうなお金のある……若い女がターゲット。


 今回のターゲットは、ブランド物のバッグをいつも身につけている。お金がたんまりあるのだろう。ふん、俺もそんな人生にしたかったぜ。


 そして、そのターゲットを騙し、家のドアを開けた瞬間、俺は中に勢いよく入り込み、凶器で脅し足と手を縛る。そして金のある居場所を吐き出させ、大金を持って帰るという訳だ。もちろん、金になる品でも良い。


 低い身長の小柄な女だし、楽勝だな。


 超簡単だろ?


 それじゃあ、いってくるぜ。


 ダンボールを片手に俺はインターホンを押した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る