厨二病版桃太郎

下垣

誰か翻訳してください

 遥かいにしえこくの地にて、朽ち果てつつあるおきなおうな仮初かりそめの暮らしをしていた。


 翁は龍が住まう霊峰に芽吹いた緑の命の刈り取りへ、媼は天の恵みを受けし大河に天衣を浄化しに馳せ参じた。


 媼が天の恵みを受けし大河で天衣を浄化していると、原初の流れから偉大なる取り入れし者に長寿を与える万物の果実がどんぶらこどんぶらこと流れてきました(翻訳不可能)


 媼がその取り入れし者に長寿を与える万物の果実を仮初の暮らしをする拠点に賜ると、翁は心の臓の鼓動が早くなり、口からは阿鼻叫喚の声が漏れだした。


「おう、媼。その取り入れし者に長寿を与える万物の果実偉大すぎやろ」


「せやろうか」


「せやせや」


「ほなら切り裂いたるでーwww」


 媼は禍々しき刃で、取り入れし者に長寿を与える万物の果実を真っ二つに切り裂いた。


 すると中から金玉きんぎょくを神から賜りし性の幼子おさなごでたのだ。


 その幼子は桃太郎という枷を背負って生きていくことになったのだ。


 桃太郎は翁と媼の寵愛を受けて、正しき心を持つ強大で誇り高き聖戦士へと至る軌跡を歩んだ。


「翁、媼。我は邪悪なる者が住む牙城にいる暴虐の限りを尽くす悪鬼を討ち滅ぼしに行くなり


「桃太郎や、この大都会岡山が誇る銘菓きびだんごを持っていくとええで」


 媼が生みし、きびだんごを手に桃太郎は覇道を突き進む旅路へと出た。



 旅路の途中、桃太郎は全てを噛み砕く牙を持つ狗に邂逅かいこうした。


「桃太郎さん桃太郎さん。お腰につけた大都会岡山が誇る銘菓きびだんごを一つ私に授けたまえ」


「貴様! 何故、我の名を知っている!」


「く、くくく! 流石は桃太郎。我が存在を見破るとは聡明なり! だが、我を倒すことなど不可能!」


 狗から漆黒の瘴気が漏れ出し、それがやがて悪しき獣の形へと変貌する。狗には悪鬼からの刺客である邪霊が憑依していた。即ち、この狗はただの傀儡。利用されたに過ぎない哀れな存在。


 邪霊は桃太郎に飛び掛かる。桃太郎は翁より賜りし聖刀せいとう桃神丸とうじんまる†を引き抜き、邪霊に一閃の太刀を浴びせる。


 邪霊は聖なる力にて浄化される。その身を焼かれ、切り裂かれ、断末魔の叫びをあげて塵芥ちりあくたとなり消滅せし。


「う……も、桃太郎さん……? 桃太郎さん! 私の救世主メシアとなりし、お方。私はしゅの望むままにこの牙を振るうまで」


 邪霊に憑依されてた狗は起き上がり仲間になりたそうな目でこちらを見ている。桃太郎。これを快諾。即、快諾。来るもの拒まず去るもの追わずの精神。


 全てを噛み砕く牙を持つ狗が桃太郎の覇道の旅路へと加わる。



 桃太郎と狗が、絶望を打ち砕き民に希望を与えるための道のりを歩いていると、今度は悪しき者を引き裂く爪を持つ霊長類サルが目の前に立ち阻む。


それがしは、この世で最も冷静な狂戦士。某の理性が月明りに照らされた雫のように穏やかな内に立ち去るが良い」


 サルだけに立ち去る。表情筋が死せる者でさえ、悪魔のような微笑みをするような高度な冗句。


「ふ、我の覇道の前に立ち阻まろうという気か。見上げたサルだ。その勇気に敬意を表して、神聖な決闘を申し込もうではないか」


「ほう。某を狂戦士と知っての戯言か? その蛮勇は勇気などと呼べぬ! 所詮、貴様らはエデンの園を追放されし類猿人! おのが業を思い知るがいい!」


「さあ来い。サル! 我の剣術の妙技を見せてごらんにいれよう!」


 サルが飛び掛かってきた。その姿は正に翼なき降下猟兵。天を取られた桃太郎。絶体絶命の危機に瀕した。しかし、桃太郎冷静に対処せし。†桃神丸とうじんまる†の峰でサルの右手の小指を禁断の果実を握りつぶすかのようにへし折る。


 サルはこれにはたまらず悲痛な雄たけびをあげる。


「今降参するなら助けてやろう。これ以上戦うのなら、貴様の残りの指の爪の心配もした方が良さそうだな」


「ふっ……某の負けか。自慢の爪をへし折られてしまっては、某のプライドもずたずたに切り裂かれたようなもの。こうなってしまっては某に生きる価値なし。殺すがいい」


 桃太郎はサルの頬に平手打ちをかました。その平手打ちは女神の寵愛の如く、慈愛に満ち足りているものであった。


「命を粗末にするな。死ぬのはいつだってできる。けれど生き続けるのは今を積み重ねていくことでしかできぬ。潔い死よりもハイエナの如く意地汚く生きる方が、よほどくらいが高いわ!」


「勝てねえ……勝てねえよ……桃太郎さん……某、桃太郎さんに着いていってもいいかな」


「元よりそのつもりだ。来るがよい。サルよ」


 こうして、悪しき者を引き裂く爪を持つ霊長類サルが桃太郎の旅路に加わることになった。



桃太郎と狗とサルが、未来への歩みをしている最中のことだった。悠久の時を生きる不死鳥キジが桃太郎の眼前に現れる。


「ケーンケーン。私も鬼退治に行きたいケーン」


「ふっそうか……好きにしろ」


 こうしてキジがなんのドラマもなく仲間になった。


 桃太郎、狗、サル、キジは小舟に乗り、鬼ヶ島を目指した。


「あそこが、邪悪なる者が住む牙城」


 遠くに見える鬼ヶ島にある邪悪なる者が住む牙城が見えてきた。あそこの悪鬼共が、村人から奪った天よりの恵みの宝玉、世界創世と共に生まれた金銀を奪い取ったのだ。


 鬼ヶ島に上陸した桃太郎たち。堂々と真正面から正々堂々と桃太郎は挑んだ。なぜならそれが聖戦士の矜持。裏からこそこそ入るのは邪道! 桃太郎はただ王道を突き進むのみ!


 邪悪なる者が住む牙城の門は固く閉ざされていた。このままでは真正面から堂々と侵入することができない。桃太郎たちは途方に暮れるのであった。しかし、まだ目が死んでいない者がいた。キジ! キジだけは活路を見出していたのだ。


「ケーンケーン。桃太郎さーん桃太郎さーん。私が中に侵入して門を開けてきますケーン」


「天才じゃったか!!」


 こうしてキジの機転により、邪悪なる者が住む牙城に侵入することができた桃太郎一向。このまま悪鬼たちにカチコミにいくのだった。


 桃太郎たちが邪悪なる者が住む牙城に侵入したことに気づいた悪鬼たち。悪鬼たちは、全ての正しさを打ち砕く金棒を手に持ち、応戦しようとする。


 今、ここに桃太郎と悪鬼たちの神々の黄昏ラグナロクが開始されたのだ。


 狗は悪鬼の足元に牙を通し貫き、サルは鋭き爪で悪鬼の胴体を切り裂き、キジは上空より邪悪なる眼を嘴でついばんだ。


 それぞれが三者三様の攻撃をする。だが、これらはいずれも下級の悪鬼。上級の悪鬼たる首領は、桃太郎と戦うのを待っている。


 桃太郎は下級の悪鬼たちを部下に任せて、自身は前に進む。そして最奥にいる首領に戦いを挑んだ。


「我こそは桃太郎なり。辺境の地より貴様の首をもらい受けるためにここまで来た! いざ尋常に勝負する!」


「ほう。面白い。小童が! 貴様に我が首が取れようか!」


「うおおおおおお!!!」


 桃太郎は†桃神丸とうじんまる†で首領に一太刀を浴びせようとする。しかし、首領の金棒が†桃神丸とうじんまる†を弾き飛ばした。そのあまりの重量で†桃神丸とうじんまる†は、ポッキリと折れてしまい使い物にならなくなってしまった。


「くく、あははは! 終わりだな桃太郎! 聖刀がなき貴様など蚊ほども怖くないわ!」


「果たしてそうかな……」


 桃太郎はへその下。丹田たんでんに意識を集中させた。そして、ぽっきりと折れてしまった†桃神丸とうじんまる†の柄を持ち、刀身に自身の気を送り込むイメージをした。


 すると折れた刀身に桃太郎の気が覆われて新たな刃が誕生した。


「な! バ、バカな! 貴様! 丹田の気を使いこなしているだと」


「我の聖なる闘気の刃を受けるがいい! 終わりにしようぜ……鬼さんよ」


 桃太郎は聖なる闘気を纏った†桃神丸とうじんまる†で鬼を切り裂いた。悪鬼の首領たる鬼は断末魔の叫びをあげてその場に崩れ落ちた。悪鬼には致命傷を与えた。即死ではないものの、この傷を受けてはもう助からない。


「ぐふ……桃太郎……見事なり。く、くくく……あははは! だが、これで終わりだと思うなよ。鬼の一族は我だけに非ず。我が一族が必ず貴様に復讐してくれよう!」


 それだけ言い残すと鬼は力尽きて事切れた。


 桃太郎は鬼が村人から奪った眩い財宝を持ち帰り鬼ヶ島を後にし、自分の故郷に帰還するのだった。


 翁と媼は旅を経て一回り成長した桃太郎の姿に感動して、涙を流したのだった。


 こうして、桃太郎は鬼を退治して、一時の仮初の平和を手に入れることができましたとさ。


 めでたし、めでたし。

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厨二病版桃太郎 下垣 @vasita

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