異世界ファンタジー名探偵マック1

渋谷かな

第1話 犯人は大怪獣!?

「犯人はおまえだ!」

 一人の少年が多くの人々の前で犯人を指名する。

「バカな!? なぜ私が犯人だと!? 証拠はあるのか!? 証拠は!?」

 犯人と指名された男は慌てて騒ぎ立てる。

「ありますよ。」

「なんだと!?」

「匂いだ! 返り血を拭くことはできても、返り血を浴びたあなたの体からは血の匂いがする!」

 犯人から血の匂いがプンプンしていた。

「しまった!?」

「観念するんだな。殺人犯!」

 少年は犯人を追い詰める。

「こうなったら仕方がない! この場にいる全員を殺してやる!」

 新たな殺意が目覚める。

「うおおおおおー!」

「姿が変わっていく!?」

 殺人犯の人型から異世界ファンタジーらしくモンスターに変化していく。

「おまえたちを食べつくしてやる!」

 現れたのは連続殺人犯の大怪獣ガジラ。雑魚モンスターではない。改めて言おう。雑魚モンスターではない。

「やれるもんならやってみろ。」

 しかし少年は微動だにしない。それどころか楽しそうに笑っている。

「なに!?」

「普通の探偵は事件の謎を解いて警察に任せて終わりだが、俺は違う。俺はモンスター退治までやるプロの名探偵だ。」

 少年は犯人であるモンスター退治までする探偵だった。

「まさか!? おまえが有名な!? あの異世界ファンタジー探偵か!?」 

 モンスターの間でも少年の探偵の名声は聞こえていた。

「その通り。俺の名前はマック。異世界ファンタジー名探偵さ。」

 少年の名前はマック。名の知れた名探偵だ。

「それがどうした!? たかが探偵如きがモンスターである私に勝てると思うなよ!」

 大怪獣ガジラがマックに襲い掛かる。

「おまえ、さっきから探偵、探偵、うるさいんだよ! 俺は名探偵だって言っているだろうが!」

 かなりプライドの高いマックは名探偵の名が抜けて探偵と呼ばれると自尊心が傷つくのであった。

「知るか! 死ねえ!」

 大怪獣ガジラは突進をやめない。

「いいだろう。この俺を名探偵と知っても挑んでくるなら、倒させてもらう!」

 マックは戦闘態勢に入る。

「この剣は俺が魔王を倒した後に見つけたので名前も分からないので、こう名付けた。名探偵の剣だ。」

 マックは手品みたいに何もない所から剣を出現させる。

「どこから剣が!?」

「そっちかよ!? 物空間移動魔法でも、サイコキネシスでもいいじゃねえかよ!?」

「てっきり四次元ポケットかと。」

「俺は猫型ロボットじゃねえよ!?」

 仕切り直す。

「名探偵の剣だと!?」

「その通り。名探偵の俺のためのディテクティブ・ソードだ!」

 名探偵は剣を構える。

「どんな難事件も快刀乱麻! くらえ! これが俺の名探偵斬りだ!」

「ギャアアアアー!? やられた!?」

 マックは必殺技で大怪獣ガジラを斬り倒した。

「安心しろ。動けなくなる程度の峰打ちだ。」

 大怪獣ガジラは死んではいなかった。

「どうして人間を殺したんだ?」

「私は山で大人しく暮らしていました。それなのに人間が森林伐採、森林伐採と山の木を切り倒すんです。山が壊されエサも取れなくなって困った山に住む者たちは人間の住む街にエサを探しに行った所、人間に見つかって殺されそうになったので、仕方がなく人間を殺したのです。」

 大怪獣ガジラにも罪を犯す理由があった。

「そうだったのか。すまない。」

「え!?」

「悪いのはお金のために美しい緑の山を破壊している人間かもしれないな。でも人間を殺してしまったら、山を殺している人間と変わらない。罪を償って、また山で暮らすといい。」

「ありがとうございます。」

 謝ってもらい、自己の境遇を聞いてもらい、自分を理解してもらい、再び生きるチャンスをもらった大怪獣ガジラは涙を零すであった。

「はい。一件落着。」

 事件を華麗に解決する異世界ファンタジー名探偵であった。

「いや~! さすがは名探偵だ!」

 そこにオッサンが一人現れた。

「相変わらずですね、カーネル警部。どこに隠れていたんですか?」

 現れたオッサンは警察の警部だった。

「二行目の「多くの人々」の中に警察もいたんだな。」

「調子がいいのも相変わらずですね。」

「アハッ!」

 笑って誤魔化すカーネル警部。

「どんな難事件も解決してみせますよ。俺は名探偵ですから。」

 異世界ファンタジー名探偵マックの大活躍は始まる。

 つづく。

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