【碧い瞳のミネルウァ　～古代ローマ謎解き活劇譚～】／綾束　乙様

掲載サイト・カクヨム

24.3万文字、完結

　私の中では綾束様の作品は安心安定の絶対的な面白さを保証してくれます。馴染みの作者様の読み慣れた文体は実家に帰省して母の手料理を食べた時に似た安堵感がありますねぇ✨

　二十八歳の護衛と十七歳の令嬢の凸凹コンビが古代ローマ帝国を駆ける痛快ミステリーな冒険譚です。

◇◇◇

▼個人的な見どころポイント

＊護衛と令嬢、噛み合っていないようで抜群のコンビネーションな相棒レベル

★★★★★

　苦労背負い込み巻き込まれタイプの護衛、ルパスと破天荒な無敵お嬢様のコレティア。なにこのコンビ、めっちゃ好きなキャラ設定！

コレティアに対して「お嬢様」なんて呼ばないし敬うこともしないルパスさんと、歯に衣着せぬ物言いをするコレティアちゃんのユーモアたっぷりな軽口はいつまでも拝聴できる……二人の会話をローマの石畳みになってこっそり盗み聞きたい。

　殺人事件さえも己の好奇心を満たすための面白いオモチャと捉えているコレティアお嬢様、そうは思えずお嬢様の暴走に頭抱えるルパスさん、帝国を揺るがす陰謀やコレティアの失われた記憶の事情を知った後の二人の言動の変化も見どころです。

　文体の形式がルパス視点の一人称なのもコレティアお嬢様の言動を客観視できる＋主人公がルパス寄りの物語として読めるから、一歩間違えば読者にそっぽを向かれそうなコレティアの過激な性格も魅力的な女の子として描写されています。

これがコレティア視点の一人称だとしたなら、色々とんでもないなぁと思います、ほんとに。苦笑

　ルパスとコレティアの間には甘ったるい雰囲気はなく、綾束作品には珍しく恋愛模様の糖分は控えめ。……だけど？？

ルパスさんは外堀からじわりじわりと埋められている気がする。お互い無意識の無自覚というかなんというか。

気付いたときにはコレティアから逃げられなくなってそう(~￣³￣)~

＊世界史好きさんにおすすめレベル

★★★★☆

　幕開け早々に起きた火山の噴火の壮大な描写に惹き込まれました。

ローマの石畳みに照りつける真夏の太陽、富裕層も奴隷も、身分や民族が多種多様な人混みでごった返すローマの道には野菜や陶器の露天が並び、ナポリ湾の海の青さからの火山の脅威に震える。

緻密な情景描写は古代ローマにタイムスリップしたようです。

　作中には実在の人物の名前も登場します。ローマ帝国の成り立ちや戦争のこと、ローマ人にゲルマン人、ギリシア人やユダヤ人など民族や宗教の蘊蓄（うんちく）が語られるページは個人的には少々冗長に感じられましたが、歴史が好きな人にはたまらないでしょう。

　私はTHEゆとり☆世代の教育課程ど真ん中なため、世界史の内容をかなり省かれて育ってしまっているんですよね。古代ローマの歴史は中学でも高校でも勉強した記憶がない……。ナポレオンの時代はがっつり習った記憶が多少はあるんだけどなぁ。

　勝気なお嬢様とそれに負けないくらい勇敢な護衛と共に、古代ローマの空気を感じてみてはいかが？

もれなく物騒な事件とコレティアの蹴り技がついてきますよ～！！

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