第2話

 僕は助けられるかどうか考える暇もなく、慌てて弁当の風呂敷を体の前で広げて、彼女を受け止めようとする。幸いにも風がなかったので、落下点がズレることはなかった。


 彼女の体重が、僕の華奢な二本の腕にのしかかる。風呂敷は、彼女の腰の負担を和らげる良いクッションになった。彼女は瞬きして、僕を見ている。


「だ、だ、大丈夫?」


 僕がぎこちなく問いかけるも、彼女はそのまま気を失ってしまう。


「おーい! 大丈夫かぁ?」


 先生が、頭上から呼びかける。僕は先生を見上げて、黙ってうなずく。「そこで彼女を見ておいてくれ」と言われたので、僕は彼女を地面にそっと下ろした。


 彼女は流れるようなサラサラした長い黒髪を持ち、少しふっくらした顔立ちをしていた。右手には包帯がぐるぐるに巻かれていたので、僕の顔は青ざめる。本気で死にたがっていたようだ。


 その後、生徒指導の先生と保健室の先生がやって来て、彼女を運んで行った。僕は、もう二度と彼女と会わないだろうと思った。

(続く)

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