第4話 ばあさんへ。材料集めをしてみました。



「革職人の店…おっと、これか。おぅ、邪魔するよ」


武器屋の店主にきいた通りの場所にあった店へと、職人は扉を開けて入っていく。


店の壁には多種多様な動物の毛皮が掛かっており、ここが革職人の店なんだなと納得させられる。



「はいー、いらっしゃいませー…」


カウンターに座るいまいち生気のない女性が、職人を迎える。


「えっと、ここで『トカゲの皮』が買えるって聞いたんだが、売って貰えるか?」


「それでしたら、そこに並んでる分ですねー。要る分だけ持って来てくださいー…」


職人が向かうと、そこには何種類かのトカゲっぽい皮が並べてあった。


「あの店主よ。トカゲと言っても何種類かあるんだが、どれなんだ?」


「んー?。お客さん、トカゲの皮は何に使うんですー…?」


ひょいと首だけをカウンターからつき出して、職人の方を見る。


「アイアンソードを『くらふと』したいんだが、トカゲの皮がいるらしいんだ」


「それだったらー、手前の茶色のやつで充分ですよー…」


職人は「茶色…これか」と並べてあった分を10枚ほど手に取る。


そしてカウンターに座る店主に代金と一緒に差し出した。


「はい、だいじょうぶですー。ありがとうございましたー…」


職人が鞄にトカゲの皮をしまうと、店主は小さく頭を下げる。



店主は革職人の店を出ると「生気のない奴だったなぁ…」とぼんやり思うのだった。




人目に付かない建物の壁に引き戸を出し、職人は部屋へと戻ってくる。


そしてまずは鉄鉱石を並べてアイアンインゴットを必要数作り、その後それにトカゲの皮を加えてアイアンソードをクラフトする。


うっかりHQしてしまいスチールインゴットが出来たので、それは当然やり直してアイアンインゴットを作ったのだが。



アイアンソードを作る時にもやはりHQの気配は感じられたので、職人はとりあえずHQ3を狙ってみる。


結果は目の前に現れたのは、普通に一振りのアイアンソードだけだった。


「こいつは増えねぇタイプか。やりがいねぇな」


職人は出来たアイアンソードを手に取ると、苦笑しながらしげしげと見る。


そしてそれを手に取ったまま工房へ行くと、砥石で研ぎ始める。


シャッシャッシャっと心地良い音が響き、職人は刃に視線を合わせてそれを見る。


そんな事を数回繰り返して満足いったのか、職人は出来たアイアンソードを布でくるむ。



剣を布で包む作業をしてると、ふと足元のスチールインゴットに目が止まる。


…そういやこいつも同じ材料で出来てるんだよな?。


なんとなく思う事があったのか、職人はスチールインゴット2個とトカゲの皮を並べ、再びクラフトをしてみる。


シュワシュワシュワ───────────────パッカーン


光が収まり出来たのは、さっきのアイアンソードとはちょっと色合いの違う同デザインの物だった。


とりあえずさっきと同じ様に砥石で研いで、これも同じ様に布で包む。


…あの若造が、これを見てどんな判断をするのかね。


久々に自分が試される側になっている事を、職人はどこか楽しんでいる様だった。



それから、鉄鉱石を使ってスチールインゴットを黙々と作った後、いつもの様に晩酌をして、夜は更けていくのだった。




それから2日後、女神と一緒にリアカーに積んだブロンズインゴットと、試しに作った二振りの剣を持って武器屋へと向かう。


相変わらず大量に持ち込まれるブロンズインゴットに嬉しい悲鳴を上げながらも、店主は代金と交換分の鉄鉱石を空になった荷台へと載せていく。


全てを載せ終わり「本日もありがとうございました」と深々と店主が頭を下げたところで職人が声をかける。


「それとな?。この前言ってたアンタの店に並べてもらえるかもしれないってやつなんだが、とりあえず作ってきたので見てもらえるか?」


「おぉ、ご老人は仕事が早いですね。いいですよ、それでは店内で拝見しましょう」


荷台に布を掛けて見えない様にだけして、3人は店内に入る。


「まずは…こっちだな」


職人は巻いていた布を外し、アイアンソードを店主に渡す。


「はい、お預かりします。えーっと、まずどこにも不具合はなさそうで…?」


アイアンソードを手に取っていた店主の動きが、突然ピタリと止まる。


上に持ち上げたり視線を合わせたりしながら、かなり念入りに見ている。


その顔は、明らかに動揺している様に見えた。


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