第13話 ばあさんへ。子供達と一緒にやりました。



女神にきいたところ、この世界にも地球と同じ様に曜日の様なものが存在するらしい。



それは七曜日ではなく『火・水・雷・土・風・氷・光・闇』の8曜日で、光の日は基本的に皆が休むとも聞いた。


そんなわけで、職人は光曜日を完全な休みと自分に設定する事にした。



そんな休みの前日の午後…つまり氷の日の午後に、村の広場で遊んでいた子供達に職人は声をかける。


「今から儂は銅鉱を採りに行くが、お前達も着いてくるか?」


職人の言う銅鉱というあまり価値のない鉱石に加え、モンスターも出るかもしれないという恐怖に子供達はいまいち乗り気じゃなさそうだった。


「ちなみにな?。明日はこれから採りに行く銅鉱を使って、お前達子供にちょっとした催しをする予定だが、それの参加に最低銅鉱が4ついるぜ?」


子供達が『催し』という良く分からないイベントに、少し目を光らせたのを職人は見逃さなかった。



「そうだな…とりあえずその催しの参加者には、こいつをやろうかな?」


そう言うと職人は、ズボンのポケットから飴を一つ取り出す。


少し前の獅子鍋の時に味わった事のある子供の目の色が一気に変わり、「私も行く!」「ボクも行く!」と声をあげる。


飴を知らない子供が、いきなり乗り気になった子供に尋ねると、「すごく甘いの!美味しいの!」とその子供も誘う。


結局、広場に居た子供達に加えて、呼びに行ってまで連れてきた計12人の子供を連れて、職人は近くの洞窟を目指すのだった。


途中にボアやラットも現れたが、見敵必殺の勢いで銃で片付けていく。


目的地に着くと、職人がつるはしを振り、子供達が転がってくる鉱石を回収していく。


品切れになったら近くの別の場所でまたつるはしを振り、また移動…を数度繰り返す頃には、子供達の鞄は鉱石でいっぱいになっていた。


「それじゃ戻るか」


「「「はーい」」」


今回は鉱石を一切回収しない代わりに、仕留めたボアを背負った職人と12人の子供達は、夕方前には何事もなく村に到着する。



「じゃあ、明日今日採ったそれを忘れるなよ?。あと今から獅子鍋やるから、食べたいヤツは来いと伝えておいてくれ」


それだけ釘を刺して職人は部屋に戻りいつもの様に鍋の準備をしていると、どこからともなくわらわらと人が集まってくる。。


大人を呼んできた子供達に1つずつ飴を配り「よくやったな」と撫でてやる。


飴を知っている子供は跳ねながら喜び、知らない子供はおそるおそる口に含み舌で転がす。


そして子供達は飴に感動して、明日も参加すればこれが貰えると目を輝かせるのだった。



ちなみにその日の獅子鍋も大盛況だったのは言うまでもない。





光曜日の朝、職人は木陰の広場に作業台を並べていく。


そして椅子も並べ、準備万端の状態で子供を待つ。



暫くすると子供達が集まってきたので、空いている席に座るように誘導する。


何人かは母親と一緒に来ていたので、少し離れた場所にも椅子を並べ、母親たちはそちらに座ってもらう。




「んじゃ、そろそろ始めるぞー?。お前達はクラフトってわかるか?」


職人の問いに、子供の1人が手を上げる。


「シュワシュワーってやるとものができるやつ?」


「そう、それだな。というわけで、昨日採ってきた銅鉱でやってみようと思う」


そう言うと職人は台の上に銅鉱を4つ並べる。


なかなかクラフトの現場を見る事のない子供達は、興味津々で見ている。


シュワシュワシュワ───────────────キュキュピーン


職人は当然の様にHQ2を発生させ、目の前には3つのブロンズインゴットが発生する。


子供達は無邪気に「すごーい」「でてきたー」とはしゃいでいたが、HQをさらっと出した職人を見る大人たちは目を大きく見開いている。


「具合が悪くなったらすぐ言えよー?。無理したヤツには飴をやらんからなー?」


職人は子供達に釘を刺した後に、やり方を教える。


子供達はシュワシュワとクラフトを成功させる…もちろんHQは起こっていない。


「あれ?。私の1個しか出ない」

「ボクも1個だー。なんでー?」


さっき目の前で3つ出てきたのを見た子供達は、自分が1個しか出せない事に疑問を持っている。


「よく出来たな。でも1個しか出来なかっただろう?。これはコツがあるんだぜ?」


そう言うと職人はまた並べた銅鉱に手をかざす。


シュワシュワシュワ───────────────パッカーン


台上はさっき以上に光り、その光が収まると今度は4つものインゴットが並ぶ。


さも当然の様に再び起こったHQに、大人は席を立ちあがり目を疑っている。



「な?。コツを覚えれば確実に多めに出せるって事だ。お前達もきちんと色々に気付けるようになって、練習するんだぞ?」


「「「はーい」」」



そんなこんなをして、子供達が3~5個ずつのインゴットを作り終わったくらいで、採ってきた材料が尽きた様なのでおしまいにすることにする。


参加賞の飴と一緒に自分が作っておいたインゴットを1~3添えて、全員が同じ数を持ち帰れるように気遣いも忘れない。


全員に配り終わると職人は最後に真面目な顔をして子供達に言う。


「お前達に『まな』とやらが余ってるのならそれで何かを成せ。ただし、外にはモンスターが居るので、採りに行く時は大人に付き添いしてもらう様に!」


「「「はーい」」」


素直な子供達の返事に、職人は満足そうな顔をする。



ちなみに、6個ものインゴットを持って帰った子供は大人達に非常に喜ばれ、後日武器屋には大量のインゴットが売りに来られるのだった。

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