第11話 ばあさんへ。何かを掴めそうです。
今日も今日とていつもの様に朝を迎える。
注文分の包丁の制作はとりあえず終わったので、今日は久々に刀剣の制作を行う。
そして昼くらいまで続けて、今日の仕事は終える。
昼も済ませて準備も済ませると、職人は天井に向って声をかける。
「おーい、嬢ちゃん。『くらふと』とやらをやるぞー」
『あー、おじいさんですよぅ。すぐ行くですよぅ』
そう職人の頭に響くと、キラキラと光が降ってきて、ポンっと女神が目の前に現れる。
「んじゃ、やるぞ?」
職人は並べた銅鉱4つに手をかざすが、昨日よりどこか難しい顔をしてる様に見える。
シュワシュワシュワ─────ピキーン
シュワシュワシュワ─────ピキーン
シュワシュワシュワ───────────────キュピーン
3回目に強い光が発生し、目の前に2本のブロンズインゴットが現れる。
「おー、今日もHQが出たですよぅ。おじいさんは運がいいですよぅ?」
女神が楽し気に話しかけてる中、職人は自分の手をじっと見ながら「ふむ…そういう事か」と何かに納得をしている。
再び銅鉱を並べると、職人は手をかざす。
シュワシュワシュワ───────────────キュピーン
「おぉ!?。またHQですよぅ!」
シュワシュワシュワ───────────────キュピーン
「はえっ!?。またHQですよぅ!!?」
シュワシュワシュワ───────────────キュピーン
「ほえぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?、ですよぅ!」
女神が驚きすぎて声にならないで呆然としてる中、職人は銅鉱を並べる。
シュワシュワシュワ───────────────キュキュピーン
HQの時よりもさらに強い光に包まれ、今度は目の前に3本のブロンズインゴットが現れる。
「なんじゃっ!?。今度は3本に増えたぞっ!」
「おー!。HQ2ってヤツですよぅ。高レベルの職人でもないとなかなか出せない、すごい当たりなんですよぅ」
女神の説明に、職人は「なるほど…」と何かを納得して、そしてまた銅鉱を並べて手をかざす。
シュワシュワシュワ───────────────キュキュピーン
「はいっ!!?。なんでまたHQ2がおこるですよぅ!。おじいさん凄すぎですよぅ!」
驚きまくった女神が職人をじっと見るが、職人はそれほど驚く事もなく首を左右に振りながら肩を回している。
「とりあえず軽いめまいがそろそろ来そうだし、今日はやめとくか。嬢ちゃん、ありがとな」
「いえいえ、なにもしてないんですよぅ。それより、おじいさんはすごく運がいい人なんですよぅ?」
言われた職人が「ん?」と女神の方を向く。
「運がいいって…なにがだ?」
「いやいや、あんなにHQが続くどころか、HQ2まで起こるなんてすごいですよぅ!?」
職人は「あぁ」と納得して、軽く笑う。
「私、何かおかしな事を言ったですかよぅ?」
「いや、運じゃねぇんだよって思ってな」
職人はそう言うと、部屋に戻り畳に腰を下ろす。
「運じゃない?、ですよぅ?」
「あぁ。最初にその『はいくおりてぃい』ってやつをやった時に、何か違和感を感じてな?。それが何かを考えたわけさ」
職人の言葉に女神は、良く分からないまま「ふんふん」と頷く。
「でな?。その『はいくおりてぃい』の時には、何か粘りというか湿りというか、そんな感覚があることに気付いてな?」
「…さっぱり意味が分からないんですよぅ」
職人が「そうか?」と女神を見る。
「まぁ兎に角、その粘りを探る感じで『くらふと』をやれば、『はいくおりてぃい』になるってのが分かったって訳だな」
「いやいやいやいや、そんな事はおかしいですよぅ?。クラフトは確率なんですよぅ?。スキルレベルも上がってないのにそんな筈がないですよぅ」
職人は女神の方を見て「フッ」と笑う。
「職人ってのはな、最高の物を常に生み出すのが仕事なんだぜ?。細かい機微に気付ききっちり仕事をすれば、それが最高になるのが職人ってものなのさ」
職人はそう言ってガッハッハと笑う。
全く意味の分からない理論ながらも、目の前で見た確率を超えた現象に、もしかしたらそうなのかもと、女神は納得しそうにもなっていた。
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