強すぎるから冒険者除名? ふざけるな殺してやる。

顎男

第1話


「はっきり言うが……レイジ。この国から出て行ってもらいたい」


 冒険者ギルドに呼び出された俺は、ギルド長にそう告げられた。


「……なんだと?」

「悪いんだが、君のように、その……いくら強くても、コミュニケーション、協調性がなく、約束が守れない、どうも信用ならん男は、冒険者としていらんのだよ。わかるかな?」

「…………」

「それにその……魔王? の力だったか。眉唾だが、君が魔族を倒してその力を取り込んだのは本当だろう。だが、そういうあやしげな力を持つものは、冒険者としてふさわしくないのだよ。強すぎて興ざめじゃ」


 俺は怒りに震えた。


「冒険者は、強さがすべてだ。ほかの雑事なんて関係ない」

「その雑事というのがね、ほっほ、大切なのじゃよ。君のような若者……いや、もういい歳だったか? 君ももうそのへんを弁えてだな、人間と寄り添う生き方を……」

「くそ喰らえ」

「な、なんだって?」

「くそ喰らえと言ったんだ、じじい。おまえみたいな虫けらが、俺と対等のような口を利くな」


 ギルド長は顔を真っ赤にして立ち上がった。


「な、なんて無礼なやつだ! 衛兵! この者を殺せぇ!」

「……手を出しやがったな?」


 俺は駆け寄ってきた衛兵を殴った。その首がごきんと折れて倒れる。


「ひっ……こ、殺しおった。人殺し!」

「おまえが俺を殺そうとしたんだろうが」


 俺はギルド長に近づいた。


「や、やめてくれ。わしはただみんなのためを思って……」

「俺のためは?」

「え?」

「俺のためには、何かしてくれたのか。無能なゴミ虫さんよ」

「へ、へへ……それはその、別というかだな」

「死ね」

「ぎ、ぎゃーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」


 俺はギルド長の頭を掴み、そのまま捻り潰した。

 返り血をあびる。


「……ゴミが。俺がいままでこの都市にしてきた貢献を忘れたか」


 俺は最強の冒険者としてAランクに登録されている。

 Sランク昇格のために訪れたと思ったら、除名処分。

 ふざけやがって。ランクなどどうでもいいが、俺に歯向かったことは許さん。

 俺は念入りにギルド長の死骸を踏み潰した。


「この世界も、クズばかりか」


 俺は前世で過労死した。

 誰も俺のことを考えてくれなかった。

 ふざけてやがる。

 俺はこの世界では、自由に生きると決めたんだ。


「ぎ、ギルド長が殺されてる!」

「う、うわーーーーーーーー!」


 騒ぎが大きくなってきた。

 俺は衛兵を見つけ次第、殴り殺しながら、ギルドを後にした。

 外で待っていたパートナー、アリシアが心配そうに俺を見上げてくる。


「レイジ様……何かトラブルでも?」

「ギルド長に殺されそうになった。返り討ちにしたがな」

「そうですか、レイジ様に逆らうなんて愚かな……」

「ふん。いまごろ地獄で後悔しているだろうよ。いくぞ。もうこんな都市に……」


 そこで俺はふと思いついた。


「いや待てアリシア。ダンジョンにいくぞ」

「ダンジョン? なぜですか」

「身を隠すにはダンジョンの最深部が一番いい。それに、この都市は俺に喧嘩を売った。ダンジョンコアを抜き出して、ダンジョン都市としての財政を破綻させてやる」

「それはいいアイディアです」

「そうだろう。いくぞアリシア。俺に歯向かうとどうなるか教えてやる」


 俺とアリシアはダンジョンへと向かった。

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