第5話 前兆と新たな誓い

 アーサーが前に出ると構えた。その後ろではフレデリカが目を閉じ、手を前で組み、集中しだした。今からやろうとしているのは自分の知っている人に声を届ける中級魔法≪エコーオブソウル≫だ。




「お願い。クリス。キサラ。応えて」




 フレデリカの体から白い光が上空に舞ったと思ったら何かに当たって霧散してしまった。




「えっ! なんで」


「どうしたの。フレデリカ?」




 アーサーが聞いてきたけど、私はそれに答える余裕はなかった。それほどにショックの出来事だった。




「おい、戦いの最中によそ見とはいただけないなぁ」




 リーダー格の男が振りぬいた拳から風圧が襲ってきてアーサーは大きく吹っ飛ばされて樹々をなぎ倒してようやく止まった。




「アーサー!!!!!!」




 呼びかけるが全く返事がない。




「い、今のは風圧の拳ウインドナックル。冒険者でも拳闘士がもっとも得意とする格闘戦術」


「ほぅー、知ってたか。この技は風の魔力を拳にまとわせ、勢いよく振りぬくと風の風圧が相手に襲い掛かり気づいた時には吹っ飛ばされるってわけだ。まぁ、直線状にしか飛ばないから左右に避けるか魔力を全部防御に回せば防げるだろうが、この技は予備動作がない。だから、事実上は避けれない。まぁ、噂に聞く魔法剣士様は別だろうけどな」




(魔法剣士様って、まさか・・・・・・)




「あとは、姫様だけだぜ。どうする? さっきやろうとしていた魔法をもう一回やってみるか?」


「いいの?」


「ああ、かまわないぜ。まぁ、無駄だろうけどな」




 リーダー格の男は余裕綽々の態度である。それを気に入らないフレデリカはもう一度、言霊の魂エコーオブ・ソウルを唱えた。だが、先ほどと同じように霧散してしまった。




「どうして・・・・・・」


「お前のやろうとしてることは声を飛ばして連絡する魔法のようだな。それで助けを呼びたいんだろうけど無駄だ。あれを見な」




 リーダー格の男が指さす方を見るとこの高台を包み込むようにドーム状の薄い膜が展開されていた。




「何これ」




「これはな、この辺りを結界で遮断した。この中ではいかなる音も外には聞こえないし、外からは見えない。魔法も結界を破壊するほどの攻撃力がないと意味がない。お前ら、ガキのレベルじゃ到底それもかなわないだろうけどな」




「そんな・・・・・・」




 私は膝をついてこの状況はどうしようもないことを悟ってしまった。さっきまでいた取り巻きが私を捕まえようと近づいてくる。もうどうしようもない。助けて――レオス!


 と、思った時、突然取り巻きが吹っ飛んだ。


 何事と後ろを振り向くとアーサーが起き上がっていた。ただ様子がおかしい。ものすごい黒い魔力がアーサーから吹き荒れている。その醸し出している雰囲気で息ができないでガチガチ震えて尻もちを着いてしまった。




「ア、アーサー?」




 私の声が聞こえてないのか横を素通りしてリーダー格の男の前に歩いて行った。




「な、なんだ。てめえ。さっきのガキと雰囲気が違うな。何者だ」




「我は・・・・・・ウゥゥ、オオオオオオオオオオオオオオオオアアッ!!!」


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」




 私はアーサーの魔力の渦に吹き飛ばされた。


 フレデリカは体を高台の壁に打ち付け気を失ってしまった。


 アーサーからさらに魔力が噴出し、地響きが起き、張られていた結界が砕け散った。だが、アーサーは吹き出る魔力に体が耐えられなかったのか、全身から血を吹き出し、倒れてしまった。




「お、驚かせやがって。結界も破壊されたか・・・・・・だが、もう終わりだ。人が集まる前に姫様を奴隷商に引き渡す。だが、このガキは危険だ。今のうちに殺すとするか」




 リーダー格の男は懐からナイフを取り出しとどめを刺そうとしたところで顔面を何者かに蹴られて備え付けのベンチに突っ込んだ。




「くそ~、いてーな、誰だ?」




 リーダー格の男は蹴られた頬をさすりながら起き上がり前を見据えた。すると、高台の入り口に少年が立っていた。




「よくも、俺のだちをやってくれたな」








「何だてめえは。こんなことをしてただで済むと思ってるのか?」




「それはこっちのセリフだ。よくも二人をやったな。ただで済むと思うなよ」




 俺は、身体強化の魔法をかけ、姉ちゃん直伝の炎系魔法を手のひらに集めて集中すると、剣の形になった。魔法剣を使えるのはその系統の熟練度をレベル二十に達しないといけない。俺は、毎日姉ちゃんにしごかれていたからギリギリこのレベルに達していた。だが、炎系以外は熟練度が全然足りないので、この炎の剣でどうにかするしかない。




「ほお~、その年でもうそれを扱うか――なら、手加減なく終わらせるぞ」




 そう言うと、リーダー格の男は持ってたナイフを逆手に持ち呪文を唱えるとナイフに白いオーラのようなものが纏わりつき、こギザミに震えていた。




 二人が構えた時、側面に花火が打ちあがった。開始時間になったのだろう。だが、二人は集中力を切らさなかった。






 三発目の打ち上げ花火が合図だったように、二人は、動き出した。




 レオスは、炎の剣を上段から振り下ろす。それを相手は紙一重で交わし、避けざまにナイフを振り下ろしてきた。それを炎の剣で受け止めた。拮抗した状態のナイフから振動が響き渡りナイフが食い込んできた。




「どうした、ガキ。この程度か?」




 みるみるナイフが食い込んできて、レオスは片膝をついて耐えるので精いっぱいだった。


 ナイフが襲い掛かるのも時間の問題だ。




「クッソ―!!! ファイヤーボール」




 レオスは左手でファイヤーボールを放った。




「おっと。 俺を遠ざけるとはやるじゃねえか」




 リーダー格の男はとっさに、後ろに飛びのいて躱した。




 レオスは立ち上がると、息を整え、左手からもう一本の炎の剣を出して二刀流になった。




「ほう~。まだそんだけの力があったか。その年にしては大したもんだ・・・・・・だが、それだけにこの先成長したお前は危険と判断する。だから、ここで、死ねぇ~!!!」




 リーダー格の男が振り下ろしたナイフをレオスは炎の剣をクロスして受け止めた。先ほどとは違ってパワー負けもしていない。




「あめーよ」




 リーダー格の男は防御してがら空きになったレオスの腹におもいっきりけりを叩き込んだ。


 レオスは勢いよく吹っ飛び樹々をなぎ倒して高台の中央にある見だし台にぶつかり止まった。だがそのせいで見だし台が崩れ、花火を見ていた人もさすがに気付いたのか、下の方が騒がしくなってきた。




「もう終わりだな。下が騒がしくなってきた。姫様を連れていくぜ。命拾いに感謝するんだな」




 そう言って、反転した男の後ろから、ガラガラと音がし、レオスが立ち上がった。




「ゴホッ・・・・・・ゲホッ・・・・・・はぁはぁはぁ・・・・・・」




 レオスは一度は立ち上がったがすぐに膝をついてしまった。




「ガキ、お前はよくやった。そのまんま寝てろ。さもないと次は殺す」




 次の瞬間、




「へぇ~、誰が誰を殺すって?」




 さっきまで男が立っていた場所にフレイムアローが降り注いでいた。




「グハァァァァァァ!!」




 レオスの前に一人の少女が立っていた。






 私は、王城でキサラと花火を見ながらティータイムに興じていた。すると、突然脳内に、魔力の乱れとともに姫様から『レオスがやられちゃう。助けて』と響いてきた。この魔法はエコーオブソウル。そんだけ危ないことが起きてるに違いない。残っていた紅茶を一気に飲み干すとキサラと全速力で駆け出した。私は、索敵魔法≪サーチ≫と遠くまで見渡せる≪暗視≫を使った。すると高台に反応があり、そこに向かうと今、この瞬間に我が弟レオスが今にもやられそうな光景が見えた。とっさに≪フレイムアロー≫を放ち、敵に直撃させた。完全な不意打ちをし、一瞬我を忘れて、攻撃をして、私の騎士道に反するが目をつむろう。我が愛しの弟、レオスのために。








俺は息も耐え耐えに、前方に目線を向けると




「姉、姉ちゃん」


「レオス、よく頑張ったわね。あとは姉ちゃんにまかせなさい」


「俺のことよりフレデリカとアーサーを・・・・・・」


「二人は大丈夫よ」




 俺は二人の方を見ると、フレデリカのそばに見慣れたメイド服が見えた。キサラだ。




「姫様。遅くなってすいません」




 キサラはフレデリカの様子を見ると目立った外傷はなく魔力欠乏症で一時的に気を失ってるようだ。いずれ目が覚めるだろう。


 フレデリカを安全なところに運ぶと次はアーサーの様子を見に行った。


 見ると全身傷だらけだが、そのほとんどが治癒していた。




(この様子なら回復魔法をかける必要ありませんわね・・・・・・ただ、魔族の残り香みたいなものが、まさか!?)




 キサラはアーサーの傷口からでている黒い瘴気に気付いた。この特徴は魔族が醸し出しているものに似ていた。これは、魔王と何か関係があるのかと感じ、あとで国王に相談すると決めた。




「レオス様、回復魔法をかけます」




 緑のオーラに包まれると見る見るうちに傷口が塞がっていた。




「キサラ、レオスをお願いね。私はあいつをボコボコにするから!」


「お任せを」




 優雅にお辞儀すると、俺に回復魔法を当てながらフレデリカのところに行った。


 フレデリカの容体を見ると何ともなさそうで安心したのと同時に悔しかった。フレデリカのことは守るって昔約束したのにこの低堕落、だが、今は、姉ちゃんの戦いを見るのは初めてなので何かを学べるかもしれないと思い、目を凝らして、見つめた。


 それを横で見ていたキサラは嬉しそうな顔をして、視線を前に向けた。








「おい、聞き間違いじゃなければなければ、今ボコボコにするっていたのか?」


「ええ、そうよ」


「・・・・・・クククっそうかそうか。まさか、こんなガキの、しかも女に言われるなんて、あまり大人を舐めない方がいいぜ!」




 リーダー格の男がクリスを殺気立った目で睨みつけた。


 クリスは、身体強化を施し、手のひらから、炎の剣をだし、真っ赤な長い髪から炎がほとばしっていた。




「ガキなんて失礼ね。これでも私は十三歳よ。立派なレディだわ」


「そいつは失礼したな。では、いっぱしの剣士とみて手加減なしでいく」


「お好きにどうぞ」




 二人は武器を構えて、身構えた。




 クリスは、居合切りの要領で剣を一閃すると、炎の刃が飛んで行った。リーダー格の男は落ち着いてナイフを下から上に切り上げて炎の刃を弾き飛ばした。その隙をついてクリスは、背後をついたが、いつの間にか持っていた黒刀で防いでいた。


 クリスは、後ろに飛び、一定距離をとった。




「まさか、こいつを抜く羽目になるとわな。こいつはいわくつきでな。相手の使った魔法を吸収して全部自分の力に変えてしまう。これで、お前は魔法が使えない。ここまでだ」




 クリスは、落ち着いて分析した。




「そんな能力にはリスクもある。たとえば許容範囲を超える魔法をぶち込まれたら刀が耐えきれなくなって、壊れてしまうとか、違う?」


「ご明察だ。だが、そんだけの魔力があるかな」




「その心配には及びませんよ。クリス様は、巷ちまたで噂の魔法剣士様ですから」


「ちょ、ちょっと、キサラ」




 キサラが言葉を挟んできた。その横ではレオスが驚いた顔をしてるじゃない。今まで、黙ってたのに、あとでキサラに文句を言って憂さ晴らしをすと心に誓った。




「なに、魔法剣士だと。冒険者として、一線で活躍して、通った道には魔物の死骸が転がって、その光景が地獄絵図になって、それを見た魔物どころか同伴した冒険者にもトラウマを植え付けるっていう魔法剣士がこんなガキ・・・・・・!?」




 リーダー格の男はキサラから目線を戻し、目の前のクリスをみて困惑した。まさか、噂に聞いた魔法剣士がこんな年端もいかない少女とは思わなかったからだ。きれいなバラには棘があるっていうことだろうか・・・・・・




「また私のことをガキって言ったわね。もう許さないわよ。あの世に行って後悔するのね」




「・・・・・・これはいけませんね」




 キサラが防御結界を高台に何重にも張った。


 キサラが防御結界を張ったのを確認するとクリスは、先ほどまでのはお遊戯と思わせるほどのものだった。




 クリスは、剣を振り下ろしたが、またもや黒剣に防がれたが、ピキッとヒビが入りリーダー格の男は後ろに飛びのいた。




「な、なんだと。貴様! 何をやりやがっ――!?」




 クリスの剣を見るといつの間にか形態が炎系から氷系になっていた。




「貴様、氷系統の魔法も扱えたのか。だが、魔法ならなぜ吸収しできない」


「その剣が偽物なのか、私が強すぎたってことじゃない」




 クリスは氷の剣に炎を当てて蒸発させると、辺り一面、霧が発生し、クリスを包み隠した。




「それで勝ったつもりか。≪サーチ≫・・・・・・な、何だと!?」




 リーダー格の男はサーチを発動させたが、クリスはおろか、高台にいる誰の気配もかからなかった」




「言い忘れてたけどいかなる索敵魔法もこの霧の中では無力。この戦いももう終わらせましょう」




「く、まだだ」




 リーダー格の男は自分の周りに防御魔法を仕掛けて次の攻撃に備えたが、築いた時には自分の視界が地面を見ていた。




「え!! いつの間にやられたんだ」




 クリスが近づいてきたその手には氷の弓矢を持っていた。




「そうか、そいつにやられたのか。だが、俺の急所が頭だと気づいてたってことは人間じゃないとわかってたな。いつからだ」


「最初からよ。これでも結構な修羅場を潜り抜けてきた自負があるわ。人間と魔物の区別くらいつくわ。それに霧で視界を消したのは魔物とはいえ、見た目、人間の首が落ちるところなんて弟にみせたくなかったのよ」


「そうか・・・・・・最後に聞かせろ。レベルはいくつだ?」


「六十八よ」




 リーダー格の男は一瞬驚いた顔をしたが、どこか納得したのか、




「そいつは勝てないわけだ。分かってたら、ほかの連中もつれてきたのによ」




 リーダー格の男は塵になって消えていった。








 俺たちの前に霧が発生したと思ったら何も見えなくなり、戦いの行方がわからなくなった。不安になる俺の肩をキサラがつかんで、見えているのか、状況を教えてくれた。どうやら姉ちゃんが勝ったようだ。




 霧が晴れると姉ちゃんがこちらに近づいてきた。




「終わったわ」


「お疲れさまでした。クリス様」




 姉ちゃんは俺を見るとなんか不安になってるような顔をしてたが、俺はこんなにすごい姉ちゃんなんだと分かって嬉しさが込み上げてきた。


 俺は顔を上げると、




「すげえよ、姉ちゃん!!」




 クリスは驚いたように目をパチパチすると、




「す、すごいって何が?」


「姉ちゃんが、こんなに強いなんて、たまに冒険者として、魔物を倒しに行ってるのは知ってたけど、予想以上だった。さっきの奴もあっさり倒しちゃうんだもんな」




 今、聞き捨てならないものを聞いた気が




「レオス、あなた、さっきの戦いが見えてたの? 霧で何も見えなかったはずだけど・・・・・・」


「見えなかったけどキサラが教えてくれた」




 私はキサラを一睨みしたが、そっぽを向かれてしまった。「はぁ~、しょうがないわね」と呆れているとレオスがお願いしてきた。




「お願いだ。またさっきの奴みたいな現れた時に今度は二人を守れるようになりたい。もっと、強くなりたいんだ。そして、いつか姉ちゃんを超えたい!」




 レオスの真剣な目を見て、




(そういう目のできるのね。いつのまにか男になっちゃって。私の戦いを見せたかいもあったわね)




「分かったわ。でもこれからは、厳しくいくからね。キサラも手伝いなさい」


「いいんですか? 兄弟で仲良くしてるところに私がお邪魔しても」


「い、いいわよ!!」




 クリスは耳が真っ赤になり焦っていたが、レオスは何もわかってないようにポカーンとしていた。




 (いつ、この弟は姉の思いに気付くのやら)




「分かりました。私としても姫様を守れるようになられると安心できますし」


「二人ともありがとう」




 レオスがガッツポーズして喜んでいると、フレデリカが起き上がった。




「あれ? 私はここで何を――あ、そうだ。突然変な人たちに襲われて、それで、アーサーが・・・・・・」




 レオスがフレデリカの両肩に手を置いて宥めるように


「大丈夫だ。姉ちゃんが全部やっつけてくれたから」


「レ、レオス!?」




 フレデリカは今気づいたように俺を見て、その後ろにいる二人の存在に気付いたようだ。




「ご、ごめんなさい。私が二人を護衛もつけずに人気のないところに行ったから。これからは王族らしくするから。だから、レオスはこんな私なんか気にせず、アーサーとふたりで、ウッウ・・・・・・」




 ジャリッ!!




 レオスの手に持っているものを見るとさっき露店で見た三日月のアクセサリーを持っていた。欲しかったが、こんなものが私に似合うわけがないと思って、レオスに誤魔化してしまった。




 レオスはアクセサリーをフレデリカの首に着けると




「そんなこと言うなよ。俺はフレデリカと一緒じゃなきゃヤダ。それにやられたのは俺たちがふがいなかったからだ。だから、もう、お前にこんな顔をさせなくていいくらい強くなってやる」


「・・・・・・どうして、私にそこまで付き合ってくれるの?」


「一度しか言わないからよく聞けよ」




 フレデリカが頷いたのを確認して、




「お前のことが好きだからだよ。だから、ほうとけないんだ。いつも、笑っててほしいんだ」




 フレデリカは一瞬呆けた後、みるみる顔が赤くなった。




「だから、お前のことを守らせてくれ」


「レオス~~~」




 フレデリカは感極まって俺に抱き着いてワンワンと泣き続けた。俺は、フレデリカの背中に手をまわしてると、不意に声がかかった。




「いやー、おいしいところを持ってかれたね。レオス」


「アーサー、起きたのか。いつから聞いていた?」


「お前のことが好きだからだよってところからだよ」


「ああ、一番恥ずかしいところじゃないかー!!」




 アーサーに笑われながらフレデリカが落ち着くのを待っている俺は気づいていなかった。アーサーを睨む様に見つめている二人を。




「アーサーから感じるこの魔力の波動は・・・・・・」


「やはり、気づきましたか。クリス様」


「ええ、これでも魔物と人間の魔力の違いを感じるぐらいわね・・・・・・でもこの質は今まで感じたことがないぐらいだわ」




 クリスはアーサーの奥底から感じる魔力でどうにかなりそうだった。震えそうになる足をこらえつつキサラに聞いた。




「もしかして、これが祖先から言い伝えられている・・・・・・」


「はい、そのまさかの可能性が高いでしょう。王城に戻り次第、国王に報告して、文献に何か書いてあるかもしれませんから、書庫を調べようと思いますが、クリス様はどうしますか?」


「私もお父様とお母様に報告次第、国王との話し合いに参加するわ」


「ではそのように」




 キサラは一足先に戻った。さすがは元アサシンで忍びだっただけはある。もう気配が消えた。




 クリスは、前ではしゃいでいる三人のこれから待ち受ける過酷な運命を呪わずにはいられなかった。

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