第4話 姫様を着け狙う者たち

 俺たちはあれから早食い勝負、釣り対決、飛んでくる的を魔法で撃ち抜く対決など様々やったが、アーサーには一回も勝てなかった。




「クッソー。何で勝てないんだ」


「たぶん、魔力はレオスの方が上だよ」


「単純に集中力が足りないのよ。わかったらクリスとの稽古もまじめにやることね」


「・・・・・・ちえっ、わかったよ」




 俺はアーサーならまだしもフレデリカにも小言を言われ始めたのでこの話題を打ち切った。




「もうすぐ、花火が打ちあがるころだから行こうぜ」


「そうだね」




 フレデリカはヤレヤレッて感じでため息をつくと




「いい場所を知ってるわよ。ついてきなさい!」


「偉そうに」


「・・・・・・ねえ、レオス。一応フレデリカはこの国の姫だからね」




 俺はアーサーの言うことを聞き流した。




 しばらく歩くとフレデリカがアクセサリーショップの露店の前に止まっていた。


 俺は、フレデリカが三日月の形をしたネックレスを見ているのに気付いた。




 値段は銀貨一枚か・・・・・・祭りの露店にしては高めだな。




「それが、欲しいのか?」


「えっ! そ、そんなことはないわ。ちょっときれいだから見てただけよ。そんなことよりも早くいきましょう。花火が打ちあがってしまうわ」


「あ、ああ・・・・・・」




 俺は、フレデリカに背を押され、その場を後にした。








 露店から数分歩くと見通しのいい高台に出た。




「ここからならよく見えそうでしょう」


「そうだね」




 その時、レオスは「ちょっと、トイレ」といってきた道を戻っていった。




「もう、トイレぐらいいっときなさいよ!」


「まぁまぁ、まだ時間はあるんだし、それにレオスのあれは今に始まったことじゃないでしょう」


「それもそうね」




 フレデリカとアーサーは近くのベンチに腰掛けようとした時だった。




「なぁ、俺たちも一緒に見ていいか?」


「だ、誰!?」








 レオスは高台から駆け下りて先ほどのアクセサリーショップに戻っていた。トイレに行くとはその場を抜け出すための口実だったのだ。




「おっちゃん。そこにある三日月のネックレスくれ」


「お、レオス。姫様にプレゼントか。さっき欲しそうに見てたもな」


「そ、そんなんじゃない」




 俺の言うことに「分かった。分かった」といって、渡してきたのでなけなしの銀貨一枚を渡した。




(あいつの喜ぶ顔が見えればやすいもんだな)




 おっちゃんが悲しんだような顔で話しかけてきた。




「レオス。お前には感謝しているんだよ」


「なんだよ、突然に」




 俺は、ネックレスをポケットに仕舞いながら聞いた。




「お前は覚えてるかどうか知らんが、今から、三年前、后様が亡くなっただろう。それから姫様は、いつもみたいな元気もなく、表情も暗く、ついには王城に引きこもり、そのお姿も見なくなった。姫様からしたら母親を亡くしたのだから当然のことなのだが、その姿にわしら、民衆は自分の体が引き下がれるほどの思いだった。だが、それから、まもなくしてお前とアーサーが姫様を無理やり外に連れ出してくれた。それからお前たちと一緒にいるうちに昔みたいにだんだん笑顔が戻ってきて、今ではよく笑うようになった。お前たちが姫様と一緒にいてくれたおかげだ。ありがとう・・・・・・」


「俺は、何もしてないよ。フレデリカが勝手に立ち直ったおかげだ」




 おっちゃんは「そうか」と笑った。


「おっと、話し込んでる場合じゃないな。もう、花火が打ち上がる時間だろう」


「そうだった。トイレと言って抜け出してきたんだった。早く戻らないとフレデリカに何言われるか・・・・・・じゃあな、おっちゃん!」




 俺は露店を後にすると走って高台に向かった。もうすぐ頂上が見えだすところで、




「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」




 急に聞こえた悲鳴に足が止まった。




「今の声はフレデリカ! 何かあったのか」




 俺は強化魔法を足にかけて、一気に高台を目指した。










 時はちょっと遡り、レオスが露店にいた頃、




「なぁ、俺たちも一緒に見ていいか?」


「誰!?」




 私たちが振り向くと、如何にも怪しそうな男たちが立っていた。




「わ、私たちに何の用? これでも私この国の姫よ」




 私は怖かったが、ここにはアーサーもいる。それに私はこの国の王女になるのだからと勇気を振り絞って質問した。




「だから言っただろう。俺たちと打ち上げ花火みようって」




 顔に傷がある屈強そうな男が答えた。見た感じこの中のリーダー格のようだ。それに醸し出してる雰囲気がギルドにいる冒険者みたいな感じだ。




「とても信じられないわね。あなたたちから邪悪な匂いがプンプンするのよね」


「・・・・・・アハハ、ギャァアハハハッ!!」




 私の言葉に、男たちは頭を抱えて笑った。




「何がおかしいの?」


「何、子供だと思ってたら、人を見る目はあるようだな。俺たちはある人から頼まれてな。姫様なら高く売れそうだ。後そこのお前、姫様と一緒にいたのが運のツキだな。お前もなかなかの値段で売れるだろうな」




 リーダー格の男がアーサーを人睨みすると、あまりの恐怖に尻もちを着きそうになったが、何とかこらえた。だが、足の震えが止まらない。




「お前も姫様と一緒にいるだけあって気構えだけは一人前じゃないか」


「私たちがおとなしく捕まると思ってるの」




 私の言葉で男たちの雰囲気が変わった。




「抵抗したいならすればいい。だが、その時は手足の一本ぐらい折れるかもしれんぞ。こっちには凄腕のヒーラーがいるからな」




 私は今使える魔法はあまりない中でこのピンチを切り抜けるにはどうしたらいいか、考えた。この場所は高台に位置し、王城からもよく見える。こういう時のためにお父様から知ってる人にテレパシーを送る魔法を教えられていた。だが、この魔法は集中する時間がかかる。だから、味方が複数いてくれないと厳しい。だから、アーサーに時間稼ぎを頼むことにした。(なんでこういう時にいないのよ。レオスのバカ!) 私は心の中で愚痴った。




「アーサー。私は今から魔法で声を載せて王城に助けを求めるわ。今の時間なら、キサラかクリスがいると思うの。だけど、集中しないといけないから何とか時間を稼いで、お願い」


「ぼ、僕があいつらを・・・・・・そうだね。いつもレオスと一緒に訓練もしてたんだ。やってみるよ。それにレオスが異変に気付いてくれるかもしれないからね」

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