㊱ リライト講座その1 メモを参考に、構成を変えてみる。

(ご挨拶)


▽こんにちは! ゼロから講座にお越しいただきありがとうございます!

 この講座は、『小説を始めたばかり』or『小説をこれから始めたい』という方へ向けてちょびっと役に立つノウハウを紹介しつつ、尾崎ゆうじと一緒にゼロから一緒に楽しく小説を書き上げましょうという企画です。


「けっこう参考になるじゃん」と思った方は、講座や尾崎ゆうじのフォローをお願いします。


(2020.10.25からテキストのみの講座になりました。過去のyoutube動画に関しては、追って少しずつ文字起こししていきます──と言っていたのですが、かなり大変な作業だなということを痛感したので、テキスト化は相当量の要望が無いかぎり、ゆるゆると放置する可能性が高いです。少しクオリティを下げてのテキスト化は、ちょっと考えています) 


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(今日の講座)


『20201120 準備で残したメモを参考に、実際に構成を変えてみる』



 今日は、先日紹介した手順の②である、第2リライトの過程について、できる範囲で紹介していきたいと思います。


 じつのところ、9560字から8247字になっただけですので、まだ途中なのですが、とりあえず一旦最初から最後まで走りました。恥ずかしながらその経過をお見せしたら、何かみなさんお学びになったりならなかったりするのかな、と思った次第です。


 誰かに情報提供しよう、という立場にならなければ、絶対やらないことですね。非常に良い経験です。しかも、普通は誰もこんなの見ないわけで。でも今は、見ている人たちがいる。面白いです。プロの作家さんたちのリライト風景なども、覗いてみたいものですね。


 さて、今回もそこそこ削ったつもりではありましたが、まだ足りませんね。


「比較的、部分を残しながらも改訂してみて、こんな感じになったけど、じゃあこれからさらに削るとするとどこかな」と、ドライに読者視点を交えつつ、これからも削っていくことになるようです。果たしてどうなることやらですが、こういう立場でやっているからこそ、普段はできないような客観視ができるような気もしますね。


 まあ、『削る』というとネガティブな感じがするので、磨き上げるというか、ぎゅっと絞ってあげる感じに言い換えるとよろしいかも。



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② 2回目のリライト(やり方)


 もう一度読み直しつつ、本文に手を加えていく。加えていくのは、細かい文章よりも構成面や、シーンの場所、時系列、キャラの行動、台詞、シーンごとの引っ張り要素の構築など。


 ※細かい文章の一例としては、『てにをは』や説明部分の書き直し、描写の修正、会話の面白さ追求など。



そのまま2回目のリライト後の全文(途中だけど)を、念のため資料にアップしておきます。また少し置いてから、どこを磨き上げていくか考えていきます。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054934956287/episodes/1177354054960256096


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(以下、リライト実践)


 けっこう細かい部分も変更していたりしますが、以下では主だったリライト内容と、そうした理由を解説しています。


 B……ビフォー  A……アフター



B『 木曜日の夕方、すでに美沙子先輩と一緒に、近所のコンビニへ立ち寄ったら、案の定──先輩が店員さんに絡みはじめた。』


 ↓


A『 金曜日の夕方、すでに美沙子先輩と一緒に、近所のコンビニへ立ち寄ったら、案の定──先輩が店員さんに絡みはじめた。』


(説明)

 前は木曜日の設定だったのですが、金曜に変更。のちに先輩とこのコンビニに寄った日のことを、『イレギュラーなこと』と説明することになったので、回りくどいかなと思ってやめました。これによって、前回よりも先輩が動きやすくなるようにも配慮しています。


 ↓その結果として下記のように次の文章が変わります。


B1『 その翌日も、大学の帰りにコンビニへ寄った。今日は1人。毎週金曜日はコンビニ飯で済ましていいと、自分に許可を出している。昨日はイレギュラー。講義が終わった後にゼミの集まりがあって、そのあとですぐに美沙子先輩から連絡があったので、料理を作る時間なんて無かったのだ。

 まあ、それはさておき、毎週金曜日に例のコンビニに寄っているのは事実だ。それだけは前もって言っておく。

 それと、ほかに目的もある。』


 ↓


A1『 その翌週の金曜日。大学の帰りに例のコンビニへ寄った。今日は1人。毎週金曜日はコンビニ飯で済ましていいと、自分に許可を出している。美容と健康に気を遣いたいものの、毎日自炊は本当に大変だから。

 こっちが、私の平常の週末なのだ。』


(説明)

 美沙子先輩が飲みに誘ったあとの説明と、プラスアルファでいつもの金曜日のことを紹介していたので、1週分の金曜日を捨てて、その無駄を排除。


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B2『「あ、ありがとうございました!」

 その声を背中に受ける。昨日とちがって事務的には感じず、むしろ働きたての新人みたいな、緊張の色を含んだ声だと思った。

 大胆なことしちゃったかな。余計なこと言って、あれじゃ結局、私も美沙子先輩と一緒じゃない?

 アパートへ向かう道すがら、私は小学生の男の子みたいに、片手に提げたビニール袋を振り子のごとく回した。先ほどの自分の行為を思い出すと、胸の奥がきゅっとなるような気恥ずかしさが込み上げたからだ。何かで発散しないと、うわーって、叫び出しそうだった。

 そんなこともあって、翌週の金曜日まであのコンビニには近づかないことにした。

 金曜日に行けば望月くんと会える。

 なぜだろうか。私はのんきなことに、そう信じて疑わなかった。

 ちょっと考えれば、それが不確かなことなのだと、すぐ気づいただろうに。』


 ↓


A2『「あ、ありがとうございました!」

 その声を背中に受ける。昨日とちがって事務的には感じず、むしろ働きたての新人みたいな、緊張の色を含んだ声だと思った。

 大胆なことしちゃったかな。余計なこと言って、あれじゃ結局、私も美沙子先輩と一緒じゃない?

 店を出て、自動車事故が多いという見晴らしの悪いその駐車場を抜けたのち、私は小学生の男の子みたいに、片手に提げたビニール袋を振り子のごとく回した。先ほどの自分の行為を思い出すと、胸の奥がきゅっとなるような気恥ずかしさが込み上げたからだ。何かで発散しないと、うわーって、叫び出しそうだった。

 そんなこともあって、翌週の金曜日まであのコンビニには近づかないことにした。

 金曜日に行けば望月くんと会える。私はのんきなことに、そう信じて疑わなかった。

 なんの根拠もないのに。』


(説明)

 相手役の望月が主人公を気にするようになった理由として、事故という設定を後半に設けた。そのため、リライトにより伏線を設けることにした。文字数は増えたよね。


 最後の引き付けの文言、すこし変えてます。リライト後には『なんの根拠もないのに』と書いてますが、これも削っていいな。


 ここはそこまでひきつけを強めることもないかと思い、じゃあ字数を削ろうという判断を下しました。


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B3『 次の金曜日はサークルの活動があった。とはいってもゆるい映研サークルで、大学の小講義室をひとつ借りて、映画などの映像作品をみんなで観るだけ。それでも備え付けのスクリーンを使うので、軽いルームシアターだ。カーテンも遮光性が強い。きちんと準備すればそこそこ迫力がある。難点は防音式の環境になっていないことか。

 美沙子先輩から「これから呑みに行こうよ」と誘われたけど、今日は適当な理由をつけて断った。悪い人じゃないのだけど、しばらく酒の席はご遠慮したい。

 いかにも用事があるように、そそくさと大学をあとにした。そしてコンビニに立ち寄った。』


 ↓


A3『 次の金曜日はサークルの活動があった。とはいってもゆるい映研サークルで、大学の小講義室をひとつ借りて、映画などをみんなで観るだけ。それでも備え付けのスクリーンを使うので、軽いルームシアターだ。

「これから飲みに行かない?」

 すでにほろ酔いの美沙子先輩から誘われたけど(校内だろうと映画鑑賞の時はビール必須らしい)、今日は適当な理由をつけて断った。悪い人じゃないけど、しばらく酒の席はご遠慮したい。

「ええー、あたし最近気になるひとできたから、相談したかったのにー」

「すみません、また今度で」

 私はいかにも用事があるように、そそくさと大学をあとにした。

 そしていつものコンビニに立ち寄った。』


(説明)

 字数は削れていませんが、サークル活動の時の美沙子先輩の描写を入れました。あと、『最近気になる男が』という台詞を加えました。前者は美沙子先輩が以前の金曜日に出来上がっていた理由として加えたのと、後の展開による、『望月が主人公に対してアプローチをした理由』について、説明する相手を美沙子先輩に変更するため。


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B3②『「まあ、理由はいろいろあるんですけど──」

 温まったおにぎりを袋にいれる作業はてきぱきしているが、その返答の歯切れは悪い。

「いろいろ?」

 私がそう聞き返すと、彼は「はい、お待たせしました」とビニール袋を手渡しつつ、例の困った表情でこちらを見た。いや、ちょっと違う。もしかして、私の後ろに誰か──

「早くどいてくんね?」

 振り返った瞬間、どすの利いた声でそう言われた。

 そこに立っていたのは、いつぞや遭遇した金髪マスカラ強めの彼女だった。思いっきり睨まれて、舌打ちされた。

「ひっ! すみません!」

 私は慌ててその場を離れ「ありがとうございましたー!」という望月くんの声と共に店を出た。なぜあの人が店にいることに気づかなかったのかと思ったら、お客さんが店を出入りする際に反応する、ぴろぴろというチャイムが鳴らなかった。望月くんもぎりぎりまで気づいていなかったみたいだし、故障したのかも。

 あのヤンキー女に目ぇ付けられたらどうしよう。常連だったらどうしよう──!

 不安に駆られ、足早にアパートへ帰った。ようやく人心地つき、電気ケトルのスイッチを押して、味噌汁用のお湯を沸かした。くつくつと音がして、ケトルの口から白い湯気がのぼる。私はその間ルームウェアに着替え、お椀にインスタント味噌汁のを入れる。夕飯だけど、永谷園のあさげ。

 慣れたものだけど、まだ金曜日は数回目だ。実家を離れるのはちょっと心細かったけれど、自分の順応性に驚く。

 そういえば結局、望月くんがバイトしてる理由って何だったんだろう……。』


 ↓


A3②『「まあ、理由はいろいろあるんですけど──」

 温まったおにぎりを袋にいれる作業はてきぱきしているが、その返答の歯切れは悪い。

「いろいろ?」

 もう少し詳しく聞きたかったが、それは敵わなかった。いつの間にか、先ほどまで立ち読みしていた男が後ろに控えていたのだ。

 私はコンビニから退散しアパートへ帰った。私しか存在しない、小さくて静かな部屋。

 その部屋で味噌汁をすすり、おにぎりを食べた。具の梅干しの酸っぱさが、舌にしみる。

「いろいろ、ねえ……」

 普段ならスマホで動画を観たり、友達とラインしながら食べるのだけど、今日はそうせずに、望月くんのことを考えていた。先ほど話していた、バイトを辞められない理由についてだ。』


(説明)


 ヤンキー女を始末しました(合掌)


 私の最近のくせとして、モブ的に登場した特徴あるキャラに、ちょっとおいしい役割を与えるという驚き展開を作りたがる傾向があるのですが、その役割を美沙子先輩にするため、ここでは会話を切り上げる役目をモブな立ち読み客に移しました。


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B4『 ところがその日、コンビニに寄ったら、カウンター越しに望月くんと例のヤンキー女が、何やら仲良さげに話をしていた。私がそれに気づいたのは店内に足を踏み入れてからのことで、引き返すわけにはいかなかった。

 ヤンキー女は私の姿を認めるなり、早々に会話を切り上げた。私はすれ違わないよう横のレーンに逃げ、その場をやり過ごすことにした。ヤンキー女が去り際にこちらを見て、にやりと笑った気がした。怖……というか、何なの。私、目ぇつけられてるの?

 私はヤンキー女が店の外に出るのを確認するまで、ジュースの売り場を眺めるふりをした。

 なんだか嫌な気分だ。ビールでも買っていこうかな。いや、また望月くんを困らせるのも悪いし、やめとこう。

 というか望月くんとあの女って、ああやって会話とかする仲だったんだ。もしかして望月くんって、がタイプなのかな。だとしたら嫌だな……。そういえばあのヤンキー女も、最近はあの彼氏っぽい男と一緒に来てないし、別れたのかな。それで望月くんを?

 ……考えるの、やめよう。

 私はのろのろとおにぎりを手に取り、レジへ持っていく。

「あの人と仲良いの?」

 対応してくれた望月くんにそう尋ねた。彼はおにぎりをスキャンする手を止め、いつもの困り顔を見せた。

「えっと……まあ、はい。ちょっといろいろ相談に乗ってくれたりして」

「相談?」

 へえ、そんな深い仲なんだ。やっぱり、そうなんだ。

「けっこう良い人ですよ。……見た目は、アレですけど」

「ふうん」

 おいおい、フォローまでしちゃったよ。

 なんだよもう。

 何なんだよ、もう。

「……おにぎり、温めてね」』


 ↓


A4『 ところがその次の金曜日、事件が起きた。

 コンビニに寄ったら、カウンター越しに望月くんと誰かが、何やら仲良さげに話をしていた。私がその人物に気づいたのは店内に足を踏み入れてからのことだった。

 美沙子先輩だった。

「あ、春美じゃん」

 先輩は私の姿を認めるなり、明るい調子で手を振ってきた。私は反射的に、

「お、お疲れ様です」

 と会釈をしたが、数秒の間、その場で固まっていた。

 なんで、美沙子先輩がここに? 確かに今日はサークルは無かったけど……。

 先輩は笑顔で望月くんに手を振り、こちらへ歩いてくる。私の肩にポンと手を置き、

「事情はあとで説明するねっ」

 意味深にウィンクして外へ出てしまった。

「は、はあ」

 私は呆気に取られ、去っていく先輩の背中を見送ることしかできず、望月くんの顔も見ぬままに、ぐるりと遠回りをしておにぎり売り場まで歩いた。

 なんで先輩がこの店に。というか、なんでいつの間に望月くんとフレンドリーになってるの? 彼だって、私と話してる時よりも楽しそうだったんだけど。そういえば先輩、『最近気になるひとができた』とか喋ってたけど、それって……? そしてもしかして2人って……。

 美沙子先輩、モテないと思ってたのに……。

 私はのろのろとおにぎりを手に取り、レジへ持っていく。

「仲良くなったんだね」

 対応してくれた望月くんにそう尋ねた。彼はおにぎりをスキャンする手を止め、いつもの困り顔を見せた。

「えっと……まあ、はい。ちょっといろいろ相談に乗ってくれたりして」

「相談?」

 ふぅん。そういう馴れ初めか。だったら私だって──と思ったけど、こちらは週に1度、金曜日だけ。そのほかの日に先輩が何度も来ていたら、敵わないのか。

「……おにぎり、温めてね」』


(説明)

 ヤンキー女の描写をせずに済んだので、700字ほど削ることができたし、『モテないはずの3枚目女子』である先輩に、意中の相手を奪われた? という別の疑念やストレスを与えることができるかなと思ったので、変更しました。


 クライマックスでオチを作るまでには、やはり大きな山場として強いストレスは欲しいよね、という発想です。盛り上げて、高めていく感じでしょうか。


 とりあえず、主だったリライト結果の紹介は以上です。

 

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(これからの改訂案)


 まず本作は、掴みと舞台設定の1幕、主人公と相手役の交流の2幕、変化・引っ張りのための3幕、オチの4幕というざっくり構成になっています。(上記B1やA1などは、そういう意味です)それを利用して、次の磨いていくだろうポイントを挙げます。


(1幕)

 今回は、掴みの部分と舞台設定、あと相手役が魅力的に見えるように1幕に力を入れたので、リライトではほとんど手を付けていませんが、おそらくさらにリライトを進めるときには、この1幕をぎゅっと詰めて、必要最低限にすると思います。


(2幕)

 少し2人が距離を縮める部分で、望月くんを可愛く感じるように書きたいと思った部分。ニマニマ系を好む読者へのサービスという印象の強い部分なので、最悪の場合ごっそり削って、伏線などは1幕と3幕に割り振るかも。つまり序破急の3幕構成になると。


(3幕)

 3幕もただのサービスに感じるけど、こちらの方が重要。おあずけを喰らった主人公が、後に自分の気持ちをあらわにしてしまい、同時に意識していることを自覚する場面だから。


 あと、本作のテーマを描く側面もあるので、やっぱり結構重要。そこまで削れないかも。


(4幕)

 クライマックスと、ハテナ部分の回収。文字数を計算したら、3000字ありました。全体を6000字と考えたら圧倒的にボリュームが大きい。でも前半を膨らませすぎるよりは、後半でぎゅるぎゅるとうねらせた方が作品としては面白いので、じゃあ理想としては2000字、最低でも2500字くらいまで減らせないかなと考えています。


 方法としては、台詞での説明を減らして地の文で省略する箇所を増やしていく感じだと思います。1幕についても、そうする余地はありそうですね。


 というわけで、今日のところはここまで。


 またお会いしましょう。お疲れ様でした!



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創作コーチ


尾崎ゆうじ


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(note)


 https://note.com/ozaki_yuji

 


(youtube)


https://www.youtube.com/channel/UCu54sC6pviWQUC1eA6dqDKg/featured?view_as=subscriber 

 『ゼロから講座』の過去動画はこちら。書評動画もあるよ。



(stand FM)


https://stand.fm/channels/5f810a3bf04555115d146941 


 初~中級者向け。企画で語りきれなかったコメントの深掘り発信を音声で『気になるどーラジオ』


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