㉘『不安、不穏で読者の気持ちを揺さぶってみる』

(ご挨拶)


▽こんにちは! ゼロから講座にお越しいただきありがとうございます!

 この講座は、『小説を始めたばかり』or『小説をこれから始めたい』という方へ向けてちょびっと役に立つノウハウを紹介しつつ、尾崎ゆうじと一緒にゼロから一緒に楽しく小説を書き上げましょうという企画です。


「けっこう参考になるじゃん」と思った方は、講座や尾崎ゆうじのフォローをお願いします。


(2020.10.25からテキストのみの講座になりました。過去のyoutube動画に関しては、追って少しずつ文字起こししていきます。ご不便おかけしています)


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(今日の講座)


 今日も私の書いている『5分コン』用の短編から。


『引っ張り』に関しての応用的なお話になります。応用という言葉が適切かはわかりませんが、要するに読者の興味を作らせる工夫についての話です。ちょっと長めですが、一部分だけだと理解してもらえないのではと思い、その箇所を全部引用します。


(資料の本文の『==講座==』という部分が今日取り上げた引用箇所です)

 リンクhttps://kakuyomu.jp/works/1177354054934956287



引用

『 そんなこともあって、翌週の金曜日まであのコンビニには近づかないことにした。

 金曜日に行けば望月くんと会える。

 なぜだろうか。私はのんきなことに、そう信じて疑わなかった。

 ちょっと考えれば、それが不確かなことなのだと、すぐ気づいただろうに。


 次の金曜日はサークルの活動があった。とはいってもゆるい映研サークルで、大学の小講義室をひとつ借りて、映画などの映像作品をみんなで観るだけ。それでも備え付けのスクリーンを使うので、軽いルームシアターだ。カーテンも遮光性が強い。きちんと準備すればそこそこ迫力がある。難点は防音式の環境になっていないことか。

 美沙子先輩から「これから呑みに行こうよ」と誘われたけど、今日は適当な理由をつけて断った。悪い人じゃないのだけど、しばらく酒の席はご遠慮したい。

 いかにも用事があるように、そそくさと大学をあとにした。そしてコンビニに立ち寄った。

 ──なのに、望月くんの姿は店内になかった。今日代わりにいたのは、妙に髪の長い男性店員だった。大変失礼ながら「お前じゃないんだよなー」と舌打ちしてしまった。ごめんなさい。


 その次の週も、望月くんはいなかった。

 どうしたんだろう……?

 不安になり、例の長髪店員に尋ねてみようかと思ったけど、恥ずかしくてやめた。接客態度もダルい感じで、話しかけたくならない。望月くんとは大ちがいだ。

 コンビニのバイトは続かないって言うし、もしかして、やめちゃったのかな……?

 私は急に寂しさが込み上げた。いつものようにおにぎりを買って帰ったけど、全然おいしく感じなかった。』



 この箇所は「作品全体の半分よりちょっと先」あたりの地点だとイメージしています。通常のエンタメ作品であれば、おおむねこの辺で『ストーリー全体で見た時の大きな展開』が生まれるような仕掛けが施されていることが多いです(映像作品の用語で言うと、ミッドポイントと呼ばれるものですね)。もちろん作品にもよりますけど、優れた作品の大体は、半分あたりの地点で大きな展開を見せたりします。


 というわけで、『そろそろちょっと何か起こしたいなー」という私自身の欲求と、ストーリー構成としてそもそも考えていた展開との擦り合わせをするような感覚で、今回は『不穏』を生み出す構造にしてみました。(ちゃんと効果的にできているかは、リライトするまでわからないかも)


 イメージでいうと


『遊園地で女の子が楽しく遊んでいて、ふと気づいたら両親とはぐれてしまい、夢中になっていたことを後悔しつつ、両親を見つけるための大作戦を決行する』


 みたいなストーリーの物語があった場合の、『ふと気づいたらはぐれてる』という瞬間の「えっ……?」となるような感覚ですね。


 突然ふっと何か切り替わると、置かれた『状況の不確かさ』に対して不安を覚え、とりあえずそれからどうなるのか、追いかけたくなりますよね。


 特に私はそういう傾向が強くて、あまり興味の無い作品だとしても、途中で「え、ちょっと……」と不安にさせるような部分があると、とりあえず『そこからの帰結や生み出した理由』のようなものを確かめるまでは、ストーリーを追ってしまう気がします。


 そのため今回は、そういう人間の心理を利用してみました。


 この技術は、ストーリー構成の要所であれば、『書き出し直後、起承転結それぞれの転換地点』のどの部分でも活用可能です。ただし基本的には『本作は、こんな人物が登場するこんなストーリーです』という前提をあるていど読者と共有していなければ効果がないので、そこは注意です。


 あと、転→結のタイミングでも理論上は使えると思いますが、他の箇所で利用したときとはちがう効果になると思います。ちょっと今回は割愛しますが、その場合は『不穏』ではなく『焦燥』という感じの展開になるのことが多いのかなと思います(イメージしにくいですかね)。

 

 この短編においては前半部分で、


『コンビニ定員の望月くんのことがちょっと気になりつつある主人公の女の子が、果たして彼もまた自分のことをどう見ているだろうかと気にしている』


 という前提を構築したうえで、


『次の金曜日もそそくさとコンビニに行ったら、その望月くんがいない。そしてその次の週も……あれ? なんで? やめちゃった?』


 今までと違う展開にし(主人公にとってマイナスなこと)、何か空白を作るイメージで描いています。


 1度ならず2度までも、という感じにすると徐々に深刻さが増していきます。


 かといってトータルで悲しいエピソードにはしないので、次週で望月くんは店頭に立つことになり、主人公はほっとします。プラス、この『望月くん不在』が、これから徐々に個人的な対話を進めていくためのきっかけにもつながっていきます。


 コツとしては、


『その次の週も、望月くんはいなかった。』


 のように、事実をポンと投げ込み、それに対して主人公の『どうして?』とか『もしかして』というモノローグをしますが、その主人公にとってその出来事がどれくらいの大きさを持つのかを考慮しながら、長さや言葉づかいを調整していくことでしょうか。


 私自身、あとで読み返した時に「ちょっとおおげさな感じになってるかな」とか「不穏度がちょっと高めになってないかな」などを気にしながらチェックすると思います。


 もしも不穏感が強すぎた場合には、後のストーリーとのつながりにギャップがありすぎて、読者が違和感を感じてしまう場合があるので、その辺りの按配を考慮していけば、スパイスの効いた展開になるかなと思います。


 読者を揺さぶりながらも、ちゃんとつり橋を渡りきれるよう配慮する感じでしょうかね。


 もしご自身の作品に使えそうだったら、参考にしてみてください。

 

 こんな感じで、今日の講座は以上です。


 いかがでしたでしょうか。リクエストも受け付けてますので「こんな時どうする?」とか「こんな話がききたい」という要望ありましたら、お知らせください。



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(今日の作業内容)


 ・ちょっとだけ5分で読書コンの短編を進めました。


 進んだ内容は、↓のリンクを参照(日付とナンバーに注意)。

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054934956287

 



 

 ◆いつも『今日の学び』をnoteに書いていたのですが、時間がかかってキツイうえに、そんなに喜ばれなそうだったので、ちょっとストップします。書きたくなったら書こうかな。これからもっと時間作りたいので、その時に余計だと思う作業はカットしていかなきゃですね。自分の目的に対して、悩みながらも、まっすぐ進めるよう努力していかないと。


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(おわりに)


 改めて、わりと参考になるじゃんと思った方は、この『ゼロから講座』や尾崎ゆうじのフォローをお願いします。過去にあれやこれやと無駄に困っていた頃の自分に捧げるような感じで、初心者の方へ向けたコンテンツ発信していきます。



 それでは今日のゼロから講座は以上です。


 みなさんの執筆の手がより進むよう祈りつつ、私も作業をしています。


 お越しいただきありがとうございました。



 またお会いしましょう。お疲れ様でした!



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創作コーチ


尾崎ゆうじ


▼以下のリンクは、ドラッグしてコピー → 検索窓に貼り付けて検索してください。


(note)


 https://note.com/ozaki_yuji

 今日の学びはこちらで書いてます。



(youtube)


https://www.youtube.com/channel/UCu54sC6pviWQUC1eA6dqDKg/featured?view_as=subscriber 

 『ゼロから講座』の過去動画はこちら。書評動画もあるよ。



(stand FM)


https://stand.fm/channels/5f810a3bf04555115d146941 


 初~中級者向け。企画で語りきれなかったコメントの深掘り発信を音声で『気になるどーラジオ』


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