機動白百合戦士ユリリンガー外伝 ᕱ⑅ᕱ 追憶 ガンスミスバニーの人参料理教室 ᕱ⑅ᕱ

@dekai3

兎は人参ケーキの夢を見るか

ガチャガチャ キィ バタン


 時刻は午後十一時。

 都会ならば燦々と輝く灯りによって人も街もまだまだ眠らない時間帯であるが、都会から離れた山の麓の片田舎では十一時というのは真っ当な動物なら一日の活動を終えて眠りにつく時間帯である。

 となれば、こんな時間に外を出歩くのは親や社会に反発して夜の自由を謳歌する若者か、今が何時なのか自分が誰なのかも分からず徘徊する老人か、夜中まで仕事をこなして帰宅をする勤め人かの何かでしかない。


「はぁ、今日も疲れたな」


 只今鍵を開けてこの部屋(ワンルーム風呂トイレ別駅から30分近所にコンビニ無し月3万5000円)に帰宅した主は三番目の勤め人。

 名前は高砂ホソバ。年齢は三十代前半で、歳の割にはかなりしっかりとしたプロポーションを誇る大人の女性だ。

 ホソバは部屋に入ると流れるような動作でローファーを脱ぎ、冷蔵庫までの途中で豊満な胸を押し込めていたブラウスを脱ぎ、冷蔵庫を開けながら器用に足だけでゆったりとしたワイドのジーンズを脱ぎ、500mlの牛乳パックと人参数本を取り出してから冷蔵庫を閉める。


 そして、脱いだブラウスとジーンズを床に散らかしたまま人参を食べる。


ポリポリポリ


牛乳を飲む。


ゴクゴクゴク


人参を食べる。


ポリポリポリ


牛乳を飲む。


ゴクゴクゴク


人参を食べる。


ポリポリポリ。


牛乳を飲み切る。


ゴクゴクプハー


 若干物足りなかったので、冷蔵庫を開けて追加でセロリを取り出して食べる。


シャクシャクシャク


 普通の人間ならば生の人参やセロリをそのまま食す事などせず、調理を行なってから食べるであろう。

 人参は熱を加える事で甘くなるし、セロリは硬い部分やスジを取った方が食べやすい。

 勿論、ホソバ自身も出来るなら調理をした人参やセロリを食べたい。贅沢を言うなら毎日人参ケーキを食べたいし、セロリの他にハーブや大根なんかも食べたい。

 だが、ホソバは調ので調理が出来ず、今は教えてくれる人も居ないので生で食べざるを得ない。

 そう、高砂ホソバは十年前に世界征服を企んだ機械帝国の改造人間であり、エグいハイレグの軍服バニー服がトレードマークの元幹部、ガンスミスバニーだったのだ!!


「たまには温かい物も食べたい…」


 だが、そんな過去は今の生活には関係無い。

 今はしがない地方の博物館の閉館後の清掃のパートタイマーであり、丁寧な仕事ぶりと未亡人もかくやという艶気と時折出る天然な所が博物館の職員や同僚からそこそこの人気があるだけの一般人だ。

 尚、本人は気付いていないが、ホソバを狙っている職員は男女ともに何名か存在する。


「この間頂いたケーキは良かったな。上に乗っていた人参が甘くて良かった」


 簡素な食事を終え、部屋の真ん中に置かれたベッドにゴミや衣類を掻き分けて進みながら、職場の同僚に差し入れで貰った人参ケーキの事を思い出すホソバ。

 ケーキの上に乗っていた人参はバターと砂糖でグラッセした物だが、調理技術の無いホソバには『煮た人参』としか分からない上に、余り他人と会話もしないので『良かった』としか言えない程度の語彙力しかない。


「そう言えば、まだ機械帝国があった頃にユリニー様に料理をする様に言われたことがあったな。あの時に作る筈だったのも人参ケーキだった…」


 ホソバは満腹になった事とベッドの上に寝転んだことで襲って来た眠気に身をゆだねながら、十年前に機械帝国の帝王ユリニーの提案で自分が料理をする事になった一件を思い出す。

 最後はうやむやに終わってしまったのだが、あの時に調理技術を身に付けていたら自分で人参ケーキを作って満足いくまで食べる事が出来たのだろうかと考え、当時は自分の十年先の事など考えた事も無かった上にこんな状況になるなんて予想もしなかっただろうと若干自嘲気味に笑う。

 そして、珍しく過去の事を思い出したのなら、良い機会だから寝るまでの間に当時の事を懐かしんでみようと思い、当時の記憶を遡り始める。


 あれは確か、


『我らもyoutubeで活動をアピールするべきではないだろうか』


 という、機械帝国の帝王ユリニー・ハサマレタインの一言で始まった、機械帝国始まって以来のガンスミスバニーにとって一大事だった。






◇ ◇ ◇ 機動白百合戦士ユリリンガー外伝 ◇ ◇ ◇

   ~ 追憶 ガンスミスバニーの人参料理教室  ~






「我らもyoutubeで活動をアピールするべきではないだろうか」


 ある日の幹部会議の冒頭で、やけに高い背もたれで赤と黒のツートンカラーの椅子に座ったユリニーがそう発言した。

 機械帝国の幹部会議。それは月に一度世界各地に散らばった幹部達を集めて行われる定例会であり、それぞれの作戦の進行具合の報告や世界を侵略する為の新しい提案をしては幹部全員で話し合って承認・拒否を行う物である。

 今月の幹部会議はユリリンガーYの対策については一旦置き、遅として進まない機械帝国の侵略の為の広報や勧誘についての新提案を行うのが大目的だった。

 そんな中、秘書として側に仕えたガンスミスバニーが全幹部の着席を確認して会議開催の挨拶をし終わった所で、ユリニーがこう発言したのだ。


「youtube……でござるか?」


 全幹部がユリニーの言葉にどう反応していいのか悩む中、真っ先に発言したのは東アメリカ地域を担当しているショーグンマナティーだった。

 彼は東アメリカを海中から征服しようとしている水棲幹部であり、東アメリカはインターネットの本場という事で勿論youtubeについても詳しい。


「そうだ。インターネット端末の世界的な普及により、これからは個人や企業が自主制作した動画を世界に向けてアピールする時代が来ている。我らもその流れに一早く乗るべきではないのかと言っている」

「成る程。流石はユリニー様で御座りまする」


 ショーグンマナティーの発言に対し、待ってましたと言わんばかりに若干の早口で説明をするユリニー。

 普段の幹部会議では幹部からの提案に答える側なのだが、今回珍しく真っ先に提案したという事はそれだけ意気込みが強いのだろう。若干だが鼻息も荒い気がする。


「確か、インターネットの世界には現実世界から弾かれた者が集まる場もあると聞いております。そういった場から人材を引き込めるとなれば有意義な事でしょう」

「ふむ。世界規模のスラムが存在するという訳だね? そういった場所ならば我々に与する人間も多々居るだろう」

「今ハアフリカデモスマートフォンヲ使ウ時代。トテモイイト思ウ。動物動画トカ人気出ル」


ワイワイ ガヤガヤ ケンケン ゴウゴウ


 突拍子も無くユリニーに『youtube』と言われた時は驚いた幹部達だが、上位幹部であるショーグンマナティーが賛同した事により、ここは自分達も同じ方向に並んだ方が立場的に良くなるだろうと考えて堰を切ったように肯定意見を発言しだした。

 悪の帝国と言っても幹部達は一枚岩ではなく、それぞれが自分達の担当地域を一番に攻略しようと予算や人員を確保するために水面下で策略を練っている物である。『世界征服』という目標を達成する事自体は協力的だが、その過程で他の幹部が倒れようが全く構わないだけでなく、上手く近隣の幹部が倒れてくれれば自分の支配できる地域が増えてラッキーと思っている幹部も居る程だ。

 流石にあからさまに援軍要請を断ったり直接手にかける事はしないが、誰もが『あわよくば自分が幹部内で一番に』と思っていて、ユリニーもその競争意欲は世界征服へのやる気に繋がると考えて咎めてはいない。

 ただ一人、ユリニーの側近であるガンスミスバニーだけは担当地域を持たないのでこの幹部達による競争には未参加でいる。

 幹部達の中にはそれをやっかんでいる者が少数居るが、支配する担当地域が無いという事は支配後の恩恵にも預かれないという事なのでそれ程邪険にはされておらず、寧ろ『ユリニー様のお側に居る』という事に羨まれているぐらいだ。


 そんなガンスミスバニーだが、軍事知識は豊富でも現在の民間のインターネットの事には全く詳しく無く、今の会議で幹部達が何を言っているのか半分程度しか理解していなかった。

 一応、今回の幹部会議の大目的である広報や勧誘の為に行う事だというのは理解しているので、幹部会議が終わってからミスティックヤマネコに詳しく聞いておけばいいだろうと思っている。

 最近は自分が話しかけると嫌な顔をするミスティックヤマネコだが、面倒見が良く説明上手で仕事はきちんとこなすので、頼めば教えてくれるだろうという算段だ。


「やはりyoutubeの規約的には動物動画か料理動画のどちらかになるでござるかと」

「私の考えと同じだな。やはりその結論に至る」


キュ-ッキュ キュ-ッキュ


 ガンスミスバニーが上の空で会議の進行を見守っている中、ショーグンマナティーがいつの間にか用意されたホワイトボードに書かれた『動物』と『料理』の二文字にペンで二重丸を引いて強調する。

 ホワイトボードには他に『訓練』『改造中継』『通販』『ユリニー様の日常』『お色気』『水着』を始めとして様々な意見書かれているが、殆どはyoutubeに詳しいショーグンマナティーの手によって×印を打たれて却下されている。

 どうやら会議は大詰め。この後は決まった内容についてどのぐらいの予算や時間がかかるかを担当部署に試算させ、それを会計に渡して許可を貰わなくてはならない。

 それぞれの幹部達はそれぞれの担当地域での作業がある為、こうした組織全体で行う作戦の時はガンスミスバニーが担当する事になっている。今回はショーグンマナティーが進行を務めていたのである程度はショーグンマナティーが纏めてくれるだろう。ショーグンマナティーは一度手を出した仕事はきっちりと最後まで見届けないと気が済まないタイプなのだ。


「ナラバ両方ダ。動物ガ料理ヲスレバイイ」


 最終的に候補が二つまで絞られた時、アフリカ南部と東部担当のフォートレスセンザンコウが動物動画と料理動画を合わせればいいのではないかと提案した。

 彼女はその喋り方とは裏腹にかなりのインテリであり、機械帝国の軍略顧問でもある。そんなフォートレスセンザンコウの発言に反対を唱える物は居ない。

 フォートレスセンザンコウは幹部達の反応を見ると、続けて提案をする。


「ソモソモ、動画ノ出演者ヲ誰ニスルノカトイウ問題ガアル。幹部達ハ忙シイ。ナラバ、ソコノ兎ガ料理ヲスレバイイダロウ。色気モアル」

「え、あ、ああ。そうだな。私のスペックにはそういうのも含まれている」


 フォートレスセンザンコウが提案しながら指した先に居るのは、先程からホワイトボードに書かれた単語を一つ一つバインダーに挟んだ会議資料に書き写していたガンスミスバニー。

 ガンスミスバニーは律義にも、会議で決定した意見だけでなく却下された意見も今後の為に拾っておくべきだと考えてホワイトボードの内容を書き写しており、作業に集中していた為にフォートレスセンザンコウの提案をちゃんと聞いていなかった。その為、最後の『色気モアル』という言葉にのみ反応してしまったのだ。

 ガンスミスバニーは自分の外見が機械帝国の広報として役に立つのならば有効に活用して貰って構わないと思っている。大事なのは外見よりも料理が出来るかどうかだというのに。


「フン、嫌味デハナイト思ッテオコウ。デハ、動画ノ内容ハドウスル?」


 ガンスミスバニーの返事を『料理動画の撮影に了承した』と捉え、話を先に進めるフォートレスセンザンコウ。

 その外見は筋肉質な部分が多いので女性的な丸みのあるガンスミスバニーの外見に若干嫉妬しているが、それを仕事に絡める事はしない分別をちゃんと持っている。

 流石は『鉄壁要塞』という二つ名持ち。精神的にも強固だ。


「ならばやはり人参関連では? あの人参を食べる時に耳が動くのが動物らしさを醸し出すでしょう」

「普段の我々の姿を見て貰うのも大切なので、服にはなるべく手を加えない方が良いかと」

「露出的にそのままは大丈夫でしょうか? エプロンを付けるだけでも結構変わると思うのですが」

「着衣して居れば胸が大きかろうが動画の削除はされぬ。犯罪を煽るような物で無ければ大丈夫でござる」

「世界征服への勧誘はセーフなんだろうな?」


ワイワイ ガヤガヤ ケンケン ゴウゴウ


 幹部達は自分が動画に余り関わらないからと意気揚々に意見を出し合い、料理に詳しい者が片手間にレシピを用意すると言い、撮影に詳しい者が配信用機材をそろえた部下を派遣させると言い、動画編集に詳しい者がyoutube用とクロスなビデオズ用に際どい物も作成すると言い、あっという間に内容が纏まっていく。

 普段は裏で腹の探り合いをしている幹部達だが、それぞれが特化した能力を持っているので、一致団結すれば出来ない事は殆ど無いのだ。

 自分が料理をする事を前提に会議が進んでいると気付いていないガンスミスバニーは、そんな幹部達が和気藹々と意見を出し合う光景を見ながら(ユリニー様はここまでお考えになって提案されたのか)と改めて帝王ユリニーの偉大さに感服する。


「ところでガンスミスバニーよ、良いのか? お前は確か…」


 ユリニーはそのガンスミスバニーの様子に気付いたのか、こっそりとガンスミスバニーにだけ聞こえる声で話しかけてきた。

 帝王であるユリニーは配下の者達のスペックは全て把握しており、勿論ガンスミスバニーに料理のスキルが無い事も把握している。

 なので、いくら本人が乗り気であっても出来ない物は出来ないのではないかと心配して声をかけたのだ。流石は組織のトップである。


「ご安心くださいユリニー様。確かに私はかつて人間共に苦痛を与えられ、一度は命を失いました。しかし、そんな私を救って下さったユリニー様や機械帝国のお役に立てるのならば、私の姿を全世界の人間共に晒す事に戸惑いはありません」


 だが、ガンスミスバニーはそんなユリニーの優しさを『自分を害した人間を勧誘する為の広告塔になる事』に対しての心配だと勘違いし、陶酔しきった目で大丈夫だと返す。


「そ、そうか。では私からは何も言うまい…」


 ユリニーはガンスミスバニーの言葉に若干の不安を覚えつつも、部下がここまで言うのだから任せるべきなのかもしれないと考えて深い詮索はしなかった。こういう所も流石は組織のトップでる。


「しからば、この案で行けばよろしいかとユリニー様」


 そうしている内にショーグンマナティーが今回の会議の内容を纏め、後はユリニーの採決を下すのみとなった。

 それぞれが担当する部分も週明け迄にはガンスミスバニーに報告が行く様になっている。このスムーズな会議の進行や調整の手腕は伊達にショーグンマナティーが上級幹部ではないという事だろう。

 ユリニーはその報告を受け、ガンスミスバニーと全幹部に向けて決定した内容を発表する。


「では、今回の幹部会議の目的である機械帝国の広報・勧誘の活動についてだが、youtbeにて『ガンスミスバニー人参料理教室』を配信する事で決定とする。各自、己の役割を果たし、帝国に忠を示せ!!」

『『はっ!!』』


 ユリニーの言葉に会議に参加する全幹部達が頭を垂れて応え、今月の幹部会議は終了した。

 そして、ユリニーとそれぞれの幹部達は今日の昼ごはんをどうするかや折角集まったのだからアフターファイブは飲みに行こうと提案をしながら会議室を退出していく。

 そんな中、ユリニーの最後の言葉に違和感を覚えたガンスミスバニーは一人会議室に残り、ユリニーの言葉と会議の内容を反芻する。

 そして気付く。


「…………もしかして、これはまずい事になったのではないか?」


 今更遅い。

 ガンスミスバニーは自分がやらかした事に気付くと同時に全身にぶわっと汗を掻きながら頭を抱えてしゃがみ込み、鼻を ピスピス させながら必死に起死回生の手段を考え出した。






◇ ◇ ◇






「……と、いう事なのだが、助けては貰えないだろうかミスティー」

「あんたバカでしょ! バカだバカだとは思っていたけど本当にバカでしょ!!」


 ガンスミスバニーが考えた起死回生の手段。

 それは、当初の目的通りミスティックヤマネコに相談する事だった。


「あんまりバカだと言われると…その、悲しくなる……」

「あ、う…そうやって耳を垂れ下がらせる姿があざとかわいい…じゃなくて、そもそもガンうさがちゃんと会議の内容を理解していなかった時点でダメでしょうが!!」

「はい……」


 頭から生えたウサミミを シュン とさせ、ミスティックヤマネコに指摘された事を反省をするガンスミスバニー。

 ミスティックヤマネコはそんなガンスミスバニーの姿を見ながら、この一見クールそうに見えて実はポンコツな部分のあるエロい生き物を早くどうにかしなくてはと考える。今だって生足の軍服レオタードで自主的に床に正座している姿がとても背徳的で耽美であり、気を抜くと襲ってしまいそうになるのを必死に堪えているのだ。


「で、どうするのよ。今日は木曜日だから四日後には他の幹部からの連絡が来ちゃうんでしょ?」

「ああ…なので、どうしたらいいのかをミスティーに一緒に考えて貰おうと……」

「な・ん・で、私がガンうさのうっかりミスに付き合わないといけないのよ! 自分で考えなさいよ!!」

「そこをなんとか…この通りだ……」


 自分がやらかした失敗について一緒に対策を考えて欲しいというガンスミスバニーの相談を、そんなのは自分で考えろと突き放すミスティックヤマネコ。

 二人は機械帝国初期の頃に改造された同期であり、お互いに二人きりの時は『ミスティー』と『ガンうさ』と呼び合う仲であるが、それはそれこれはこれ。ミスティックヤマネコがガンスミスバニーのミスに付き合う必要は無い。

 ガンスミスバニーも確かにそれはその通りだと理解しているが、今さらユリニーに『実は出来ません』と言う事は無理なので、なんとか助けて欲しいと恥を忍んで正座のまま頭を下げる。


「あー、もうっ! こんな事で機械帝国の幹部が土下座なんかするな! こっちまで恥ずかしくなるでしょ!!」

「でも…私にはミスティーしか頼れる相手が…」

「分かったからとりあえず頭を上げなさい! あんた無駄に煽情的な体してんだから変な気分になんのよっ!!」

「す、すまない…」


 ハイレグレオタードでの土下座はお尻が上に突き出されるので中々に危ない見た目になり、その姿は寧ろ女の方がいけるミスティックヤマネコには目の毒だ。


「とりあえずショーグンに連絡するわよ。私とあんただけで考える内容じゃないわ」

「おお、助けてくれるのか。やっぱりミスティーは頼りになる!」

「ええい、抱き着くな! その無駄に大きなおっぱいが顔に当たるでしょうが!!」


 なんだかんだで同期は見捨てられないという事もあり、ガンスミスバニーの頼みを無下には出来ないミスティックヤマネコ。

 本来ならば突き放すべきで甘やかすのは本人の為にならないのだが、自分を頼ってきた事は嬉しいし、何より自分が過去に甘やかしすぎたから今回のミスが起きたのではないかという不安がある。

 流石にそれは考えすぎだとは思っているものの、もしもそうなら同期をこんなにしてしまった責任は取らなくてはならないだろう。

 ミスティックヤマネコはそう自分を納得させ、ガンスミスバニーの豊満な胸に顔を押し潰されながら仕方なくショーグンマナティーへと連絡を付けるのだった。






◇ ◇ ◇







「料理…出来ないのでござるか?」

「こいつ、弾道計算や火薬の配合量は分かっても、『塩少々』とか『弱火で何分』とかが分からなくてフリーズするタイプなのよ」

「左様で…」


 昼食を終えたショーグンマナティーを捕まえ、機械帝国本部近くのコメダでガンスミスバニーが料理を出来ないという事を打ち明けるミスティックヤマネコ。

 それを聞いたショーグンマナティーはまさか自分が纏めた作戦が決定直後に躓くとは思いも寄らず、眉間を抑えて天井を仰いでは大きく鼻で息を吸ってため息を出す。

 ちなみに、ガンスミスバニーは余計な事は言うなと言われているので、ミスティックヤマネコの隣で無言のままにシロノワールを食べている。


「切り替えるでござる。して、ガンスミスバニー殿が出来ぬのは料理だけでござるか? 広報活動はどうでござる?」

「…………ん?」

「ほら、聞かれてるわよ。口にクリーム付けてないで応えなさいよ」


 ミスティックヤマネコにおしぼりで口を拭かれながら、キョトンとした顔でショーグンマナティーを見るガンスミスバニー。

 ショーグンマナティーは二人が同期だという事は知っていたが、まさかここまでの仲だとは想像していなかったのでどうした物かと考え、今どうにかすべき問題はそこじゃないと判断して何も言わずにスルーする。何も言わないが、流石に見た目麗しい女性二人がいちゃついているのは目のやり場に困るのでそれはもう困る。


「文章を読む事ならば出来るが、愛想を振り撒けと言われると難しいな」


 そんなショーグンマナティの心情は知らず、ミスティックヤマネコに口を拭われた側からシロノワールのソフトクリームを口の端に付けてそう返すガンスミスバニー。

 ショーグンマナティーは(特に何もせずにその姿を見せれば良いのではござらんか?)と言おうとしたが、流石にそれは当初の目的と逸れるのでこれまた何も言わない。これが上位幹部の忍耐力だ。


「……ならば、特訓でござろう」


 ショ-グンマナティーは絞り出すかのように二人に向けてそう言うと、懐からタブレットを取り出して自身のスケジュールの確認をする。


「拙者も料理動画に賛成した手前、今さらユリニー様に撤回を求める事は出来ぬ。ならば短期間でガンスミスバニー殿に料理と広報を可能になって貰う他にあるまい」


 そして、来週はバージニア州を攻略すると決めていた予定を一旦白紙に戻し、他の幹部達にもメールで連絡を取り始める。


「でも、こいつかなり不器用よ? 動画の撮影は来週末でしょ? 間に合うの?」


 ミスティックヤマネコも現実的な解決方法はガンスミスバニーに技術を身に付けさせる事だとは分かっているが、付き合いが長い故にそう簡単に短期間で教え込むのは難しい事も理解している。

 ましてや撮影の準備等は四日後の月曜日に揃う形になっているので、それを考えると期間は五日程しかない。通常任務もこなしながら五日で料理と広報を教え込むのは時間が足らないだろう。


「料理担当のホプリテスキンシコウ殿には拙者から連絡するでござる。確かガンスミスバニー殿の好物は人参ケーキでござったな?」

「何故それを?」

「いや、あんたしょっちゅう食堂で食べてるでしょ。あれあんたしか頼む人居ないわよ」

「そんな…バカな……」


 ガンスミスバニーとミスティックヤマネコのいちゃつきはスルーし、ホプリテスキンシコウへ事の経緯と料理を人参ケーキにして貰う事を連絡するショーグンマナティー。

 そのまま返信は待たず、次に台本を作っている者、その次に衣装を作成している者、その次に機材を用意する者、その次に動画を編集する者と、次々と幹部達へ連絡をする。

 更に役割を持っていない幹部にも『ガンスミスバニー殿が料理を出来ぬ事を失念していた』という文面でのメールを送り、その上で『ユリニー様の期待に応えるべく協力して頂きたい』と連絡をしている。

 今回の件はしっかりとガンスミスバニーに確認をしなかった自分にも非があると思った上での行動であり、こうして間違いを認め、自ら進んで責任を取る事が出来るからこそショーグンマナティーは上位幹部であるのだ。


「とりあえずでござるが、ガンスミスバニー殿の事は全幹部に通達させて頂いた。これは料理が出来ぬ事を黙っていたガンスミスバニー殿への罰でござる」

「あ、ああ…それは仕方ないな……」

「まあ、当然よね」

「それででござるが、今しがたホプリテスキンシコウ殿から連絡があり、料理を人参ケーキにする事の許可と、三分間クッキングの様に予め出来た物を用意して作業の説明だけをガンスミスバニー殿が行うという形ではどうかという提案を頂いた。これならば簡単な作業のみで動画を作成出来るでござろう」


 料理が出来ないのならば出来ないなりにやり方はないだろうかとホプリテスキンシコウに相談したショーグンマナティーだったが、その考えは正しかった様だ。

 後で編集もするのだし、一から十までしっかりと料理している姿を撮る必要は無い。要所だけピンポイントで撮影しておけばなんとかなるだろう。


「成る程、それならば私は何もしなくて良いのだな?」

「いや、粉を混ぜたり人参を切ったりはする必要はあるでござる」

「人参…切れるだろうか…」

「あんたナイフで戦車の解体出来るでしょうが」

「何を言う。戦車と人参は違うのだぞ?」


 とりあえず当面の危機は去ったと一息入れるショーグンマナティー。

 と、そこに意外な幹部から動画撮影の協力をする為に今から合流するという連絡が来た。






◇ ◇ ◇






「こ、粉は予めこうやってふるいにかけ…あっ」


ガチャガチャドッテーン!!


「ダカラドウシテ粉ヲ振ルウダケデ転ブンダ! オーブンニ入レルノハ失敗シナクナッタノニ!」

「す、すまない…どうも体が勝手に……」


 協力を買って出た意外な幹部とは、木曜日の会議でガンスミスバニーを広報動画の出演者として指名したフォートレスセンザンコウ。

 彼女はガンスミスバニー達三人がコメダを出た後に直ぐに合流し、ガンスミスバニーに動画の為の最低限の調理技術を身に付けさせるべく、通常任務後に機械帝国本部の特殊工作室の一部屋に秘密裏に作り上げた仮設キッチンにて特訓をしているのだ。


「どう? 進んでる?」

「ミスティックヤマネコカ……トリアエズ爆発ヤ炎上ハシナクナッタゾ」

「たかがケーキ作りで合金製の装甲版を消費したのは本当に意味が分からなかったわ。逆に新型爆薬の実験だって建前が出来たから良かったけれど」


 ガンスミスバニーが何度目かの失敗をした所でミスティックヤマネコが様子を見に現れ、丁度良いタイミングだからとエプロンを外して椅子代わりの鉄塊(※調理台だった物)に腰かけて休憩をするフォートレスセンザンコウ。

 会議があった木曜日を含めて四日間。フォートレスセンザンコウによってガンスミスバニーへの特訓が行われたのだが、その間にガンスミスバニーは仮設キッチンの爆破を四回、炎上を六回もさせていた。

 ちなみにケーキの生地を入れるオーブンはコンセントを繋いでいないし、人参をグラッセする為のコンロもガスボンベを入れていない。それなのに爆発や炎上をするのだから全く持って意味が分からない。しかも爆発の威力は機械ビースト用の装甲版に穴をあける威力だ。


「もう少し…もう少しで何かが掴める気がするのだが…」


 それだけの大惨事を起こしているガンスミスバニーだったが、それでも特訓を諦めるという選択肢を取る事はしなかった。ユリニーや機械帝国の為に半端な事をしたくないという想いと、自分を助けてくれる仲間の期待に応えたいという気持ちで、なんとか爆発炎上をさせる事を無くす事が出来たのだ。

 最も、それならば最初から素直に『料理が出来ない』と言えばいい様な物だが。


「た、大変でござる!!」


 と、特訓が一旦休憩を迎えた時、慌てた様子でショーグンマナティーが現れた。

 普段から冷静な彼らしくない様子に仮設キッチンに居る三人は身を構える。


「ユリニー様が急遽予定を変更され、広報動画を生放送で明日行うと!」

「ナニッ!?」

「はぁっ!?」

「…えっ!?」


 ショーグンマナティーから伝えられた驚きの内容。

 それはyoutubeの配信に先駆け、プレミアム感を出す為に編集前の料理風景を生放送するという物だった。


「ユリニー様にはアクシデントが起きる場合もあるのではとお伝えしたのだが、『それも生放送の醍醐味であろう』という返答が…」

「ユリニー様ニシテハ珍シイ…」

「しかも、スタジオは風景が良い都内の隠し倉庫を使うと仰せに…」

「あったわねそんな場所……使い道が無くて殆ど放棄状態だったでしょ確か」

「撮影班には既にユリニー様直々に通達をしたとも…」

「私は何も聞いていないぞ?」


 部下の自主性を重んじるユリニーにしては珍しい突然の変更に驚く四人の幹部。

 正直言って、まだガンスミスバニーの料理の腕前はとてもじゃないが撮影出来るレベルの物では無い。下手をしなくても放送事故を起こすだろう。

 だが、元々この企画はユリニーが提案した物であり、そもそもガンスミスバニーの調理技術が完璧と言う前提ならば明日撮影を行っても問題が無い物なのだ。予定を早めた事に対して意見するのは難しいだろう。

 となれば、出来る事は唯一つ。


「フォートレスセンザンコウよ、悪いが朝まで付き合って貰えないだろうか? もう少しで何とかなる気がするんだ」


 残された時間で出来るようにする。それだけである。


「イイダロウ。ココカラハ手加減ハ出来ンゾ?」

「望む所だ。ユリニー様の期待に応える為ならば私は何だってする」

「……仕方ないわね。私も付き合ってあげるわ」

「拙者も出来る範囲で付き合おう。ユリニー様に報いたい気持ちは同じでござる」


 急遽発生したアクシデントたが、ここまで来たのなら最後まで諦めたりしない。絶対にやり遂げてみせる。

 四人の幹部はそう決意し、深夜遅くまで特殊工作室に爆発音を響かせるのであった。






◇ ◇ ◇






 そして撮影当日。


ジャーハイシンカイシシマース! ジュンビイイデスカー?


「あ、ああ。だ、大丈夫だ…」


イキマスネー サン、ニー、イチ、ッ!!


 スタッフの握り拳が下がると同時にカメラの下のモニターに自分の姿が映し出され、緊張で耳をビンビンに立たせるガンスミスバニー。


「ど、どうも諸君! 我々はき、機械帝国。世界征服を、めざ…目指す者だっ!」


 衣装はいつもの軍服レオタードから上着を脱いでハイレグレオタードのみにし、その上に銃を構えた兎のアップリケを付けたエプロンを身に付けている。エプロンの丈は膝まであるので正面から見たらエプロン以外何も身に付けてない様に見えるが、『この位ならば大丈夫でござろう』というショーグンマナティの言葉を信じて特にタイツも何も履いていない。


「ここ、この動画は我々の事を知って貰うべく…べく……」

「≪自己紹介! 自己紹介が抜けてる! あんたの名前と能力の説明!!≫」

「そ、そうだ! 私はガンスミスバニー!! 銃器製造を力とする機械帝国の幹部だ!!」


 料理の特訓はしたが広報の特訓をする事を忘れていたガンスミスバニーの為、スタジオにはミスティックヤマネコが待機して『精神感応』でセリフを伝えるサポートに回っている。


「そ、それでだな。我々機械帝国の事を知って貰う為に…」

「(カナリ緊張シテイルガ大丈夫ナノカ?)」

「(……分からぬ。ガンスミスバニー殿を信じるしかあるまい)」


 スタジオの反対側からガチガチに緊張しているガンスミスバニーを見守っているのはショーグンマナティーとフォートレスセンザンコウ。昨晩は結局朝まで特訓をしたのだが、肝心の料理の手順の説明は最後まで成功する事は無かった。

 その為、ガンスミスバニーは緊張しているだけでなく睡眠不足と自信の無さのトリプルパンチを喰らっており、気を抜くと気絶してしまいそうな心理状況だ。

 その上、モニターには生配信を見ている視聴者のコメントが映っており、その八割は『エロい』だの『脱がないの?』だの『後ろ向いてお尻見せてよ』だの『おっぱいは複数ありますか?』だのの性的な物ばかりである。これはいかに幹部と言えどもまともでは居られまい。


「という事で、今日は、私が、人参ケーキを作るのだ!」


 だが、それでもガンスミスバニーは動画を中断させること無く、ぎこちないながらも機械帝国の紹介を終え、料理のシーンへと撮影を進めさせる。

 これにはショーグンマナティーもフォートレスセンザンコウも流石はユリニー様の側近なだけはあるとガンスミスバニーを見直し、ミスティックヤマネコに至っては後で好きなだけ人参ケーキを食べさせてやろうと食堂のおばちゃんに連絡を入れているほどだ。


「ざ、材料はこちらのボードに書かれてい……は、反対だな! そういう事もある!!」


 撮影のスタッフ達は一般怪人だが、事の経緯は聞いているのでガンスミスバニーのぎこちなさを笑ったりはしていない。

 それどころか、撮影のプロな彼らはガンスミスバニーのぎこちなさを逆に個性として扱い、放送事故にならない様に上手くテロップやカメラの角度を変える事でコンテンツに変えている。

 この場に居る誰もが『この生配信を成功させる』という意気込みで行っていて、誰もが真剣な眼差しをしている。きっと、この場に居ない幹部達も同じ気持ちだろう。


「ま、まずは粉をこうやって振るってだな…」


 そして、この四日間の特訓の成果を見せる料理の説明が開始される。

 やる事は飽くまでも手順の説明だけで実際にはもう完成した物が用意されているのだが、それでも手を抜く事は出来ない。

 ガンスミスバニーはもう何度行ったか分からない粉をふるいにかける作業を開始しようとして…


ズガァァァァン!!!!!


「機動白百合戦士! ユリリンガーY見参!!」


 久留間カノコの声と共にスタジオの壁が破壊され、ユリリンガーYが現れた。


「ユリリンガーだと!? 何故ここが分かった!!?」


 流石に仇敵が現れたとあっては寝不足も緊張も吹き飛ばし、即座に戦闘態勢に入るガンスミスバニー。

 ミスティックヤマネコ、ショーグンマナティ、フォートレスセンザンコウも同じ様に戦闘態勢に移り、撮影班は即座に機材を回収して撤退を始める。


「外の風景から場所の特定をしたのよ! 私達人類の解析班の技術を舐めて貰っては困るわ!! こんな動画を配信して何が目的なの、機械帝国!!」


 律義にもガンスミスバニーの疑問に答える糸羽ヒメ。

 そう、この隠し倉庫は自然光を取り入れる設計をしているので外の様子がよく見えてしまい、それにより場所の特定を成されてしまったのだ。


「くっ……だが、ここには幹部が四人も揃っているのだ。ユリニー様が期待されていらした動画を中断させた報いは受けて貰うぞ」

「なんの! そっちこそ卑猥な恰好で世界にアピールなんかして! ユリニーはよっぽど変態の様ね!!」

「ユ、ユリニー様を馬鹿にするなぁ!!!!」


ガキィンガキィンガキィン チュドンチュドンチュドン


「下がるのだガンスミスバニー殿! 前衛は拙者と!」

「ワタシガスル!!」


ガギィンガギィン


「うぅ、やるっ!?」


 ユリニーを変態扱いされた事で激高したガンスミスバニーを守る様にショグンマナティーとフォートレスセンザンコウが飛び出し、生身のままスーパーロボットであるユリリンガーへと立ち向かう。

 流石に大きさでの不利はあるが、何も作戦が無いわけではない。

 ガンスミスバニーの銃器による援護、ショーグンマナティーの一撃必殺の切断、フォートレスセンザンコウの鉄壁の守りがあればユリリンガー相手でも時間を稼ぐ事は可能な筈であり、その隙に駐車場まで退避したミスティックヤマネコが召喚陣を形成して各自の機械ビーストを転送させるという手筈だ。

 何の相談も無しにこの連携が出来るのもここ数日間の訓練のたまものだろう。


「覚悟しろユリリンガー。ユリニー様を侮辱した罪を償わせてやる!!」






◇ ◇ ◇






 と、こうしてユリリンガーYの乱入により動画の撮影はおじゃんになり、自分は料理をする機会を失ったんだったなと思い返すホソバ。

 もしかするとあの時に撮影場所にユリリンガーが現れたのはユリニー様がそうなる様に誘導したからであり、結果的に私が恥をかかない様にして下さったのではなかろうかと、今更になって思う。

 だが、それを確かめようにもユリニーはユリリンガーに討たれてしまっているし、機械帝国も壊滅している。自分以外の幹部は行方知れずで死んでしまった者も多数居るだろう。

 だから、今更料理が出来る様になっても余り意味が無いのだし、誰かに料理を教えて貰う事も出来ない。そういう事なのだと納得させ、まどろみの中へと降ちて行く。




 数か月後、とある大事件により自身の環境が代わり、料理を覚える機会が巡って来る事になるのだが、それはまた別の話。

 その時、ホソバは思いも寄らない人物に出合い、そして別れを経験する事となる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

機動白百合戦士ユリリンガー外伝 ᕱ⑅ᕱ 追憶 ガンスミスバニーの人参料理教室 ᕱ⑅ᕱ @dekai3

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ