第2話 珈琲は月の下で

 月明かりのなか、ベンチはそれより明るい街灯に照らされていた。缶コーヒーがひとつポツンとあって、誰かが飲んでそのまま置いていったものだ。


 ピ ガッチャゴトン


 近くの自販機が鳴いた。缶コーヒーは誰かの手の中に。


 カコーン、コーン

 ザッザッザッ


 すぐ飲み干しゴミ箱に空き缶が入る音が響く。


 時刻は午前3時、深夜の公園には誰もいない。酔っぱらいや犬と人は帰っていった。ランニングの人や新聞配達の人はあとで来る。


 ベンチと空っぽの缶コーヒーが取り残されていた。晴れた夜空は星がきれいで、空気はとても冷えている。


 ザッザッザ

 ピ ガッチャン


 すぐ近くにある自販機が鳴いた。缶コーヒーは誰かの手の中に。



「やった!好きな子のだ!」



 ピ ガゴトン


 また自販機は鳴く。缶コーヒーは誰かの手の上でくっつく。



「やった好きなふたりだ!」



 夜中なので声は控えめだが喜んでいる。缶コーヒーの絵柄に一喜一憂しながら、結局3本コーヒーを買った。ベンチに行きコーヒーを飲もうとして手が止まる。



「これ以上眠れないと起きられないかな?」



 自分に聞いて、飲まずにエコバッグに入れて持ち帰った。缶同士がぶつかる音がする。そのうちスキップをやめ、静かに歩いていく足音が残った。



 月明かりも薄れ、ベンチはまだ明るい街灯に照らされていた。静かな公園に戻る。夜勤や眠れない人が過ぎ去って、また早朝人がやってくる。それまではきっと静かだろう。缶コーヒーがひとつポツンと変わらずに残っていた。

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