第2話 マイホーム




「なにもない」

 それが、私が小一時間探した結果だった。

 山だから、何かあるだろうとは思ってたけど、穴すらない。

「……こうなったら、自分で作るか?魔法もあるとガルゴエラか言ってたし……」

 頭の中の知識を探る。

 すると、ある一つの魔法が引っかかった。

「創作魔法〈ダンジョンメーカー〉?よし、これにしよう」

 ダンジョンでも、何かでもいい。もう、やけくそだ。

 魔法を山の斜面に向かって放つ。

 すると、扉が出てきた。

「成功?」

 扉を開け、中を見ると……。

「お、ちゃんと空洞になってる」

 住めそうな感じの洞窟ができた。

「ふぁ……ねむ、ここで寝よ」

 入り口付近にあった、大きめの平らな石の上で、横になり、目を閉じた。


「おい。なんか、新しいクエストがあるぞ」

「ほんとだ。えーとなになに?『昨夜、新しいダンジョンが山の中腹部で発見された』だって。どうする?」

「行くか。金ないし」

「行こう。金ないし」

「やるか。金欲しいし」

「金!金!金!金!」

「いや、普通に喋れよ」


「んぅ〜?ふぁ〜………あれ、ここ、どこだったっけ?ってか、声……あーそういえば、魔族になったんだった」

 目が覚めて、どこかわからなくなったが、別にいいだろ。

 さて、このダンジョンをどうするか……。

「よし、下へ行こう!」

 道が続いている。私のマイホームだ。中がどうなっているかは知っておかないと。

「光魔法〈ライト〉!」

 知識として持っていた魔法を使う。

 光の球が出てきて、周囲を照らす。

 結構広かったんだなぁ。

「地図があればなぁ……おわっ!」

 突如、目の前にウィンドウが現れる。あ、よくSF映画とかで見る、空中に現れるやつね。

「地下50層まであるのか……長そうだなぁ。てか、1層ごとに20部屋ずつあるの……」

 数が多すぎる。20×50で1000もある。

「よし、探索はやめよう」

 部屋が多すぎる。

「ん?ドラゴン?スライムに……これはトラップ?」

 部屋の説明のところにそんな物騒なことが……。

「これ、私が行ったらどうなるんだろう」

 ドラゴン……撫でたいなぁ。

「よし、行こう」


[地下8層、ドラゴンの部屋]

 ………。

 名前、考えてあげようかな?

『何者だ……』

 部屋の中に入ると、突然そんなことを言われた。

 中にいたのは、緑色のドラゴン。大きさは、重戦車と言ったら納得できる大きさ。

「いや、なんでもない……」

『あ、お待ち下さい。創造主様』

「え?」

 今、なんて……創造主様?

「私が、創造主?」

『えぇ。そうでございます。私は、グリーンドラゴンのグラムです』

「私はリアリリスです。よろしくお願いします、グラムさん」

『いえいえ。それに、私に敬語は必要ないですよ、創造主様』

「私はそんなに偉くないです。ただの魔族です」

『はぁ。なら、普通に接してもいいですか?』

「はい。私のことはどう呼んでもいいです」

『なら、私のこともどう呼んでもいいです』

「なら、これからよろしく。グラム」

『だな、リアリリス。いや、リア』

 私は、この世界ではじめての友人ともいえる存在、グリーンドラゴンのグラムさんと出会った。


「なぁ。ダンジョンはまだか?」

「山の中腹と言っても、結構高さはあるのよ」

「それにしても、どんなモンスターが待ってるかな?スライム?グリーンスライム?ポイズンスライム?ゴールドスライム?シルバースライム?」

「俺はホブゴブリンがいいな」

「ギリ倒せるやつじゃん」

「だからだよ」

 冒険者一行は、気ままに話しながら、山道を歩いていた。



「あれ?なんで魔力が減ってるんだろ?私、下界に降りた以外に何もしてないのに……」

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