トラップ 才能

仲仁へび(旧:離久)

01



 放課後、僕達は最近はやりのカードゲームを始めた。

 強力なキャラクターカードを出し、連携を決める事で、勝利の鍵が掴めてくる。

 スリルのある、素晴らしい遊びだ。


「また負けた!」


 けれど、僕には悩みがあった。

 トラップカードがうまく決まらない。

 相手を罠にはめようとすると、必ず察知されてしまうのだ。


 あんまりにもバレるものだから、僕は相手に聞いてみた事があった。

 すると、視線でバレると分かった。


 トラップカードは事前に待機所ゾーンという場所に設置しなければならない。

 そのカードには時限式のカードがいくつもあるので、そういうゾーンが活躍するのだ。

 だが、僕がトラップカードを使用する時は、頻繁に視線がそのゾーンに向かうものだから、ばれてしまうらしかった。


 僕は次は、できるだけトラップカードを見ないようにしようと決めた。


 けれど。


「また、負けだ!」


 次も察知されてしまった

 一体どうして?


 恥を忍んで相手に聞いてみると、今度は不自然にそっちを見なさすぎる、との事だ。


 それからも何回かトラップカードの発動を試みた。

 でも、それらの全てが不発。

 相手に対処されてしまった。


 何回やっても視線が不自然になってしまう。

 結果、僕は人を罠にはめる才能がないのだと気が付いた。


 そう言うのはきっと、人を罠にはめても心が痛まない人間に才能があるのだ。

 僕は負け惜しみを言って、自分を慰めるしかなかった。


 そんな事を思えば、「平気で人を罠にはめる人間には、心がない」と思う僕にも十分に才能はあるはずだけどね、と皮肉られた。


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