第十一話 スサノオノミコトとの戦い②

 武器を手に入れたからとりあえず構えたけど、私剣使ったことないんだよね。剣道やったことないし。そもそも普段生活してて剣とか使わないじゃん。どう使うのが正解なんだろう。

 

「まあ、何とかなるでしょ」


 とりあえず私は剣を構えたままスサノオに突っ込んでみた。やっぱり魔法少女のパワーはすごい強くて、一瞬でスサノオの目の前まで距離を詰められた。


「とりゃー!!」

 

 分からないなりにスサノオのお腹目がけて剣を横に振ってみた。でも結果は空振り。というか避けられた。


「ですよねー」


 剣を大きく振って隙だらけの私にスサノオは拳を振るってきた。背中に直で受けてしまって私の体は地面に叩きつけられた。


 さっきは腕でガードしたけど今度はそんな余裕はなかったし、剣を振った後で力が抜けていたのもあったし、衝撃は体感でさっきの3倍はある。これは流石に体に響く。……痛い。


(幸絵早く立って! 次が来るよ!)


 痛みに苦しんでいたが、アマテラスの声で我に返る。地面を転がりその場から急いで離れた。直後、私がさっきまでいた場所にスサノオの剣が突き刺さっていた。体中に寒気が走る。


 急いで立ち上がり、スサノオと距離を取った。対した運動はしていないのに、私は肩で息をしていた。


「はあ、はあ、はあ……」


 ……怖い。スサノオがさっきよりも大きく見える。いやこれは……私が小さくなった感覚だ。恐怖で足がすくむ。剣を持つ手が震える。やばい。下手に動けば、殺される。


「……ふん」


 スサノオはそんな私を見て、剣を捨てた。そしてその場で胡坐をかいて膝に肘を置き頬杖を突く。まるで戦うことを放棄するような行動をとったスサノオを前に、私は剣を持つ手を緩めた。


 しばらくの沈黙の後、スサノオは口を開いた。


「姉さん、あなたは間違えた」

「ま、間違えた……?」

「そうだ。お前は姉さんの器ではない」


 それはどういうこと? スサノオの発言の意味が分からないけど……


(幸絵。ちょっとスサノオと話させて)


 あ、うん。どうすればいい?


(何にもしなくていいよ。ちょっとだけ幸絵とボクの立場が変わるだけ)


 何もしなくていいのね。何が起こるんだろう。そう思っていた矢先、私の視界がぼやけていった。意識ははっきりとしているのだが、今まで見ていた景色が何となくかすむような感じ。目を擦ろうと腕をあげようとした。しかし、私の腕は動かない。


 私はアマテラスの言っていた事を理解した。一瞬、私の体をアマテラスが使うという事なのだろう。そうすれば当然、私の中にいたアマテラスは直接スサノオと会話できるようになる。


 ……それ出来るなら、最初からアマテラスが戦ってくれればよかったのに。きっとこの声も聞こえていると思うけど、アマテラスは無視をした。


「それは、幸絵が神託の戦士の相応しくないってこと?」

「その通り。たったこれだけの事で恐怖し、腰を抜かす軟弱者では我々には到底敵わない」


 スサノオは私を指さしそう言った。どうやらさっきまでの私の戦いぶりを見てそう思ったのだろう。


「言ってくれるね。幸絵はボクが選んだんだ。しっかりと彼女の本質を見て、信頼できるから選んだんだ」

「……甘いな、姉さんは。人に捨てられ始めた神が、たったそれだけの事でまた人を信じるのか」


 ん? 捨てられ始めた? 昨日アマテラスが言っていた信仰が薄まっている話だろうか? でも何だかそれとはニュアンスが違うような?


「ボクは捨てられてなんかない! まだボクを信じてくれている人がいる!」

「もう日本の神を信じている人はいない。それは父さんの力の弱まりを見ればわかることだろう? 姉さん、いい加減現実を見てくれ」


 父さん? 全く話が分からな………………ちょっと待って。さっきスサノオは私が軟弱者でアマテラスにはふさわしくないって言った? 神託の戦士に相応しくないって。それってさ……魔法少女に向いてないってこと?


 ……ほうほう、なるほど。私は魔法少女に向いていない、か。上等だこの野郎。アマテラス、お話の時間はもう終わり。早く私にそいつをボコボコにさせろ。ちょっと頭にきた。


(えっ。まだ全然話してないけど。それに、戦えるの?)


 お前まで私を馬鹿にするのか!? 私は魔法少女になれたんだぞ!? それなのにお前は魔法少女に向いてない軟弱者の弱虫のちんちくりんの雑魚だなんて言われて黙ってられないでしょ!?


(そこまで言ってなかったような……)


 うるせえ! いいからさっさとそこをどけええええ!!!


(うわっ! ちょ、ちょっと!)


「だああああああああああああ!!!」

「ど、どうしたんだ姉さん」

「姉さんじゃねえ! 散々私の事を馬鹿にしてくれたなこのデカブツめ! 魔法少女なめんじゃないよ!」

「ま、まほうしょ……なんだそれは?」

「魔法少女だ! 一回で覚えて脳みそに刻み込めこの馬鹿ちんが! ぶっ飛ばしてやる!」


 もう知らん。こんな奴はけちょんけちょんにして半ベソかかせて国に送り返してやっる。ぜっっっっったいに!!!

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魔法少女×ネクラオタク=世界を救う。 平和空輔 @hirana_sorasuke

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