勇者パーティに愛想をつかした魔法使いが魔王軍に転向!〜不真面目勇者に制裁を〜

アーク

プロローグ 新たなる魔王

―霊峰ガレアに存在する魔王城、その王の間にて二人の人物、勇者レオンと魔王カースが対峙していた。レオンは神々しい光を放つ剣を構えてその切っ先を相手の喉元に向けている、カースは歪な形をした大剣を地面に突き刺して片方の膝を地面につけた状態でレオンを忌々しそうに見ている。


レオンもカースもすでに全身にかなりの傷を負っており立っているのもやっとなほどだった。次の攻撃が最後の一撃になることは二人には容易に想像できていた。


「……カース、お互いもう限界だろう、まさかここまで苦戦するとは思わなかったがな。」

「ふん……我も同じことを思っていたわ、人間ごときがここまでやるとは思ってもみなかった」


静寂な空間に響く二人の声は瞬く間に消え、また王の間には静寂が訪れた。


「俺もお前ももう次の攻撃は耐えられない……これで終わりにしよう、この戦いを」

「あぁ……そうだな。ここまで来たらお互い覚悟を決めよう」


お互い目を閉じ残っていた魔力をレオンは全て聖剣に、カースは魔剣に集中させる。レオンの持つ聖剣は神々しい光が一層輝きを増し聖剣全体が光で包まれる。カースの魔剣は黒い炎のようなものは魔剣全体に覆われレオンの持つ聖剣の光をも打ち消してしまうほどの漆黒に染まる。


「この世界は絶対に奪わせない……行くぞ、カース!!」

「来いレオン……貴様の希望なんぞ打ち砕いてやる!!」


足に力を込めお互いに向かって突進していく。


「「はああぁぁ!!!」」


聖剣と魔剣が激しくぶつかり合いキィイン!と甲高い金属音が辺りに響く。それと同時に剣に纏わせている魔力がお互いを食らい尽くそうと光と闇が蠢いている。


「ぐっ……負けるわけには……いかないんだ……!」

レオンが力を込めると聖剣の輝きが更に増して闇を押し返していく。


「チッ……まだここまでの魔力を……いい加減諦めろ!」

負けじとカースも力を込め押し返していく。


魔力量ではカースのほうが上、レオンからしたらこの状況は不利でしかない。カースより魔力を持たないのではいつか魔力が切れ聖剣ごと切られてしまう。


(くそっ……押し返せない、このまま魔王に敗れるのか?俺は……)


諦めかけて目をつぶったその時。








―ピシッ、とひびが入るような音が微かに聞こえた。

「……?」

「くっ……」


おそるおそる目を開けてみるとカースが持つ魔剣にひびが入っていた。カースも気づいているようで慌てた様子で距離を取った。


(いける……!このチャンスを逃すわけにはいかない!)

慌てて距離を取るカースに向かってジャンプして近づき上から聖剣を振り下ろす。カースは魔剣の腹で防御しようとするが剣がぶつかると魔剣のひびが広がり魔剣は粉々に砕け散り、レオンが放った斬撃をまともに食らってしまい大量の血を出しながら床に倒れこんだ。


「ぐあっ……まさか……魔族の王たる我が……人間ごときに敗れるなど……」

血を吐きながら悔しそうに言葉を放つカース。


「これが人間の力だ……希望を捨てなければ強大な悪に勝てる力を持っている」

剣を鞘に納めながらカースのを見下ろしながら言うレオン。


「聖なる力に悪は滅び去る……か、だが忘れるな……光と闇は表裏一体。光があるところに必ず闇もまた存在する……この争いは決して終わらぬ……未来永劫な……!」


カースは笑いながら黒い霧となり霧散していった。レオンはカースが消滅したのを確認すると大きく深呼吸をして


「新たな闇が生まれようものなら、新たな光がその闇を打ち払う。それだけだ」既にいなくなった宿敵に対し言い放つと魔王城を後にした。

















―勇者レオンが魔王カースを打ち倒した三十年後、魔王城の地下にある巨大な空間。そこに生えている「魔の種」から出てきた「魔界樹」にただ一つなっている小さな子供程度なら入れるほどに巨大な実。その実が床に落ちて割れるとその中から出てきたのは見た目10歳程度の少女だ。


少女は目を開けると口を開き




「我は魔王カースの記憶を受け継ぎし者、我が為すべきことはことはこの世界を支配すること―新たなる魔王の力を持って必ず我の為すべきことを為すのだ。」


新たなる闇、新たなる魔王が生まれまた魔族の支配がはじまろうとする中、新たなる光もまた生まれようとしていた―。


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