死者の王
クラスを選べと俺の視界に大量の選択肢が表示される。その殆どが魔法使い系のクラスなのは、やはり俺の前世の賢者が影響しているのだろう。ただ、一つだけ全く魔法系とは思えない暗殺者というクラスが提示されているのが俺は少し気になった。
「暗殺者。隠密性と敏捷性に優れ、クラス専用スキル【隠密】と【加速】を獲得する、ね」
魔法使い系は魔力に関する効率アップや、魔力量の増加、さらに言えば詠唱速度の簡略化や、同時詠唱なんてスキルを持っているクラスなんて物もあった。選ぶなら絶対にこっちだ。魔力が増えれば九番台や十番台の大規模な魔法を放つことができるようになる。十番台は単一でSS級トラベラーの異能と同じ位優秀だ。それを使えるようになる事が最善。
だというのに、何故か俺の眼は暗殺者の文字を放してくれない。
分かっている。魔法の最大の弱点は魔力の枯渇だ。それを防ぐために俺は最大魔力量を上げている。けれど、暗殺者のクラススキルがあれば、枯渇しても戦えるかもしれない。
「今の俺は賢者じゃない」
それは、もう通った道だから。
だから、俺は近接戦闘系クラスを選んだ。
『【暗殺者】を選択しました』
『クラススキル【隠密】【加速】を獲得しました』
『経験値の貯蓄量が一定値に達っしているため、クラスチェンジが実行されます』
『【暗殺者】が【死者の王】へクラスチェンジしました』
『それに伴い、クラススキル【不死王】を獲得しました』
ついでに魔力レベルも上げてっと。それじゃあ見せて貰おうか、今の俺のステータスを。
クラス《死者の王》
スキル《捕食》
《隠密》身体を透明化し、音も軽減した隠密状態になる事ができます。このスキルの発動中は体内魔力を秒間100消費し続けます。
《加速》全ての行動速度と反応速度を二倍にします。このスキルの発動中は秒間100の体内魔力を消費し続けます。
《不死王》死者を配下として使役する事ができます。配下は使用者に絶対服従となり、言葉を交わす事はできません。魔力が少ない相手程、使役の成功率が上がり、使役可能数は魔力レベルに依存します。
基本魔力 7822
魔力レベル 10
合計魔力 15644
合計魔力15644。その数値は、俺が既に八番台の魔法を使えうるという事実を指す。
そして、不死王は
「だったら、俺に協力してくれよ。大魔術師」
お前の炎も、お前の守りも、俺には必要だ。
「カ」
骨の軋む音が聞こえる。
俺の魔力がその身体を包むように展開される。
ごっそりと魔力が抜けていく感覚。
「カカカ」
そいつは俺に対し膝をつく姿勢で、頭を下げていた。
「よろしく頼む」
「カカ」
『名称を付ける事が可能です』
確か、最初の名前はリヒトだったか?
「ならお前は、リヒトだ」
『リヒトが配下に加わりました』
ってこいつ外に出る時どうすればいいんだ?
いや、生物じゃないのなら……
「
これなら、俺は軍勢を持ち歩けるわけか。
ただ、10体しか使役出来ないから考えて使わないとな。
って待てよ? 死体大量に持ってるじゃん。
『キングが配下に加わりました』
『エンペラーが配下に加わりました』
『リッチが配下に加わりました』
『クイーンが配下に加わりました』
『スノーダンサーが配下に加わりました』
取り敢えず、各ボスモンスターを配下にした。
これで、次の階層からは楽に狩りが出来る。
『51階層への転移が許可されます』
「
魔法から計6体のボスモンスターが出現していく。
「行ってこい」
ただ、ゴブリンキングとかはこの階層では通用しないかもしれないな。
まあ、やられても身体さえ修復してしまえばまた動くらしいから大丈夫か。
そんな風に考えていたが、とんでもない勘違いだった。
51階層からの岩石地帯は、少し暑い程度の環境だった。雪山と違って足場を取られることも無く、戦い易いフィールドと言える。
身体強化は使用者の元々の能力を、最大魔力量に依存した強化係数で強化する。
ゴブリンキングの元々の身体能力はどうやら化物染みていたようだ。
赤い毛皮の群れた狼たちを蹴散らしていく。
連携力もかなり高いようで、魔法使いを護りつつ攻撃している。
それに、魔力量がガンガン増えている。
まさか、こいつら捕食の能力を使っているのか?
俺自身が捕食を使っていないのに魔力回復と最大魔力量増加が起こっている。
つまり、こいつらが吸い込んだ魔力は俺の物となり、何ならこいつらにも分配されて配下の魔力量も増やせるのか。
分配率は好きに弄れるみたいだ。なら討伐者50%俺50%とでもしておくか。
岩石地帯の至る場所で爆炎が起こり、見える狼は着実に減って行く。
俺へ飛び掛かってくる狼は、バリアで完封され、もう俺自身は動く必要すらないらしい。
やってくれるならやってもらうか、その間に他のスキルの実験でもしておくとしよう。
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