第5話 恋愛


恋愛というものは今ひとつ理解できてない。僕はまだ若いからだろうと今は思う。でも高校生はそういう時期なのだろう。

なので、僕に相談されても困るのだが、、、少なくない数の相談がくる。そしてとうとう僕の1年生のみならず他の学年からも、来たのだ、今。、、僕は1年3組のクラス委員長なのだが、、、

また、出来るなら学業の相談やら就職の相談してくれるほうがまだ理解でき、助かるのだが、、



「で?、あなたは同学年の二年3組の萩山さんと付き合いたい、ということですね?」

「うん、、、でも言い出せなくて、、」

「で、あなたのスキルは全て極平凡、やる気さえも平凡、ということで良いのですね?」

落ち込んでいるその2年の男子生徒。なぜ落ち込むのか理解に苦しむが、、、事実を明確に捉えて、そこから持っていきたい方向を決め、そこにいたるまでの方法を探さねばなにも成せない。第一歩が事実確認だ。せっかく第一歩に立っているのに、、、


「で、その萩山さんという女子生徒は、頭脳明晰、容姿端麗、性格は、、周囲の者達によるととても良い人柄で情にも深い、と、、家庭は中流、父上はサラリーマン、母上は専業主婦。ということですね?」

「・・・うん、、、」


「ふむ、、そう難しくないかな?」

「・・へ?」

「頭脳が足りないあっぱらぱーな遊び人系娘だと少々手が込むのだが、、よし。とりあえず放課後ここに呼んでください。”委員長が呼んでいる”と言って」

わかった、と彼は戻っていった。



「あれ?生徒会委員長ではないの?」

「申し訳ありません萩山さん、お時間は取らせんませんので、まぁ、お座りください。」

と教壇の前の席に座らせる。

あの男子生徒は彼女の右手側一つ後ろ。

その場所も彼に手振りで指定し座らせた。


「さて、萩山さんはどのような殿方をお好みでしょう?」

「なぜ?」

「いえ、でもこれはあなたにとってとても重要なことになるこれからの話の大前提に成る部分です。ここを間違うと、これからの話はあなたにとって価値が無いものになってしまいます。折角ご足労頂いたのだから、それなりのモノを持ち帰られたほうがいいのではないでしょうか」

「・・・それもそうね、、でももし嘘だったら承知しないわよ?」

「僕は嘘などという非生産的どころか破壊的な行為を好みませんし、自分でも言いません」



「・・わかったわ、、

そう、、頼りがいが在って、経済的に優れていて、容姿が整っていて、センス抜群の人が好みね」

・・・・

(年上の金持ちのイケメンで流行を追う、か、、)


「さて、一般的な話を最初にさせてもらいます。

容姿が良い男性を放置する女性は少ないようですね私達の社会では。勿論既婚者でも構わない様子。(萩山が何か言おうとしたが、)更に、

金銭的に自由な男性は「浮気ではない、ちょっとした付き合いだ」という理由で、そういった女性たちとの交流の機会を無碍にいたしません。もしかしたら、彼女たちに有用なコネクションでもあるかも?という期待もあるでしょう。

で、

彼女たちは其れを利用します。


男性が気付いた時はもう手遅れ、というケースは少なくありません。」

「どうして高校生のあなたがそんなことを言えるのよ!」


「おやおや、僕の学生の一面は誰でも見えるところです。でも僕の私生活を知っていますか?

僕は自分で生活費どころか親の莫大な借金返済や浪費癖の強い両親の生活費用まで稼ぎ出しています。社会との繋がりは、そこらのサラリーマンが何十人と束になっても敵いませんよ?月、数百万の返済、あなたの家はできますか?」半分はったりである、が嘘ではない。

「・・・・・・・」


「よろしい、頼りがいが有る、というのは世の人々全ての人々が、大半の年上に感じる感情です。しかも日常的に頼りがいが有るというのはあまり意味したことではありません。

大金持ちであった僕の親が、窮地に陥った時おろおろするだけで何もできなかった、というように。それまでは毎日両親を頼る者達は何人も我が家に訪れていました。両親は同年代どころか年齢が遥かに上の者達にさえ頼らえれていたのです。

が、非日常的なことは一生に一度や二度は起こるのです、誰にでも。

その際に対処できるかどうか?が、本物の頼りがいです。」

・・・・・・


「僕は自分で自分を鍛え上げました。小学生のときに起こったその両親の破産を、僕は自分を自分で育て上げて”対処できる人間”にした。

これは普通の人間にはできません。

もし、この国で大規模な治安不安が起こったら当然経済破綻にも向かいます、あなたやあなたの親しい方たちはその治安不安や経済破綻に敢然と対応できますか?誰かそういう人を知っていますか?」

「・・・・・・・」


「そうでしょう。それが普通なのです。

だが、さきほど言いましたね?

僕は自分を自分で育てて、対応できるようにした、と。

普通の人には無理だ、とも言いました。


だが、一人では無理なことを2人で行えば?

できるでしょう。勿論容易なことではありません、2人は喧嘩もするでしょう、しかし冷静な議論としての喧嘩であれば、それは進展につながる結果を生み出します。

そういう相手となるのは、同格の場合だけです。同格以外ありえません。

相手が上の場合、相手は無意識にこちらの意見を甘く見ます。相手が下の場合、やはり自分が同様のことを無意識にしています。


なので、

女性のベストな人生の伴侶は、

”自分で育てあげられることができ、同格として対等な議論ができ、そして最も重要なのが、二人して幸せに成るような将来を求めることができる。”

という相手でしょう。


勿論、”互いに相手を尊重する”ことは大前提であり、これが壊れると全てパーです。

で、尊重は遠慮とは違う。我儘かどうかわからないということでもまず言ってみて、相手と話をしてみて、それを我儘でないようにする事に持って行けるように成れば、それは相手を尊重し合うベストパートナーとなっている、なってきている、ということです。」

・・・・・・・

2人の思考が追いつくのを待つ委員長

・・・・・・・

「で、今の高校生という時期はかなり選択に良い時期です。

まず、素直、そして、特に秀でたところがない、更に、目立たない、

この要件を満たす者がかなり良い候補者です。秀でたところがある者達は自覚が無くともへんな自我が確立してしまっているので、それではもうあなたの入り込む隙きはないのです。相手の言いなりに成るしか無いのです。


ベストパートナーとは、自分にとっては「相手はなくてはならないもの」であり、相手にとっても「自分は無くてはならないもの」でなければなりません。

互いに成長させ、互いに成長していくもの、が人生を終わりまで一緒に過ごせる、最強のパートナーなのです。

まぁ言ってみれば”背中を預けることができる”ようなところでしょう、感覚的には。」

・・・・・・・


「だから、僕はあなたの後ろに居る彼の応援をしてみようと思ったのです」

萩山は、はっ、と振り返る。


「萩山さん、あなたがパートナーを育てあげようとしたら、周囲はあなたのパートナーをよく思わないでしょう。

それはそうです、まだ何もできていない真っ白なのですから、平々凡々なのですから。だから周囲は何も特長もないそのパートナーを見下すでしょう。


が、そういうあなたのパートナーを見下す者達は、皆いびつに出来上がった者達に飛びつくので幸せな一生をおくり抜く機会はありません。ほぼない、などでは無く、ありません。

だが、周囲に見下されようと、あなたがあなたのパートナーを育てる努力をしていけば、あなたはその成長を間近に見ることができます。

それはあなた自身の成長でもあるのです。人を育てる、というとてもとても貴重な経験です、しかもあいては素直、真っ白、へんな自我に染まっていない。幸運と言えるでしょう。」


「萩山さん、あなたは、周囲のそのような視線に負ける人でありたいですか?」

・・・・・

「・・・・いやよ、、」

「そうですか。人を育てる資質がありそうで楽しみです。」


「まず、互いに友人付き合いをしてみてください。そしてその間に萩山さんは、彼にどのような”人間的に優れた”者になってもらいたいか?を見出してください。そしてそれが確定したあと、彼と相談してください。

どのように、彼をそこまでもっていくようにするのか?を。

その時はまた相談に乗ります。

で、その後はあなたが彼を成長させることに努力すればするほど、あなた自身が成長していることを感じることができるでしょう。」


「さあ、まずこれから。今から。

今日は2人で下校し、帰りに本屋にでもよって、互いの趣味を見せあい、語り合ってください。」


委員長が両手を手のひらを上に向けで上に上げるようなチョイチョイってかんじな仕草をし、

2人は一緒に連れ立って出ていった。


廊下からは萩山さんの声と、それに答える男子生徒のぼそぼそした声が聞こえた。



まぁ、、初めてだったが、、、2年だと受験近いから、という良い状況だったからな。

同じことを入ったばかりの楽しいだけの1年生に言ったとしても、通用したかどうか、、、


今度から新規恋愛相談は拒否しよう、と心に決めた委員長だった。

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