第4話『可能性』

フリードが下の階に降りると、既に両親は夕食を食べるために席についていた、それを見てフリードも急いで自分の席についた。

父親が目配せをしてフリードが席についたのを確認すると、両手をあわせて「いただきます」と言った。それにならってフリードと母親も同じように「いただきます」と言った。


フリードの家では命を頂くことに感謝を込めて「いただきます」 と言うというルールがある。

普通はこういうことはしないのだが、父親の生まれ育ったところの風習で命に感謝をするというものがあり、フリードの家でのルールになっている。

ちなみに、食べ終わった後には命を頂いたことに感謝を込めて「ごちそうさまでした」と言うのもある。


「フリードそれで職業はどうだったんだ?」


―――――――ついに来た


「…」


意を決してフリードは口を開いた。

「ッゥー、俺の職業は≪自由人≫だった」


「≪自由人≫?それはどんな職業なの?」


「≪自由人≫って言うのは、簡単に言うと自分のやりたい職業を選べるっていうものなんだ」


「それは、剣士になりたかったら≪剣士≫を研究がしたかったら≪研究者≫とそうやって職業が選べるってことであってるか?」


「うん、そうだよ」


「なに?それは凄いそんな職業があったのか…」


「ねー、それでフリードはどんな職業を選ぶの?」


「実はね、もう選んだんだ」


「「え?」」

「そうか、それで何を選んだんだ?」


「僕が選んだのは≪料理人≫だよ」


「それは本当なのか?」


「うん、」


「それで良かったの?あなたはずっと冒険者になることを夢見ていたのに」


「いいんだ母さん、俺やっと気づいたんだ無能の俺じゃ冒険者にはなれない…だから俺はこの酒場を継ぐよ、そのために≪料理人≫を選んだんだ」


「ごちそうさま、そろそろ部屋に戻るね、おやすみ」


「待てフリッ」―――バタンッ

「フリード…」


―――――――――――――――――――


――バタンッ―


フリードは部屋に戻ってくるなり泣き崩れた…


「どうして俺は無能なんだ…なんで、なんで俺は冒険者になれないんだッッ!!」

そう言い涙が枯れるまでなき続けた。


フリードにとって今回の職業授与が最後のチャンスだった、固有スキル《器用貧乏》のせいで絶対に一流にはなれず二流止まり、そんな状態で命の軽い冒険者になんてなれるはずもない、そう思っていたフリードの最後の希望は職業授与だった…

―――否、本当はわかっていたのだ、どんな職業をさずかっても自分は冒険者にはなれないと


―――――――――――それからしばらくして


酒場の厨房にフリードの姿はあった

フリードは職業を授かった次の日から酒場で働くようになった、フリードの仕事は≪料理人≫をいかせる料理番である。今日もまた無心で料理を作り続けていた。

「フリード、フリード!!」


「は、はい!なんですか?」


「はぁ、お前は集中しすぎだ何度も呼んだのに全く気がつかなかっただろ」


「すいません…」


「でだ、今日はもう上がっていいぞ」


「もうですか?」


「ああ、今日はもうおしまいだ」


「はい、お疲れさまでした」


部屋に戻ったフリードは、なんとなくステータスを開いてみた。


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個体名:フリード

種族:人間

職業:≪自由人≫(料理人)

固有スキル:《器用貧乏》

スキル:《可能性の選択》

≪料理人≫

:《調理》《加工》《器用補正》


ーーーーーーー

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自身のステータスを見てフリードは驚愕していた、何故なら…

(スキルが増えてる!?)


そうなのである、そんなの普通じゃない?と思うかもしれないが、この世界ではスキルはなかなか習得出来ないものとして知られている。1つのスキルを習得するのに、数年かかるとまで言われている。勿論個人差はあるがそれでもスキルとは長い時間をかけて習得するものなのである。


フリードの成長速度は早すぎる

フリードは、その理由に直ぐに行き着いた

「《器用貧乏》の影響か…」


《器用貧乏》は、どんなことでも一定までは直ぐに出来るようになるが、どの分野でも一流にはなれないというものである。


フリードは《器用貧乏》のデメリットに悩まされ過ぎて、メリットが在ることを忘れかけていた。


そもそも1人の人間が1つの職業を持っているこの世界で、職業を極めるというのは並大抵のことではない、それこそ人生をかけて達成される目標なのである。しかも、同じ職業でも人によって成長具合が違ったり覚えるスキルが違ったりする。


(《器用貧乏》で爆発的に成長が早くなったとしても直ぐに限界がくる、複数の職業につけたらまた違ったのかもしれないな、複数の職業か…)


フリードはあることを思い付いた。

(これがいけるのなら、俺はもしかしたら)


意を決して、フリードは1つのスキルを使用した。


―――――《可能性の選択》


次の瞬間、前と同じように文字の羅列が書かれたスクリーン目の前に現れた


「きたっ!!」


フリードは試しに《格闘家》を選択する

再びあの声が聞こえた

『《格闘家》をセットしますか?』


「ああ!頼む」


『《格闘家》をセットしました。』


「ステータス!!!!!!」


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個体名:フリード

種族:人間

職業:≪自由人≫(格闘家)

固有スキル:《器用貧乏》

スキル:《可能性の選択》

≪料理人≫

:《調理》《加工》《器用補正》

≪格闘家≫


ーーーーーーー

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「≪自由人≫の隣の文字が、料理人から格闘家に変わってる!≪自由人≫は何度でも職業を選択しなおせる職業だったのか、しかも料理人のスキルも職業を変更しても使えるみたいだ」


「これなら俺は、」


「俺は、」


「冒険者になれるかもしれない!!」


フリードは≪自由人≫の本当の力を知り再び冒険者への道を志すようになった。


本当は≪自由人≫はそんな凄い職業ではない。勿論自由に職業を選べるのは魅力的だ、でもそれだけだ普通の人は職業を選び直せてもそんなに意味がない。

ただ、フリードは違うフリードには固有スキル《器用貧乏》がある。だからこそ職業を何度でも選び直せることに意味ができる。


ここから、フリードの長いながい冒険が始まる。

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