【9月20日】教卓

王生らてぃ

本文

登場人物


凛子(りんこ)

……高校生。


千枝(ちえ)

……高校生。


とある高校の教室にて




     ○




教室。放課後。机が整然と並んでいる。黒板は丁寧に磨き上げられている。黒板の前には教卓が設置されている。教卓の裏側は観客からは見ることができない。

教卓の前に血まみれの女子生徒がひとり倒れている。腹部には刺し傷が残りそこから出血している。頭を客席のほうへもたげ、関節はできる限りぐにゃぐにゃとしている。頭のほうに血まみれのナイフを手にした千枝が立っていて、死体を見下ろしている。千枝の背後からは西日が差し込んでいてちょうど逆光になっている。死体の脚のほうには教室の扉があり、いったん激しく開かれてから反動で少しだけ閉じかけているような開き具合になっている。その扉から今まさに飛び込んできたという様子の凛子。死体と千枝を交互に見る。



千枝がゆっくりと凛子の方を見る。凛子は千枝と視線が交差した瞬間に、きょろきょろしたり、息を荒げるのをやめ、じっと見つめ合う。



不意に千枝が一歩、凛子のほうに踏み出す。凛子は一歩あとじさる。千枝はずんずんと足音を立てて、死体のぐにゃぐにゃ放り出された関節の間を縫うようにして一歩、また一歩と凛子に歩み寄る。凛子はそれに応じるように一歩、また一歩とあとじさる。やがて凛子は扉に背中をつけて身動きが取れなくなる。千枝はそれを見て近付くのをやめる。



ふたりが睨みあっている後ろで死体がゆっくりと起き上がる。ぐにゃぐにゃに曲がった関節を順番にまっすぐつなげ直すようにして、上半身から順番に立ち上がっていく。凛子は千枝の姿越しにそれを見て目を見開く。千枝はそれを見てナイフを振り上げるが、その振り上げた姿勢のままで動かない。



死体が完全に立ち上がったあと、ゆっくりと千枝の背中に近付いていく。凛子は動揺しながらも動かずにいる。千枝はナイフを振り上げたまま動かない。やがて死体が千枝の背後にぴったりとくっつくほど近付いたとき、千枝は凛子に向かってナイフを振り下ろそうとする。死体は千枝の髪の毛を引っ張って背中から床に引き倒し、そのまま千枝の上に馬乗りになる。三人はそのまま動かない。



西日が強く差し込んでくる。



突然大音量で『トロイメライ』が流れる。

西日が徐々に薄れていき、舞台が暗くなっていく。



完全に暗転したところで、悲鳴。十数秒ほどそれは続き、やがて完全な無音。

終幕。

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【9月20日】教卓 王生らてぃ @lathi_ikurumi

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