WGO

ここは、町はずれの一角にひっそりとある、一人の魔女と人間の女の子が営むカフェ。

『ウィッチカフェ』

一般のお客様には見えないように魔法が掛けられており、店の前に斜めに置かれてある看板を、まっすぐに直すとお店が現れるという仕組みになっている。


ひっそりと営業しているウィッチカフェには、いろいろなお客様が訪れる。

いろいろな種族、動物、時には一般のお客様も。

仕事の合間に来る人や、ちょっとした観光、常連さんになってくださっている方も多い。

そんな方々の、ちょっとした憩いの場なのです。


さぁ、本日はどんなお客様が来てくださるのでしょうか?


カランコロン。


「今日はWGO の人が来るみたいだから、いつも以上に気を引き締めて接客していこうね!」

「はい!」


そう、今日はあのWGO の方が来店するらしいのだ。

WGOとは、ワールド・グルメ・オーガニゼーションの略。

世界の美食店すべてに対し、最高三ッ星で味の評価を付け、年に一度、その結果を書籍として発行する事を活動のメインとしている組織。

星を一つでも獲得すれば、料理人としての地位は跳ね上げり、逆に星を失う事でお店を経たんでしまう料理人もいるという。



「いらっしゃいませ!」

「3人、大丈夫かしら?」

「はい!こちらの席へどうぞ」


ドレスに似たようなスーツ。それにサングラス。

まさしく、この方方がWGO。


「お水とおしぼり置いておきますね。ご注文はどうなさいますか?」

葵ちゃんも、接客になれたのか、おどおどした感じは無くなった。


「このお店が出せる最高の料理をお願いします」

「かしこまりました」


うちの店で出せる最高の料理。

正直……そんなものは無い。

うちの店も少し有名になってはきたものの、美食店などには到底太刀打ちできない。

それに「ウィッチカフェ」は、どんなお客様でも気軽に入る事が出来、時間を忘れ、のんびり過ごせる場所と言うのが本来のコンセプト。

だから最高の料理と言うのは無い。


「葵ちゃん、これを」

「これですか?でも……」

「いいの。これがうちで出せる最高の料理!」

「わかりました!」


お口に合わないかもしれない。でも、これがうちの、「ウィッチカフェ」の看板メニューだ。


「お待たせしました、プリンです」

「…………」


ファーストインプレッションは、まぁ打倒。


パクッ。


「ん!これは……」

「口触りがとても滑らかで、口の中に入れた瞬間濃厚な香りが口いっぱいに広がってくる。しかも、一番下に入っているキャラメルが主張控えめで、プリンを強調し、うま味を引き立てている」


まさかの反応だった。

正直、普通。と言われるのだろうと覚悟していたけれど、こんな反応を貰えるとは思ってもいなかった。


「プリン、とても美味だったわ。結果は後日送らせてもらうわね」

「は、はい」


カランコロン。


そう言ってWGO の方々はお店を後にした。


「星、付きますかね?!」

「どうだろね。まぁ、付いても付かなくても、何も変わらないよ」


と、本日のウィッチカフェはここまで。如何だったでしょうか?

本日のお客様はWGO。うちの店に星は付くのでしょうか?

そして、明日はどんなお客様が来てくださるのでしょうか!


それでは、いい夢を🌙

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る