季節の運び屋

ここは、町はずれの一角にひっそりとある、一人の魔女と子犬が営むカフェ。

『ウィッチカフェ』

一般のお客様には見えないように魔法が掛けられており、店の前に斜めに置かれてある看板を、まっすぐに直すとお店が現れるという仕組みになっている。


ひっそりと営業しているウィッチカフェには、いろいろなお客様が訪れる。

いろいろな種族、動物、時には一般のお客様も。

仕事の合間に来る人や、ちょっとした観光、常連さんになってくださっている方も多い。

そんな方々の、ちょっとした憩いの場なのです。


さぁ、本日はどんなお客様が来てくださるのでしょうか?


カランコロン。

「いらっしゃいませ!」

「…………」

「あ、もうそんな時期ですか!」


この方は季節の運び屋。

各季節が来る前に、季節を運んでくれるのだ。


「こちらの席どうぞ!」

「…………」

季節の運び屋さんは、一切話すことが出来ず、首を縦に振るか横に振るかで返事をしているみたいです。


「何にしますか?」

「…………」

運び屋さんは、メニューに載っているショートケーキを指さした。

「かしこまりました!」


私はいつもながらキッチンへと向かった。

「ワン!」

「ん?お腹すいたの?」

「ワン!」

「しょうがないな~」


アメもお腹がすいたみたいです。

私は、アメのために買っておいたドッグフードをお皿に盛った。

アメは、勢いよくご飯に食いつきました。


「お待たせしました。ショートケーキです」

「……………」

運び屋さんは、すぐさまフォークを手に取り、ショートケーキを食べ始めた。

私はその様子を、じっと見つめていた。


「また秋になる前に来てくださいね!」

「……………」

運び屋さんは、首を縦に振ってくれた。


カランコロン。

「またお待ちしています!」

運び屋さんは、外に出た瞬間姿を消した。


では、本日のウィッチカフェはここまで。如何だったでしょうか?

本日のお客様は季節の運び屋さん。明日はお休みを頂いていますので、私の事を少し話そうと思っています。是非聞きに来てください。


それでは、いい夢を🌙



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