第16話
ロン君が手伝ってくれるようになり数日すぎた頃、マイク様がやってきたのは朝食が終わり一息ついた時だった。
「ユーコさん、突然来てすまない。なかなか時間が取れなくて今しかないのだがいいかな?」
マイク様がロン君とそんなに歳が変わらないだろう男の子と一緒にやってきた。
「ええ、ちょうど手が空いたところなので大丈夫ですよ。」
「それは助かります!紹介します、ウチの見習い料理人のウィスターです。」
「は、初めましてウィスターと言います。」
ウィスター君は緊張しているのかガチガチだわ。
「ウィスター君こんにちは、私はユーコ、こちらが娘のサーユと君と同じ見習いのロン君よ。」
「ロンです、同じ見習い同士仲良くしてください。」
みんなが挨拶をしているのを見て咲百合も
「サーちゃんです、よろしくです!」
元気いっぱい挨拶を上手にして、本当にいい子に育ってくれていて嬉しいわ。
「ロン君、サーユちゃんよろしくお願いします。」
ウィスター君はちょっと気が弱そうだけれども真面目そうな子で良かったわ。
どんな子でもいい訳では無いので、やはり楽しく料理が出来るようになってもらいたいし咲百合に悪影響になりそうな人はちょっと困るわ。
「それじゃあユーコさん、申し訳ないがウィスターをよろしくお願いします。何かあれば連絡もらえたら時間を作って来ますので。」
「ええ、マイク様もまたお時間ある時にお食事にいらしてくださいね。連絡頂ければこの前のお部屋を用意してゆっくり召し上がれるようにしますので。」
「おぉ!それは助かります!それでは私はコレで失礼します、!ウィスターしっかりな!」
マイク様は本当に忙しそうで慌てて帰られていったわ。
「それじゃロン君、ウィスター君に宿の案内をお願いね。」
「はい!ウィスター君こっちだよ!」
ロン君も同じくらいの歳の子が来てくれて嬉しそうだわ。マイク様もロン君の事を考えて選んでくれたのかしら。
ロン君達が戻ってくる前に個人的な家事を済ませてしまいましょう。
私は咲百合を連れて部屋へと戻り掃除や洗濯を済ませてしまう。
手早く済ませて厨房に戻るとロン君がウィスター君に調理器具のしまい場所を教えている所だったので、
「それが終わったら買い出しに出かけましょうね。」
と声をかけ待っている間に帰ってきてからの下ごしらえの準備をしておく。
フライドポテト用の芋を洗ってザルのような籠に山盛りにしていると説明が終わったようだわ。
「じゃぁ買い出しに行きましょうか!」
まずはマーサのお店からで後はいつものお肉屋さんやパン屋さんにも寄らないとね。
「ユーコさんはゆっくり休んでてください!買い出しなら僕がウィスターに案内しますし。」
「ありがとうロン。」
すっかり仲良くなったみたいで良かったわ。
「そう?それじゃぁお願いするわね。」
ロン君ならこの辺の人とは仲良しだしそんなに心配は要らないわね。
それならちょっと豪華な昼食でも用意しておこうかしら…
ウィスター君は初めて私の料理を食べるし、何にしようかしら…
定番のメニューも知って欲しいからフライドポテトに唐揚げとだし巻き玉子にステーキとスープにしようかしら。
パンはこっそりチャレンジしていたが天然酵母パンがようやく上手く焼けたのがあるのでそれを出しておけばいいし、ウィスター君とロン君が喜んでくれたらいいわね。
そうと決まれば早速唐揚げの下ごしらえとポテトの皮むきをしましょう!
時間のかかる物は先に完成させてアイテムボックスで時間停止をして、用意が終わった頃少年2人が宿に戻ってきた。
「おかえりなさい。」
厨房に顔を出してくれた2人は楽しそうに帰ってきたのを見てホッコリする。
コレから一緒に働くのに仲違いされてしまったら申し訳ないけど違う人を連れてきてもらわないと行けなくなってしまうが、既に仲良くなれているということはやっぱりマイク様はその辺も考えてくださったのかもしれないわね。
「うわぁ!」
「美味しそう!」
2人とも目を輝かせて歓迎会を兼ねたランチに喜んでくれたようだ。
「ふふ、これから2人ともよろしくね!さっ冷めないうちに食べましょう。」
「「はい!!」」
「美味しい!マイク様から聞いていましたが、俺こんな美味しい料理初めてです!」
ウィスター君が興奮気味に言うと
「わかるよ!僕もユーコさんの料理初めて食べた時に感動したし。」
ロン君も興奮気味だわ。
「そのうち2人にも作れるようになるから大袈裟よ。2人にはコレから頑張って働いてもらうから期待してるわね。」
今のところそこまで難しい料理は作っているわけでは無いのでヤル気に満ちている2人ならあっという間に作れるようになるはずだわ。
「僕がコレを…」
唐揚げを掴みながらウィスター君は呟いていたけれども、
「大丈夫だよウィスター、実はこのフライドポテトならもう僕にでも作れるんだ!」
そう、フライドポテトは皮を剥くのに手間がかかるだけでそこまで難しい料理では無いのでロン君が全ての仕込みをしてくれているの。
「え!?ロンが?スゴいな!僕も負けてられないや!」
うんうん、時にライバル、時に親友の様な2人になりそうでとっても本当に微笑ましく思える。
「ふふ、さぁ食べちゃいましょうね。終わったら早速夜のために仕込みにしましょうね。」
咲百合も2人にはあっという間に懐いて本当のお兄ちゃんが出来たようで喜んでいるしコレなら仲良く仕事が出来そうで本当にたのしみだわ。
そうして私たちは昼食を堪能したのだった。
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